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カウントダウン(3)

「教えてください、お願いします。

 どうすれば人気が出せますか?」


 私はWeb小説家の上野さんにダイレクトメールを送った。

 この人はなかなかの人気作家だ。

 出張先でたまたま知り合って親交を深めたのだ。


「うーん、いきなりですね。

 メールじゃ話しにくいし、電話しませんか?」

「いいですよ。ではかけますね」


 私は森口の挑発にのってしまったせいで、窮地に陥っていた。

 だけどたぶん、あそこで逃げていたらきっと後悔したはずだ。

 私は上野さんにコールする。

 事情は説明しない。同情票が入るから。


「パワハラの件は大丈夫ですか?」

「ああ、うん。おかげさまで」

 上野さんにもだいぶ心配をかけてしまった。


「どうすれば人気がとれるか、ですよね」

「ぜひ教えてください!」


「僕は、結を先に書いてから、

 起承転結にしています。

 ハッピーエンドを先に明示することで

 読者に安心感を与えるんです!」


 ああ、これはあまり参考にならないな。

 申し訳ないが私はそう思ってしまった。

 その書き方は意外と高度な技術が要求される。


 できなくもないが、それは長編向きの書き方だ。

 長編小説の連載はptがつくまで時間がかかる。

 期限が1週間と決められた以上は短編で勝負するしかない。


「なるほど、検討してみます!」

 そう言ってから、

「他にはありませんか?」

 そう聞いてみる。


「そうですねえ。

 投稿するジャンルは考えたほうがいいです。

 オリンポスさんの場合ですと、

 コメディや恋愛はあまり受けてないので書かない。

 反対に、推理やSF、歴史なんかは強そうですね。

 “真夜中の邂逅”や“恐怖の夜”は、

 文体だけでも楽しめましたよー!」


 あらら……。

 コメディも恋愛も、がんばったのに残念だ。

 歴史はそこまで得意じゃないんだけどな。


「………………」


 いや、それじゃダメだ。

 作家は読者を楽しませるのが仕事なのに

 私はあれこれと言い訳してしまっている。


 読者のニーズに応えてこそのプロだろ!

 私は遊びでやってるんじゃないんだ。


「わかりました。

 推理と歴史とSFのプロットを作ります!

 それで一番面白かったものを執筆します!」

 心臓が早鐘を打ち始める。

 書きたい気持ちが止まらない!


「あと、オリンポスさんは設定が細かいので

 できるだけ知識も蓄えたほうがいいですよ」


「ありがとうございました」

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。

 読者層を知り、己の強みを知っていれば

 きっとうまくいきますよ。がんばってください!」


 よっしゃやってやる!

 私はシャーペンを手に取って

 ルーズリーフに設定を書き付けた。


「早く元気になってくださいよ。

 波多野さんの精力的な活動には

 いつも元気をもらってるんですからね」


 電話口では上野さんがまだしゃべってる。

 だけどそれだけ心配してくれていたんだ。

 そう思うと素直にうれしかった。


「ああ、僕も書きたくなってきました!

 波多野さんと話してると伝染するんですよね。執筆意欲が」


 それは森口や他の作家にもよく言われていた。

 果ては小説を書いたことがない人にも、

 俺も書きたくなってきた! と言われる。


 私なんかでよければ、

 いくらでも熱を分けてあげたいくらいだ。


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