最後の戦い
この世界に召喚されてから三年間、学生だった僕は、勇者として遜色ない程度には強くなっていた。
そして
僕は今魔王城の前に立っている
これで最後だ、絶対に誰も死なせない!
そんな思いを胸に、ゆっくりと魔王城の扉を開ける。扉の取っ手が、僕の熱を指先から奪っていく。
ギイィ
扉が開く音。ひんやりした冷気とともに真っ暗な部屋が視界に入ってくる
何も見えない。 怖い。 足が動かない。 冷たい空気が、暗闇が、そこに潜んでいるだろう何かが……
どうしようもなく、怖い。
死ぬのが、怖い。
「勇者様」
真っ暗な部屋に吸い込まれていた意識が、途端に戻ってくる
隣で、鮮やかな赤の瞳が僕を見つめていた
「大丈夫です、あなたは私が守りますから」
束ねた赤の長髪を揺らし、ルルが微笑んだ
「…僕は」
「心配しなくても、いつもみたいにやればいーんですよ!」
「怖がらなくても俺達がいるだろ?」
「まぁ俺達の方が弱いけどな…」
いつものように、三人がワイワイと語りかけてくる
「皆…ありがとう」
改めて部屋を見つめる、でももう怖くない。だって僕にはみんながいる、僕はひとりじゃない!
「皆、いくよ!」
絶対に僕が守る。口に出さなかったその言葉は、結果で示してみせるから。