君の能力 私の能力
「つ、使えない...とは?...リ、リアは狐族なんだよな?の、能力をもってないってありえないことなんじゃないのか?」
「それが、ありえちゃったんだよ。...生まれたときから能力なんて使えないから、周りからいじめられたりされたっけな...。」
ふと、昔の小さなことが蘇る。
「うわっ!」
バシャンッ
「冷たい...。」
「妖怪なのに能力使えないなんてお前おかしいんじゃねぇの!」
「実は狐族なんかじゃなくてただの人間だったりぃ!」
「そのしっぽや耳はお飾りかぁ?」
ハハハハハハハハハハッ!!
リアを川に突き飛ばした目の前の奴らは言う。
...能力が使えなくて何が悪いんだ。そんなのリアは悪くない。リアが望んで使えないように生まれてきたわけじゃない。なのに...なのに...。
「.....ア.......リ.......リアっ!」
「はっ!?」
イアの呼びかける声にふと我に返る。
思い出したくないこと思い出したなぁ...。
「どうかした?」
「な、なにも...。」
「いじめ.....られてたのか?.....それが原因でここまで来たとか?この家から狐族の集会所は距離があるからな。」
.....いや、ちがう。記憶はまだ取り戻していないけどそれが原因じゃないっていうことはなぜか断定できる。.....でも、それじゃなきゃなんでここに...。
「きっと...ちがう。でも本当の理由はやっぱりわからない...。」
「うーん、そっかぁ。まぁ、少しずつでいいか!無理に思い出そうとしても頭爆発しちゃうしな!」
「う、うん!」
それもそうだ。そ、それもそうだけどリアにはもう1つ試練がある。
.....帰る場所がない!!!
そもそもリアはどこから来たか自分自身ですら分からないのだからイアが分かるわけがない。
どこから来たか分からないということはどこに帰ればいいのかが分からない。
...結論!リアには帰る場所がないということだ!!!
「あ...の。イ、イア...。」
「ん?」
恐る恐るイアを呼びかける。
こうなったらイアに頼るしかほかないのだ。
「そのぉ...リ、リアね。どこに帰ればいいのかわからなくて、帰る場所がないんだぁ...。.......えーっとつ、つまり...イアの家に記憶を取り戻すまで泊めてもらえるということは.....。」
助けてもらったのに家に止めて欲しいという願い。
厚かましいかもしれないけれど今はイア以外頼れる人がいない。
普段、ちがう種族同士がひとつの屋根の下で暮らすのはイコールけ、結婚とかそういったことを表すわけなのですが.....。
「うん。別に全然いいけど。」
「へっ!?い、いいの!?」
「頼んどいて驚いてんじゃねぇよ。」
小さく笑ってイアが言う。
しょ...正直断られると思ってた。
「お前が悪魔族だったら話は別だったけどな。」
そう言ってイアが自分の能力を出す。
イアは神族。ということは、光属性の能力を使う。
その手から生み出された光は次第に形を変え、槍のような形に変化した。
「これで一突きしてやってるとこだ。」
そんな満面な笑みで言われても。
「あ...悪魔族じゃなくてよかった...。」
ボソッと呟いたその言葉をイアはしっかり聞き取っていてハハハッと笑った。
”能力”.....なぜか頭に残るこの言葉。
リアにすごく関係しているはずのこの言葉。
だけどなにかは思い出せない。これによってリアはなにかあったはずなんだ。
.......やっぱり分からない。なにがあったのかまでは思い出せない...。
リアは能力は使えない。使え...ない。
それじゃあ他者によるなんらかの行動?影響?
思い出さなきゃいけないはずの記憶。
覚えとかないといけない記憶。
1度心に刻まれたはずの記憶。
...の、はずなのに。
目覚めてから分からないことだらけだ。
これから先、イアと一緒に過ごしていくうえで思い出していけるのかな?
思い出さなきゃいけないんだ...。
『リア...。』
「え?」
「...?どうした、リア。」
あれ。
「イア、今なにか言った?」
「いや、なにも?」
今、誰かの声が聞こえた気がしたんだけどな...。
.....気のせいか。
考え事ばっかりしてたから頭がどうかしちゃったのかなー。
「...リア。あんまり深く考えすぎんなよ。徐々にでいいんだしさ。無理は禁物だぜ?」
「...うん!そう...だね!」
それもそうだ。イアの言う通りだ。
徐々に思い出していこう...。
「お前...笑った顔可愛いなー。」
「え。そ、そうかなぁ?」
急にそんなこと言われると恥ずかしいな...。
っていうか素直だなぁ、イア。
「あ...ありがとう。」
恥ずかしくて少し俯いてお礼を言った。
あ、赤くなってたらどうしよう?
なんて考えながら。