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カウントダウン(4)

 新潟に帰ってきたが、

 やることは変わらなかった。


 推理小説のプロット

・露出癖のある探偵

・事件現場では全裸になって調査する

・露出する必然性はあるのか


 歴史小説のプロット

・楽市楽座によって成功した商人の話

・圧倒的な商才を認められ、織田家の家臣になる

・織田の軍略を影で支えた苦労人


 本能寺の変(考察)

→光秀の謀反(史実の通り)

→秀吉の陰謀(織田を消して出世した)

→幕府の再興勢力(室町幕府を滅ぼした為に殺された)

→宗教団体の弾圧(可能性はほぼない)

→家康の黒幕説(可能性はほぼない)


 SF小説のプロット

・満潮と干潮によって大陸が海に沈む話

・主人公は気象学と天文学の知識がある

・ラストはファンタジー要素を入れる


 どれもそれなりに面白そうだ。

 甲乙つけがたいプロットだが、

 歴史小説を選ぶと長編になりそうなので却下する。


 今すぐ書ける短編は『推理』か『SF』だ。

 どちらにするべきか……

 腕を組んで思案していると電話がかかってきた。

 白鳥さつきからだった。


「もしもし」

「わー、波多野! 今なにしてるの?」

 いつもテンション高いな、と思いつつ答える。

「んー、まあ、勉強してた」

 小説のプロットを練ってるなんて言えない。


「そうなんだ。今日はどっか行くの?」

「ああ、N市に行ってくる」

「そっかー。じゃあさつきもそこに行く!」

「ああそうか。ひとりで行くのか?」

 適当にそう聞いてみる。

 どちらにせよ私には関係がなかった。


 そんなことよりも今はプロットだ。

 私のずれた価値観では選びかねるから、

 だれか適任者に選んでもらわないと……


「ひとりってそんなわけないじゃん!」

 電話口から笑い声が届く。エンターテイナーとして、私の発言によって楽しんでもらえたなら、それは望外の喜びだ。

「波多野じゃないんだし、友達くらいいるよ!」

「やかましい。俺だって友達くらいいるわ」

「残念だったね、さつきに会いたかった?」

「いや、べつに……」

「もう素直じゃないなー。

 どうしてもって言うなら会ってあげてもいいけど」


 恋愛小説のプロットを書いていれば

 諸手を広げて歓迎していただろう。

 だけど今は『推理』か『SF』のプロットなのだ。

 小説のためにならないなら会う必要性も感じない。


 でも、いつかは時間をあけて会うつもりだ。


「悪いな、仕事の上司と飲むんだ」

 これはウソだ。断るための方便。

「波多野、ほんとに大丈夫?

 辛かったらなんでもさつきに言ってね」

 彼女は心配そうに言う。


 くそ、ふざけんなよ。

 私はそういう裏表のない言葉に弱いんだよ。

 なんで打算や計算で発言しないんだ。

 そんなに他人に共感してたらいつか心がぶっ壊れるぞ!


「あとさ、波多野。私のケータイが不調でさ。

 もしかしたら繋がらなくなるかもしれないから電話番号も聞いていい?」


 ああ、そういえばまだ教えてなかったな。

 私はそう思いつつ答える。


「じゃああとで教えるよ。もうすぐで上司が来るからさ」

「そっか、飲み過ぎないでね」

「おう、じゃあな」

「バイバイ……」

 これが彼女と繋がった最後の電話になった。

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