第一話 甘い飴と、苦い記憶と
三話まで作ってます
「此処は何処ですか?」
道に沿って走ってる人に向かって自分はそう言った。それぐらいに自分は焦っていて、どうも思考が混乱していたと思う。普通に考えていきなり人に話しかけるのは少し、考え物だった。自分が思うに人と人が話すには何かしらの接点が必要で、その接点の中から話題を模索し、話し合うと言う事を会話だと思う。だから、人と話をするときは接点が必要なのだ。だがしかし、相手が持ってるのは荷物でしかも道を走ってる人だったし、彼の表情を観ると大分急いてる様子だった。これは、会話が成立しない状況ではないだろうか、適当な言葉を残して去ってしまうのではないかなど、記憶を失ったショックからかそんな考えがふつふつと沸き立った。
そう、自分には記憶が無いのだ、だから多くの情報や、その情報を集められる場所に行きたい、だから、人に話しかけるときは慎重に話さなきゃいけないし、話す相手も慎重に見極めなきゃならなかった。最悪、この人が去ったら次の人を観つければいいけど夕刻、日が暮れるまでには見つけられるかと焦っていた。
しかし、彼は自分の顔を観るや否や急いで話を進めた。
「あ、あぁ此処は此処は迷宮都市だ。そうだな、俺はもう行かなければいけないから完結に説明するけ
ど、この一本道をたどったらギルドって場所が有る。そこに、この街の詳細が書いてあるところが有るから。それと、そこでは大抵誰でも職に就ける仕事が有る」
そう言い彼は自分のポケット漁り、ポケットの中の物を渡してきた。これは、丸くて紙に包まってる・・・飴玉?
「あの、これ・・良いんですか」
彼が持っているものだ。そのお菓子は人に渡すか、自分のためにあるのではないかと、そう思う。
「やるよ、俺には必要ないしね、それに、情報に間違いはないよ、俺は仕事に戻るからな。日が暮れる前にたどり着けよ坊主・・・じゃぁな」
「あ、ありがとう」
彼は再びこっちを観て顔を確認して、自分がお礼を言い終わる前に彼は直ぐに去って行った。去って行った後には、自分の手に飴玉が二つ握られていた。
多分彼は返答がもらえない自分の真っ青になった顔を観てこのお菓子と急いで情報を提供してくれたんだろうけど、自分的には真っ青になった顔を観られ、それにお菓子まで貰って慰めて貰ってるのだ。正直、恥ずかしい。それにしても、結構優しかったな、あのお兄さん。さっき走って行った彼は身長が高く、とても優しかったし年上の雰囲気が漂ってきたのでお兄さんと呼んでも間違いはない・・・はずだ。
そう考え、納得する。
「それにしても一本道か」
情報提供先のお兄さんから言うとこの一本道の先に情報の塊が有るらしいのだが、肉眼で先が見えないほど長い道を観て憂鬱な気分になる。
本当はもう少し此処で情報収集したかったのだが、あのお兄さんの話が本当ならこの道を歩くのに大分時間を割かれそうなのでそのまま歩く事にした。
自分は手にしていた飴を口の中に入れ、体力の配分に気を付けながら、その先の場所を目指して歩き始めた。ちなみに、口入れた飴の味はまったりと柔らかい風味を醸し出すメロン味と袋に小さく記載されていた。これは多分高かったろうにと少し申し訳ない気持ちになりつつ食べ、先ほどのお兄さんに感謝した。
一本線が続くこの道には店が沢山ある。例えば飲食店や衣料品店などなどの様々な店が道に沿って出来ており、それに関する工場が隣に並び道の壁と成っている。
そんな味気ない道を自分はふらふらと歩いていた。
歩き始めてしばらくたつと、左からは華やかな、だけど上品なパンの香りが顔全体を包み込む匂いを楽しんでは、左を観て綺麗で凝っている服を眺めながら移動していた。どうやらこの道は一本のある塔、まぁ多分あのお兄さんの情報からして迷宮と呼ばれる物だろう(よく観光名所を名前にしてある町は多い土地式にはあった)。その迷宮を中心に七本の太い道が伸びている延久の街。それが、迷宮都市ラビリンス。
ちなみに、伸びている七本の道にはちゃんとした役割が有り、今通っている道は店がメインの道らしい。自分は街はこれが初めてだからかこの一本道と言う構造上効率が悪い道の作りに不満を覚えた。そう、まるで住宅地、とりわけ大勢の人が住むことは無いと何処かそういう風に感じ取れる風な街の設計に不満を覚えつつ、それらを道すがら通った看板を観て頭に叩き込んだ。
――
全体を観た感じ自分の身長を数十個足しても届かなそうなデカい小屋みたいになっていて、それに何個かの塔が道すがら屋根から生えていた。建物に付着している色はどれもは見るからに眩しくて、観てきた全ての建築物に対して見劣りしないと言っても良いほどに完成されていた。だから、たどり着いた時その完成度の高さに自分は少し放心状態に成っていた。
道を抜けて直ぐに分かった。物凄い派手な城とも呼べるものが立って、その場所のすぐ近くの看板にはギルドと書いてあるし、通行人たちはそこをギルドと呼びながら会話し、指をさし入っていた輩も居るからとりわけ解りやすかった、と言うか誰もがこの場所に来たら「此処がギルドだ」と解るだろうと確信を持って言えるほどギルドは目立っていたのだった。さすがは観光名所、何だろうか?どうも豪華すぎて貴族の場所のようにも思えた。でも、入って行くのは平民ばかっりで貴族と思わしき人は入っては行かなかった。それどころか、迷宮から出てきた血や泥の付いた人たちも入って行く。道が汚れると思ったのだが、入って行った人は血や泥が綺麗に洗浄されていった。多分、光系統の魔法が何かがあの辺りに張ってあるのだろうか?そう思う。
魔法は火、水、風、土、光、闇からなる超常現象を人が魔力と呼ばれる物で操り怒る出来事だと記憶している。不思議なことに、何故か魔法は知識にはあった。
やはり、自分が奪われたのは名前と自分の生きた痕跡だけなんだろう。
自分が記憶が奪われた理由は全く心当たりがなかった。だから、自分が何処でそんな記憶を奪われることをしたのか解らなく、記憶を失う前は何か恨みを買ったのならそうそう身の安全のために思い出さないといけないと思うと、憂鬱になった。
その思考で少しの無力感を感じ、無くした記憶を思い出そうと頭を使う。しかし、何も思い出せない。
記憶喪失、いきなりなったこの症状により自分は正直に言って焦っていたんだろう。事実、此処までくるのは早歩きでせかせかと歩いてたからだし、周りの情報収集も欠かさず目を凝らしていた。この時間帯ずっと、表には出ていたし、記憶の片隅に居た。考え事をしていて、匂いで気を反らしたりもした。それでも、沸いてくる感情は有る。でも、割り切って明日を観なきゃ駄目だった。そのことで頭がいっぱいになってどうする?明日、明後日の為になるか?此処で、飢えて、寒さに震える可能性を考慮しても、その考えを考えるか?不効率だ。そう、割り切って自分は進んできた。時間は短かったけどようやく一歩は踏み出せるとそんな気がした。
考えがまとまり、進む、自分がやる事は今は生きることで間違いない、街の情報を集めて、生活がまとまったら落ち着いて思い出せば良いはずだ。
ギルドに一歩足を踏み入れる、光魔法にはストレス解消の効果が有るのか少し通った後頭が楽になった気がした。