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強者の抑止力




 その場は緊張感に包まれ、誰しもが額に汗を浮かべ背筋に心地の悪い寒気を感じていた。


 彼らは、セイドリッヒ王国国家騎士団王宮配属王室近衛騎士第〇三小隊。蓮慈が後にその正式名を知った時「長過ぎる。早口言葉じゃないんだぞ?」っと思ったのは内緒である。


 第〇三小隊の騎士達は、選りすぐりの極めて優秀な騎士達で構成されており、その実力はセイドリッヒ王国でも一位二位を争うものだ。

 しかし、王宮ましてや、やんごとなき御身分の御仁達に直接仕えるだけあって、その作法や騎士道精神は他を凌ぐ。


 故に、今回の様な事態に陥ってしまった。


 相手は、たかが盗賊。それが彼らを油断させた。

 そもそも、我々に勝てる者等存在しないっという不屈の精神もとい傲慢と怠惰が警戒を怠った要因であり、そのお陰で最初に足である馬車をヤられた。


 牽引に使っていた馬を毒矢で殺され、魔法により馬車を横倒しにされ、麻痺効果のある技量(アビリティ)で身体能力は不全となり、直ぐ様半包囲に囲まれた。



(………これには計画性がある。盗賊ではなく、傭兵か)



 この様な状態でも、第〇三小隊の副隊長を務めるニアは冷静に戦力分析をしていた。

 第〇三小隊副隊長ニア・ホワイトルーレ。彼女は十八才ながら高位の騎士号を持つ凄腕の剣術使いであり、他のお飾りである花形騎士達とは違い、確かな実力のある優秀な人材だ。『剣豪』という刀剣に対して高い適正を与える有力な技量(アビリティ)に付け加え、『麻痺耐性』と『毒性減退』等の状態異常を緩和する技量(アビリティ)も所有している。


 そのお陰で、他の騎士達とは違い、すぐに不全になっていた身体能力も元通りになり、彼女の存在に盗賊擬きの傭兵達も手を出せずにいた。


 更に、幸運というべきか不幸というべきか、付近を飛竜が現れた。

 飛竜たかだか一匹だと侮るなかれ。弓矢の届かぬ上空から大地を焼き払うかの生き物は、高出力型遠距離魔法と広範囲型防殻魔法を有する魔術師が数人居なければ倒す事など出来ない。


 第〇三小隊にも魔法や遠距離攻撃が可能な技量(アビリティ)持ちの騎士は存在するが、何れも飛竜の鋼鉄の装甲である鱗を突破できる程ではない。そして、それは盗賊擬きの傭兵達も同じだ。



(傭兵どもは、少なくとも高出力型短距離魔法を扱う魔法使いが一人に、麻痺関連の技量(アビリティ)持ちが一人。さらに『剣術』持ちが数人か………厄介だな)



 今のところ、飛竜は付近から離れる気配がなく、むしろ何か他の存在を警戒をしている様にも思える。この様な場合はだいたいが、飛竜達の縄張り争いだということをニアは知っていた。


 餌を探しているのではなく、単純な縄張りなら騒ぎ立てなければ飛竜は襲ってこない。縄張りを荒らすモノを警戒をしているのだから、当然とも言える。


 だが、ニアやその他の者の予想とは違い、飛竜は縄張りの巡回をしている訳ではなかった。だが、餌を探している訳でもなかった。



 逃げてきたのだ。


 飛竜の本能が突如現れた絶対強者の存在を感じ取り、魔境であるこの森の隅っこまで逃走してきたのだ。

 その時、幸運にもその絶対強者は此方の存在には気が付いていない様だった。が、何故か恐ろしい速度で此方と同じ方向へ爆走。

 その余りの速さにビビった飛竜も全力で飛行。だが、目の前に絶対強者と同じ姿をした貧弱な生物を発見。明らかに弱い生き物だが、同じ姿で絶対的力を内包する存在が後方に居るので飛竜は思わず、その場で停止して高度を保っている状態だ。


 うぅー?帰ってもいいどぉ?何も悪いことしてないどぉ見逃してくれどぉー?っと飛竜は絶対強者に懇願したかったが、此方の存在に気が付いた彼から何やら邪悪な気配を感じたので断念。正直、振り返っただけでも殺される気がしたのだ。


 仮説として、もし飛竜が近付いていたら、現実で初めて飛竜を見る絶対強者(黒峰蓮慈)は間違いなく、自身の持ちうる最大火力で撃墜を試みただろう。そうなれば、かの飛竜は大地の染みと化していた。



しかし、此方を存在を気が付いているのに、特に行動を起こさない絶対強者に、飛竜は知らぬふりをしながら徐々に遠ざかっていく。そして、ある程度の距離が開き一度絶対強者の姿をチラっと見るなり「ゴゥルァアアアアーッ(逃げるんだどぉーっ)!!」っと全力で咆哮を上げてから逃走をした。


 雄叫びを上げ、飛竜が飛び去れば、地上も動き出す。


 お互いに手が出せなかった近衛騎士第〇三小隊と、盗賊を偽装した傭兵達が、各々(おのおの)の得物を一斉に構えた。



 そして、黒峰蓮慈(絶対強者)も動き出す。




だどぉー

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