表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

初めての遭遇




 弱体化の具合を確かめた蓮慈は、ついでに新兵器の試作を幾つか試みてから、王都に戻る帰路に着く。


 ちなみに、思いついた新兵器は魔改造スタンガンとレールガンだったのだが、蓮慈はどちらもお蔵行きにした。

 その理由は、前者が「非殺傷性個人携行兵器をわざわざ魔改造して殺傷力を上げるのは、本末転倒である」っとの事であり、後者は「既存チートウェポンでも十分な火力があるのに、わざわざ地球でも実用段階になく信頼性安全性に乏しいレールガンを創る意味はない」という事らしい。


 異世界の物質や、物理法則の無視どころか世界の法則をある程度書き換えられる蓮慈の力を持ってすれば、実用性や安全性の高いレールガンを創造する事は容易い。だが、元々実用化されている兵器を魔改造した方が信頼性は遥かに高い。


 蓮慈一人で扱う場合は、正直安全性や信頼性はある程度無視するのだが、ラウルにも扱える事も基準として武具類は創っているので、それをクリア出来なければ当然お蔵行きだ。


 故に、レールガンは裏でこっそり実験を重ねて、安全性が確認出来たらラウルに渡そうっと思っていたりするので、レールガンに関しては『半お蔵行き』っと言ったところだろうか?


 ちなみに、魔改造スタンガンについては完全にお蔵行きだ。上記の理由は勿論の事、そもそも蓮慈は敵対者の非殺傷無力化などする質ではないし、それが遂に、全面的に表に出てきたのだ。


 今回の弱体化という変化の影響か、現在の彼はは手加減どころか、これっぽっちの情も掛けず(元々存在しないが)、容赦もしないっといっても過言ではない。


 弱体化した蓮慈では、敵対者の存在が自分の死亡(ゲーム・オーバー)へとダイレクトに直結する危険性が大幅に上がるので、敵の息の根は確実に止めておかないと後の復讐や報復っという連鎖が起こりうる可能性があり、下手に生かしておくと却って危険性が大きくなる。彼自身もう安心が出来ないのだ。


 つまり、今現在弱体化している彼は、目の前に敵対者が現れたら法的罰則など気にする前に全力で相手を排除しようする様になってしまったのだ。


 弱体化によって、以前よりもその力は下がったが、凶悪性は桁違いに上がってしまっている。


 故に、非殺傷な兵器など必要ないのだ。

 勿論これから先、何らかの理由で手加減が必要な時もあるだろうが、その時はその時考えようっというスタンスである。



 正直、弱体化して余裕が有るのか無いのかよく分からないが、相棒のラウル曰く「今まで以上に余裕綽綽ですけどっ」との事。



 さて、身体能力と技量(アビリティ)の質が大幅にダウンした蓮慈だが、それでも上位等級の冒険者として十分過ぎる力は持っている。今でも一応、国家単位での喧嘩は可能だ(無論、多大なるダメージは受けるが)。


 故に、弱体化していようが多少の危険は配慮せずに、彼は興味のある事に首を突っ込んで行く。今回もその例に漏れなかった。



「やぁ、どうも。何してるのかなあ?」


「んあ?何だお前??」



 蓮慈が興味を持ったのは、傭兵六人と一人の女性で構成された集団だった。


 傭兵六人はその体格(がたい)のいい体を完全武装で包み、熟練された風格を漂わせている。しかし、女性ただ一人は完全武装どころか、身に付けているのは、ボロ切れっといって差し支えない物だ。女性の大事な部分がギリギリしか隠れておらず、官能的なチラリズムを出している。大きめの首輪と手錠をされているので、只の罪人かあるいは性奴隷か。


 女性が、単なる罪人であった場合、蓮慈の興味は一瞬で失せる。だが、奴隷だった場合は多少の興味を抱く。

 それは、彼女のこれまでの辛い人生や奴隷落ちするまでの経歴などではなく、奴隷という存在についてだ。


 蓮慈は、この世界に転移してから二週間が経っているが、この世界各地、いやセイドリッヒ王国の詳しい憲法や法律を知らない。

 そんなモノは知ってて当たり前なので、誰かに聞くわけにもいかなかったし、ラウルという有能かつ便利な御供が居たので、あまり気にしていなかった。


 大概の事は日本の法律と同じだろうっと思い、人前で殺人や器物破損はしていない。それに、危険性の高い技量(アビリティ)も人目につくところでは使っていない。ある区域(富裕層などが住む貴族街)では、そういった事が危険行為だと見なされるっと思ったからだ。


 この二週間、王都内では大人しく過ごしていたので奇跡的にも犯罪行為と見なされる事はしていないが、やはり知っていた方がいい法律はある。


 その内の一つが、奴隷制度の有無だった。


 この体つきは実に素晴らしいが格好だけみすぼらし女性は、奴隷制度に認められた法的な奴隷なのか?あるいは奴隷制度など元よりなく、裏取引されている違反な、あるいは脱法出来ない奴隷なのか?


