この世界にもロリコンという概念は存在するのだろうか?
いきなり小学生くらいの年齢の女の子に、一緒に依頼を受けないかと言われても、流石の蓮慈にも即答出来るだけの対応力はない。
何せ、本当にただの幼女かも知れないし、ファンタジーならではのロリババであるかも知れないからだ。
本当にただの幼女を血生臭いところに連れていくのに抵抗は、正直無いのだがこの幼女を気に掛けながら行動を起こすのは難易度が高い。戦闘の余波だけで死んでしまいそうだ。
かえって、ロリババだった場合、先輩冒険者なのだろうし厚意を無下にするのは良心が痛むっという訳でもないが、今後の為に古参冒険者とは人脈を作っておくべきか、悩むところではある。
どちらにせよ、依頼内容によるかっと蓮慈は思い、少女の持つ依頼票を受け取る。
内容は、緑小鬼の討伐。少なくとも、五匹以上の討伐が依頼達成条件で、成功報酬は三〇〇〇エレクト。
「………悪くないと思うけど、君は大丈夫?」
「はい。こう見えても、六年冒険者やってますのでっ。基本、荷物持ちですけど」
「え、本当に?じゃあ、先輩かぁー。よろしくお願いします」
「あ、はい。こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
蓮慈の対応が以外だったのか、少女の反応が若干遅れる。蓮慈はその事を気にも止めずに、受付の「依頼受諾窓口」と札の置かれたカウンターまで行く。
「すいませーん、この依頼請けたいんですけど」
「はい、畏まりました。えーと、依頼の受諾者は二名で宜しいですか?」
「えぇ、お願いします」
「では、加盟証明書のご提示をお願いします」
蓮慈は自分の真新しい加盟証明書を提出する。そこで、先輩冒険者である少女では受付カウンターに手がギリギリ届かない事に気が付き、彼女に手を差し向ける。
丁度、脚立を再び巾着袋から出そうとしていた少女だったが、蓮慈が差し出した手に気が付くと、「すいません。お願いしますっ」と苦笑い混じりに会釈をして、その掌に自身の加盟証明書を置いた。
蓮慈は手渡された加盟証明書の額縁が銀色なのに気が付き、伊達に六年間冒険者をやっている訳ではないのだなあっと感心する。
「はい、これもお願いします」
少女の加盟証明書も受付に提出すると 受付嬢は素早く事務的処理を済ませ、依頼受諾証明書を発行して、蓮慈達に加盟証明書の返却と共に受諾証明書も一緒に渡す。
「依頼達成の際に、受諾証明書が必要となりますので、紛失なさらいようにご注意下さい。紛失してしまった際は再発行手数料が掛かりますのでご了承の程、宜しくお願いします」
「はい、分かりました」
蓮慈は礼儀良く会釈して窓口から離れると、近くにあった空席のテーブル席に腰を落ち着かせる。それに習うように、少女も椅子によじ登るように座ったのを確認してから、彼女に加盟証明書を返却する。
「ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。なにせ、初めての依頼で悩んでいたもので。あ、自己紹介がまだでしたね、俺レンジ・クロミネっていいます」
「クロミネさんですね。私はラウルです、家名はありません」
蓮慈とラウルは互いに自己紹介し、加盟証明書も見せあう。
「………『圧縮収納』か」
蓮慈はラウルの加盟証明書に記載されている技量に興味を持ち、素早く『数秘術式』を起動して解析を行う。
『圧縮収納』。物体の形状を維持したまま縮小して、更に質量を減少させて収納する技量。
別段、戦闘時に直接猛威を振るうような技量ではないが、一度に大量の物資が運べるのはかなり大きい。冒険者からすれば、仲間内誰か一人には持っていてほしい技量だ。その場で、物資を創造できる蓮慈は例外だが。
しかし、物質を縮小して更に質量まで軽くなるなら、大量の物を収納する事が可能で、嵩張る物などを簡単に持ち運べるし持ち帰る事もできる。
収穫系の依頼や、大量の獲物を持ち帰る時には非常に便利だろう。
「………『筋力増加』に『防郭展開』。それに『自然治癒』まで」
対するラウルは、明らかに近接物理特化の恋愛の技量に唖然とする。
技量は、同名のものが幾つも存在するが、その効力には個人差がある。ラウルはその冒険者経験から過去に『筋力増加』を持った冒険者に会った事があるが、その効力は何れもバラバラだった。しかし、最低でも大の大人の四倍程の筋力はあったのだ。
『防郭展開』という技量は始めてみるが、同列系統だと思われる『障壁展開』を見た事があった。『障壁展開』は所有者の周囲に半透明の障壁を張るっというシンプルながら強力な技量だった。
そして、最後の『自然治癒』。これはかなりレアな技量で、ラウルも見るのは初めてだった。一応、勤勉なラウルは書物でその存在だけは知っていた。その書物の記載によれば、文字通り所有者の自然治癒力を高め、弱い効力のものでも擦り傷程度なら一瞬で治り、強いものなら骨折すらものの数秒で完治して病気や毒物にも効果があるとか。
所謂、この新米冒険者レンジ・クロミネはアタリだった。