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やりたい放題




 蓮慈は一旦考えるのを止め、スニーカーを創り出す。現在履いているのは、高校指定の上履きだった為、この森のボコボコとした地面を歩くのには向いていないからだ。


 スニーカーに履き替えながら、次に少し厚めの上着を創造する。これもワイシャツ一枚でこの森の中を歩くには心許なかったからだ。


 というか、森を歩く必要などあるのだろうか?『数秘術式』や『空論教典(ドグマ・テオリア)』で空を飛べる様に出来るのではないだろうか?

 それか、乗り物でも創った方がいいのでは?



「………うん。やってみるか」



 蓮慈が呟くと、彼の肩甲骨辺りからワイシャツと上着を破って、四枚二対の翼が空に向かって広がった。そして、その翼をはためかせ、地面から足を離す。


 木々の枝をへし折りながら、空中へみるみる昇っていき、途中でまっ逆さまに落ちた。



「なっ!うぉおおぉぉぉっ!!ぐべらっ!!?」



 再び、木の枝をへし折りながら、地上に向かって墜ちていく。そして、綺麗に五点着地っとは行かずに側面から派手に着地した。



「イッてぇぇぇ!!くそッ『痛感緩和(ペイン・ダウン)』」



 あまりの痛さに思わず、無意識に新しい技量(アビリティ)を創り出し、強制的に痛みを和らげる。それが何れだけ常識破りな事か理解しないままに。



「翼は創れるけど、動かし方なんて知らないしな。知らない事はやるもんじゃないなぁ」


『ナハハハっ、馬鹿だねぇ。派手な着地で何ヵ所か骨折してるぞ』


「腹立つ奴だな。………『自動再生(リジェネレーション)』っ」



 細かい擦り傷や内部の筋肉断裂と骨折が自動的に治っていく。蓮慈はこの時点で薄々、人間やめてるなぁ~っと思っていた。



「まぁ、翼だけが飛行方法じゃないしな。練習しとくかな」


『単純に移動するなら、筋力と体力を増やせばいいだけだろ?横着しようとするから、痛い目見るんだよ』


「へいへい、そらぁ悪ぅござんしたぁ~。『筋力上昇』『体力増加』。………あと、『毒性抵抗』『構成硬化』『衝撃遮断』に、『魔力感知』『術式阻害』『術式干渉』それから────」



 蓮慈は思い付く限りの自己保身の為の技量(アビリティ)を創り足していく。


 物理に対しても、未知の力に対しても、考えられる有りとあらゆる攻撃手段に対しても耐性を付けておく。そして、纏められる技量(アビリティ)は纏め、重ね掛けできるものは複数付けておく。



『おいおい。やりたい放題だな?そんなもんで良いだろう??』


「──分体』。ん?そうか?何が起こるか分からないから、用心に越したことはないんと思うけど………?」



 強大な力を成り行き的に手にした蓮慈だが、彼は元々戦いに特化した人間ではない。あくまでも、一般人ありで尚且、高校生だったのだ。

 正直、これだけの力を有しているのだから、滅多な事がなければ死にはしないだろうが、それこそ神レベルが相手ならば不安だ。



「魔王くらいなら何とかなりそうだから、良いか」



 そう納得をしながら、蓮慈は先程量産した技量(アビリティ)である『周辺探知』と『地図製作』を発動し、周囲の様子を確認する。『周辺探知』でこの辺り一帯の安全確認をし、『地図製作』で正確な地理情報を得るっという算段だ。


 蓮慈の脳内に大量の地形情報や生物情報が流れてくるが、『知力上昇』やら『脳内拡張』、『並列思考』などの技量(アビリティ)も予め創造している為、何の問題もなく情報を処理する事が出来る。



 手に入れた情報によれば、この森の範囲は約六〇平方キロメートル。富士の樹海青木ヶ原の二倍の面積を有している。平均標高も低く、高低差もそれほどでもない様だ。


 しかし、蓮慈の『周辺探知』に引っ掛かった生物達は、やはりと言うか、地球には存在しない未知の生物ばかりだった。いや、ファンタジーの中にいる幻想生物が大量に居たっというべきか。


 筆頭すべきは、やはり緑小鬼(ゴブリン)であろうか。主に、森の麓付近で数を増やしているようだ。



「やっぱり、こういうヤツらって居るんだなぁ」



 勿論、ゴブリンの他にも、紅大餓鬼(オーガ)猪面蛮人(オーク)などの人型生物が存在し、スライムなどの軟体生物も居るようだ。



「極めつけは、やっぱりドラゴンかぁ」



 天空を舞う数体のドラゴン。総じて、生物界に於けるヒエラルキーの頂点に君臨する幻想生物だ。確かに、圧倒的な体躯で制空権を有し灼熱の炎まで吹く生き物が居たら最強だわなぁっと、蓮慈は思う。



「さっき、飛行に失敗したのは不幸中の幸いっと見るべきだな」


『あのまま、飛んでたら喰われてただろうな』


「おぉ、恐い恐い」



 ニシシっと蓮慈は笑いながら、近くにあった木を蹴り飛ばす。

 すると、悪い冗談のように幹がへし折れ、後方のその他の木々を巻き込みながら吹っ飛んでいく。



「軽く蹴っただけなんだけどなぁー。うん、身体能力強化系の技量(アビリティ)もちゃんと適用されてるな」



 他にも数種類の技量(アビリティ)が想像通りに機能していることを確かめると、今度は蓮慈は唐突に走り出す。

 行く手を阻む木々や岩の存在など、気にも掛けずに真っ直ぐ走っていく。彼の行く手を遮る全ての物は、触れたその瞬間から吹き飛ばれ、彼の身体に傷一つ負わせる事も出来ずに木っ端微塵に砕け散る。


 約一キロメートルという距離を二秒で完走し、蓮慈は急停止。自分が走って出来た一本道を振り返る。



「………思ったよりも遅いな」



 どうやら、お気に召さないようだ。うむっと顎に手を当てて、幾つかの技量(アビリティ)を追加し、走る。そして、また納得がいかず、再び追加する。蓮慈はそんなループと検証を二時間程行い、自身が納得する万全の力を手に入れた。



「フゥー、これで良いだろう」


『やり過ぎだ』


「PDCAサイクルを実践しただけだろ?後、お前もう消えて大丈夫だ。………あんま役に立たなかったけど」


『まあ、そうだろうな。黒峰蓮慈、精々自由にいきろよ。そんじゃ、ごきげんよう』



 一応、ナビゲーションをしてくれた謎のプログラムを消し、一人になった蓮慈は再び走り出す。取り合えず、この森から出て再び『周辺感知』と『地図製作』で情報を集め、人間と接触する為だ。


 唯一、不安なのは、『言語翻訳』という技量(アビリティ)がちゃんと働いてくれるかだった。




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