 もし仮に、彼女が法令で公式に認められた法的な奴隷だった場合、蓮慈はこれからの生活の中で奴隷っという者に注意しなければならない。

 憲法や法律、法令………まあなんでもいいが、国が認めた奴隷ならば、その身分を必ず保障する法もある筈である。どの程度のモノかは分からないが、程度によってはそれに反してしまえば国家反逆罪やらに該当したり、刑罰として死罪が含まれている場合がありうる。奴隷所有者による同害報復刑(タリオ)が認められているかも知れない。


 蓮慈の攻撃にはどうしても破壊力がある為(弱体化で低下してはいるが)、人口が多いところでその力を発揮すれば無関係な周囲に被害が出るのは必死である。

 流石の蓮慈にも、無関係の人間を巻き込んでまで大規模交戦をするつもりはないが、実戦の際はどうなるかは分からない。


 自分が及ぼした損害賠償は勿論、相手が起こした損害までも賠償させられるかも知れない。そんな時に、奴隷が巻き込まれていた際の損害賠償はどうなるのだろうか?


 奴隷はそもそも、一般の人々のように人権があるのだろうか?障害事件あるいは殺人として扱われるのか、それとも人間としてではなく物として見られ器物破損として扱われるのだろうか?


 蓮慈はそこの事が気になるのだ。


 まあ、もし合法でない違法な奴隷なら、間違いなく障害事件や殺人事件扱いだし、そもそも奴隷は巻き込んでも仕方ないっなんて思っているのが間違っていたりするのだが、最悪、しれっとした顔で普通に一般人すら巻き込むし、理由さえあれば躊躇なく殺すので、あまり気にする必要性はないっと言えばない。


 だが、その損害に応じた責任の大きさは知っておいた方がいい。数百万から数千万の罰金で済むなら、蓮慈は素直に従うだろう。蓮慈自身の命や、長期に渡って身の自由が奪われるような事態にならなければ、彼は割りと素直に従う。


 何せ、蓮慈自身そういった法律で守られているのだから。法律があるからこそ、蓮慈は基本的には(・・・・・)命の危機に晒される事はないし、何かしらな損害があってもそれを補填してくれる。

 法律という皆が守り戒めるべき明記された文章があるから、安全で安心な理想社会が形成されているのだ。


 勿論、あくまでも理論的な話なのだが。


 皆が皆、善良な人間ではないし、真逆の邪悪な人間だって残念な事に存在する。善良な人間だって、全ての人が六法全書を一言一句暗記している訳ではないし、常にそれを持ち歩いている訳ではない。

 そして時には、善良な人間ですら費用対効果か時間対効果などの効率を求めて、法律を無視する事があるのだ。


 誰でも分かる大きな事件や犯罪もあれば、誰も気にされない誰にも気付かない小さな犯罪もある。そういったモノが、法律で作られる理想社会を乱しているのだ。


 故に、法律の保護下にあるとはいえ、人々の安全は絶対ではない。目に見えて違法行為を働く犯罪者も存在するし、人間も生き物であるが故、思いがけない失敗もする。それが法律で守られるべき人々の安全を脅かすのだ。


 蓮慈も、法律が完全なるモノで誰一人として漏れることなく、何の被害損害を受けず幸せに暮らせるっというならば、大人しく法律に従うし、代わりに何らかの義務が生じるならば大人しく遵守するだろう。


 だが、現実はそうではない。一般の人々なら容認出来る程度の、何かしらの出来事が黒峰蓮慈を納得させないのだ。


 即ち、「請け負った義務(支払った費用)に対して保護がざらである(効果不足である)」っと。



 故に、蓮慈は法律で加護されない事に関しては、法律に離反して解決をする。その内の一つが、『敵対者に対する抹殺処分』である。


 法律を遵守しているのに、法律によって守られないのは何事か?蓮慈がそう思ったのは、いくつの頃だっただろうか。


 それは、小学生の時に幼馴染みと言えなくもない少女が、他の生徒に殴られたのを見た時だった。その時、相手側は口論の末に咄嗟にっといった様な感じだったが、蓮慈は激しく激昂した。

