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慎重さ




 (サイ)の様な角が生えた大熊を三頭ほど吹き飛ばし、サーベルタイガー擬きの横っ腹を蹴り飛ばす事、四回。

 更に、猪面蛮人(オーク)の集落を二回ほど更地に変え(ただ、一直線に走り抜いただけだが)、上位(ハイ)紅大餓鬼オーガの轢き殺す事、数回。蓮慈は返り血以上に砂埃や泥で汚れていた。少々げんなりした気分になったが森を数分で突破し、街道だと思わしきへ物を発見する。

 道っと言っても、馬車のモノだと思われる轍があるだけだ。周囲の雑草が剥げている事から、一応は通る者は居るらしい。



「ファンタジーお馴染みの冒険者とかの狩り場なのかな?」



 よくファンタジーで出てくる生業の一つで、冒険者っと言いつつも冒険らしい冒険はせずに、魔物(モンスター)専門の猟師っと言った方がしっくりくる職業『冒険者』。ものによるが、『ギルド』という大きな組織に所属したり、そこを仲介として依頼を受け取りっと、多少のバリエーションがある。



「そう言えば、街に入るのにギルドの登録証とかが役に立つんだっけ?」



 何と無く、そんな設定もあったなぁっと思いながら、蓮慈は街道を小走りする。一応、明らかな公共の場なので自走という名の破壊活動は、法的処罰(ペナルティ)の対象になると思われるので保身の為に自粛している。っと言っても、小走りでも時速八〇キロメートルを維持しているが。

 ついでに言わせれば、『周辺感知』と『地図製作』も同時に発動し、情報収集を欠かさない。


 そして、ようやく発見した。異世界に来てから初めて認知する人間だ。勿論、距離が離れすぎているので相手側は蓮慈の存在など知るよしもないが。


 いくら蓮慈がサイコパスとは言え、人肌恋し時がある。なんて訳はなく、いくら雑魚とはいえ幻想生物に囲まれるのと、見慣れた人間に囲まれるなら、そりゃ人間に囲まれた方が安心できる。



「………いや、コミュニケーションが取れる可能性があるだけで、対して変わらないかも………」



 『言語理解』が上手く機能しなければ、コミュニケーションなど出来ないし、そうなればこの世界の人間達は、蓮慈から言わせれば、知能が他より高い準敵集団だ。殺さないライン手前の警戒状態の最前線にマークしなければならない。


 だが、蓮慈はサイコパスではあるが、凶悪犯罪者ではなく、人殺しに快楽を覚えている訳ではない。自己顕示欲を満たす為に法律を犯す行為をする輩ではない。だから、と言って犯罪行為や同族殺しに抵抗があるか?っと言われれば話は別だ。

 己の利益に繋がらず己を害する者ならば、その必要性さえあれば、どんな人物でも殺害する。勿論、保身がある為に明るみにそういった行動を今まで犯した事はないが。

 つまり、敵対しなければ無害であり、自身の保身の為に善人として接してくるのだ。


 しかし、今は彼のその倫理観が非常に揺れていた。

 それもその筈、彼は現在人の手には余る強大な力を有しているのだ。今なら、地球上のあらゆる軍隊から攻撃を受けようが、逆に返り討ちにする自身がある。

 故に、法的処罰(ペナルティ)など恐れるるに足らずなのだ。何人の警察官や軍人、戦闘車両や戦略戦術兵器など無意味。そもそも、彼の理論上は物理的手段にでは一切の傷も負わない様に技量(アビリティ)を付与している。


 だが、それでも彼に危機感を持たせるものがある。


 一つは、自分自身。あくまで、彼の理論上では対物理無敵っという状態であり、彼は物理学の専門家ではないっという事だ。所詮は、全ての技量(アビリティ)のPDCAサイクルも出来ておらず、まともに発動しているかも知れない技量(アビリティ)は幾つもある。「ぼくのかんがえたさいきょうの技量(アビリティ)」でしかない。何処かに、落とし穴がある可能性は有りうる。


 もう一つは、魔法や魔術、更には技量(アビリティ)等の未知なる超常的能力の存在だ。これに対しては、蓮慈は正直不安しかない。魔法魔術はまだ見た事もない全くの未知の存在であり、どの様な作用があるのか全くもって不明だ。そう思えば、魔王という存在もかなり危険視しなければならない。

 技量(アビリティ)にしても、自分自身が超強力且つ理不尽極まりないモノを二つも所有している。他者がこれに肩を並べる様な技量(アビリティ)を持っていてもおかしくはない。


 極めつけは、やはり神と称される様な超越存在だろう。文字通り、人間という存在を超越したより高次の存在ならば、手も足も出ない。というか、そのレベルの相手ならば蓮慈は素直に平伏する。

 逆らう気など毛頭無い。むしろ、素直に平伏し主を讃える事で地球に帰還出来るなら、惜しみ無くそうさせて頂く。もし、その超越存在が悪逆非道の限りを尽くすような、この世全ての悪を凝縮させた様な存在だったとしてもだ。



「………まぁ大抵、何事も上手くいかないもんだよ」



 そう蓮慈は呟きながら、『周辺感知』にあった反応に対して苦笑する。


 その反応は大きく三つに分けられた。

 一つは、横転した豪勢な装飾の馬車を背にした、如何にもやんごとなき御身分の少女と、それを護衛する様に連帯を組む十人の騎士。

 一つは、その護衛の近衛騎士達を半包囲する、如何にもな格好の盗賊達。だが、やけに装備が綺麗なので、盗賊に偽装している可能性有り。

 そして、最後にその付近の上空を飛行する五メートル級の飛竜の存在。あれが近付いてきて戦闘になれば、飛竜の驚異度を高みの見物出来るんだけどなぁっと元より助けに行く気はしなかった。


 お決まりの展開(イベント)の一つだが、この展開に関わった暁には、やんごとなき御仁達の権力争いに巻き込まれる事間違いなし。法的縛りの多い処に身を置きたくない。


 しかし、魔法陣ゴシゴシの前科があるので非常に悩ましい。あれを助ければ、無難に王都や主要都市に入れるのが定番だ。


 なので、近くにいる飛竜が去ってしまう様になら助け、飛竜が襲い掛かっていく様なら、高みの見物をさせてもらおう。

 飛竜を殺して助けにも向かうっという選択肢はなく、むしろ盗賊側の味方をするのも悪くないっと思いつつ、蓮慈はその場に止まり機を待つ事にした。




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