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パワハラ相談員!

「波多野さん」

 薄明かりの公園でその男は言う。

 日焼けで赤茶けた顔をしていた。


「よう山村」

「忙しいのにありがとうございます!」

 彼はそう小さいペットボトルを投げてよこす。

 相談に応じたことに対するお礼らしい。


「飲みながら話しましょう」

 プルタブを起こして山村はコーヒーをすする。

 私もキャップを空けて一口飲む。

 甘い。ミルクティーだった。


「パワハラを受けているんだって?」

「ええ。森杉がいなくなったせいで、

 大島先輩が幅を利かせてまして……」


 大島は私の同期だ。

 優秀だが、人使いが荒い。

 私と同じタイミングで出世をしたが

 彼は新入社員を淘汰とうたするために、

 私は後輩社員を守るためにその権力を使っている。


 大島の職権乱用はよく小耳にはさんでいた。 

 その暴走は注意しても止まらなかった。

 権力に限らず、“力”は人を狂わせる。

 だから“力”を与えられた人間には責任が伴うのだ。


 大島は“権力”に呑まれているような気がした。


「そうか。不当に残業を押し付けられたのか」

「それだけじゃないです。

 この前は土下座してる頭を踏まれました。

 その前は首を絞められました。

 自分にも非があるので訴えるつもりはありませんが、

 どうにかしてもらえないですか?」


 毛虫のように太い眉毛をハの字にして

 山村は私の目をのぞき込む。

 その目には光がなかった。


「どうにか、なりませんか?」

「そうだな……」

 草陰からガサリと音がした。

 ただの野良猫だ。

 山村はそれにも過敏に反応していた。

 自分は盗聴されているのではないかと不安を漏らす。


「上司に相談はしたのか?」

「無理ですよ」

「どうして?」

「自分には味方がいませんから。

 告げ口がバレたらなにをされるかわかりません」


 私は言葉を失った。

 夢も希望もない表情は

 ちょっと前の自分と同じだった!


「そんなことはない。

 少なくとも俺は味方だ、安心しろ!

 必要なら暴力を振るってでもなんとかしてやる!」


 人を傷つけるために暴力は使わないつもりだったが、

 四の五の言ってられる状況でもなさそうだ。


「やめてくださいよ」

 山村は悲しそうに言った。

「暴力では、なにも解決しませんよ」


「だけど殴ったほうが話は早いだろ!

 物理的に動けなくするだけだ」

 山村はかぶりを振る。

「暴力は、ダメです。

 自分の友人もそれで鑑別所に行ってます」


 なんでだよ、と私はいつも思う。


 なんで弱いやつらは虐げられて、

 強いやつらは罰せられないんだよ。

 同じ目に遭わせてやればいいだろ。


「波多野さんなら、わかってくれるはずです」

「…………」

 立場的に黙らざるを得なかった。

 どうにも煮え切らないが胸三寸に留める。


「ああ、直談判してみるよ!」


 パワハラの痛みを知った私は、

 あれからパワハラの相談を受けるようになっていた。

 正式な相談員ではないが、

 いずれ資格をとって役立てるつもりだ!


 それに心理学は好きな学問で、

 高校生の頃から学び続けている。


 きっと私の気付かないところでも、

 パワハラは横行しているのだろう。

 その数だけ被害者もいる。


 私の力なんて微々たるものだ。

 必要なときにそばにいられるとは限らない。

 だけどこのエッセイを通じて

 少しでも勇気を持ってもらえたら……


 勝てる勝てないじゃなく、

 立ち向かう勇気を持ってもらえたら……


 正面からじゃなくてもいい。

 不意討ちでも構わない。

 だれかに助けを求めることができたら、

 状況は好転するはずだ!


 きっと大丈夫だから自分を信じてほしい。


「明日は休みだし、飲みに行くか! おごるぜ!」

「はい、お願いします!」

 山村はぎこちなく笑った。


 私も神田さんみたいになれるだろうか。

 あのときはすごく心強かったから、

 私も神田さんみたいになりたいなと思った。


 あの大きな背中が私の目標だ。


これで本編は終了です!(^o^ゞ

最後までありがとうございました!!

まだまだ連載したいですが、

他にも書きたい物語があるので

もしよければ次回作でお会いしましょう!!

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