 思わず、蓮慈は相手の生徒を殴ろうとしたが、何とか自身を堪えて少女を助けた。あの時から、蓮慈は法律というモノに猜疑心を覚えたのだ。


 ある意味、彼の心の内に秘められた反社会的人格の芽に水を与える事件だったといえるだろう。何せ、彼はその時初めて、「殺意」というモノを覚えたのだから。

 正直、彼がその場で相手に暴行を働かなかった事や、後にその件で報復行為を行わなかったのは奇跡的と言える。



 閑話休題(それはさておき)、そんな過去の経験やらその後の経験で、法律が完全無欠ではない事を重々承知した蓮慈だが、それを守る人が圧倒的に多い世の中で、それに反する生き方は非常に危険な行動だとしているので、彼は自身にあまり損害がない義務や刑罰なら大人しく従う。逆に言えば、罰則が軽く後の人生に響く様なモノもなければ、普通に破る(破ってバレた場合は大人しく罪を償うっという罰を受ける)。


 だから、奴隷という存在が法律で認められているのか?認められている場合どのような扱いや保障をされているのか興味があるっというか気になるのだ。



 それが、蓮慈が彼女───魔族の女奴隷に興味を向けた理由だ。決して、歩く度に揺れて露になりそうな豊乳や、くびれた腰やその下にある豊満な尻や、それこそ見えそうになっている太ももと太ももの間に目が奪われたからではない。断じて違う。ガン見しているが、違う理由なのだ!


 もし、奴隷で購入可能ならば、億単位でも買おうっ!なんて断じて思っていない。


 

 その長い紫色の髪の毛は、溺れげながら淡く蛍光しており、自然と目が惹かれる。よく見れば、顔付きも良くてロングの髪が似合う妖艶な美女である。体つきは上記の様によろしく、歩いた程度の衝撃で揺れる形の良い豊乳。上半身と下半身を繋ぐ官能的なくびれのある腰。そして、引き締まったヒップにそれらを支える程好い太さの健康的な美脚である。


 グラマラスな女性だ。紫色の淡い蛍光色である髪色は少々どころか、かなり特殊だがそれを含めても男性の劣情を十分に掻き立てる。

 そして何より、完全なる翡翠色の蛍光色をしている瞳に、引き込まれそうになる。


 妖艶な体躯が異性の視線を誘うい、瞳が合えば最後、もう視線が離せない。まるで、魔性の───、



「おいっ、あんまりその女と視線を合わせんなっ!」



 唸るような低音の怒鳴り声。それと、「チっ」という小さな舌打ち。


 怒鳴ったのは傭兵の一人だ。蓮慈に何者か問いただした男だった。そして、舌打ちをしたのは魔族の女だ。



「………あ、すまない。夢中になってた」


「いや、こっちこそ大声出しちまって悪いな。ただ、アイツは魔族の女だからな」


「うん。なんかそうみたいだね」


「一応、魔導拘束具で魔法は対して使えねぇーようになってけど、魔眼はまだ健在だらなぁ」


「魔眼?」



 なんだ、知らないのか?っと傭兵は若干驚いた様子になった。



「魔眼は、魔族特有の先天性の技量(アビリティ)だよ。そんな事も知らねぇーのか、極東人は?」


「ああ、初めて知ったよ」


「そうかい。まあ極東には魔族なんて居ねぇーから、無理もねぇーか。アンタ、最近西側(こっち)に上京して来たのか?」


「うん、二週間前にね」



 そうかそうかっと傭兵達は納得する。


 魔族の存在は知っていたが、そんな固有の能力がある事は蓮慈は知らなかった。


 傭兵達は曰く、魔族は全員が魔法を扱えるのと(下手なヤツが居ないとは言っていない)、必ず対象と視線を介して発動する特殊能力を持っているらしい。それが『魔眼』であるとの事。



「そんで、この女の魔眼は幻惑系らしくてなぁ。目線を合わせた異性を従属させる能力みてーなんだわ」


「ヤバくない?」


「いや、一瞬だけ合わせた程度なら、そのまま惹き付ける程度の力で、知ってりゃ目線合わしても効果が下がるし、何とも言えないねぇな。まぁ初見殺しではあったさ、お陰で仲間が四人殺られちまったよ」



 元々は十人だったらしい傭兵達は、キツイ目線を魔族の女に向ける。

 その途端に、女は傭兵と目線を合わせようとするが、彼等はすぐに視線を反らす為、無意味に終わる。



「効果の蓄積とかはされないの?」


「あぁ無いね。だが、五秒以上視線を合わせると敵意が持てなくなって、十秒以上で盲目的な愛情に変わる。十五秒以上合わせりゃ忠実な信者になれっよ」


「しかも、異性引くようなプロポーションだから、なお質が悪いっと………」


「まぁそうだったな。初見で油断してたり、魔眼の存在をしらない兄ちゃんみたいのはほぼ殺られるな」



 蓮慈はその言葉に苦笑するしかなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