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Humility  作者: けろ太
8/8

Again

ピーンポーン、ピーンポーン。


今日2度目のインターホーンがなりびびいた。


きっと宅配ピザだろう。


あれから、唯と色々話し確信をつく答えは出していないが、とりあえずLINEを交換した。


一昨日携帯が壊れてLINEも消えてしまったらしい。


「スイマセーン宅配ピザでーす。」


玄関を開けると、宅配ピザのお兄さんが待っていた。結構イケメンで、どっかで見た事があるような顔をしている。


少しお兄さんを見ていると、シャツや、ズボンが濡れてる事に気付いた。


どうやらまた雨が降ってきたようだ。


「テリヤキチキンのピザのLザイズがおひとつ、そしてコーラがお2つで3500円になります。」


「はい、どうも。」


「ちょうどおわずかりしまーす。

有難うございました。」


そう言って愛想よくお兄さんは帰って行った。



「ピザ来たよ、食べよっか。」


「うん。」



こうやって、また2人でピザを食べる日がくるなんて思ってもみなかった。


「有難う!いただきます。」


「いただきます。」


唯はおいしいおいしいと、僕が一枚目を食べ終わる前に2枚目に手を伸ばしていた。


そうだ、この子はよく食べるんだった。


すこしづつ、だんだんと唯との記憶が蘇ってくる。


ピザはテリヤキチキンしかたべないところ。

目がなくなるほど思いっきりな笑顔で笑う事。

怖いのは大丈夫だけど、グロイ物がダメなところ。


肩にある唯一のホクロ。

キスをすると顔が真っ赤になるところ。


どれも、僕の記憶から一度消えた、いや消したものだった。


幸せだ。


頭の中は久しぶりに幸福感で満ちていた。


「どおしたの?食べないの?」


「あ、うん食べるよ。」

唯の声でまだ一枚目のピザだと気付き急いで2枚目にてをのばした。


「実はさ、今日お母さんと喧嘩して家飛び出してきたんだ。」


彼女はピザの方から視線を変えずに話し始める。


「え?」


「お母さん3日間だけ新潟から帰ってきてて、昨日と今日とでうちに泊まる予定だったの。」


「そーなんだ。」


あの日のお母さんの顔を思い浮かべてしまった。


「それでさ、いろんな話をしているうちに、ユキの話になって、それで喧嘩になった。びっくりしたよ。まさかお母さんがあんな人だったなんて。もう、顔も見たくない。」



「…」


「お母さんは明日の飛行機で帰るから私の家から出られないの!だから逆に自分から飛び出してきたってわけ。」


彼女はピザを食べるスピードを落とさずに話し続ける。


「だから、今日はね、帰る家がないの」


「うん…」



「だから、今日泊めてくれないかな?」


「え?」


「泊めてくれると嬉しいな。」


まさかとは思ったが本当に、こんな展開になるとは。


おいどうするよ童貞、僕どーすればいいんだよ。


頭の中の彼に呼びかけても返事ひとつよこさない。


肝心なことは、自分で決めろって事かよ…


「分かった。いいよ」


「本当?」


「でも、一個だけ条件がある」


「じょーけん?」


「そう。」


「いいよ。エッチな事以外だったらなんでも引き受けてあげる。」


「いきなりそんなお願いしねーよw」

僕のツッコミに彼女は笑ってる。


「じゃあなにさ?」


「さっきの答えだよ。」


「え?」


僕は、最後の一枚をとりながら言った。



「よりを戻そう。今日からまたおつきあいして下さい。」



照れくさかったが、片手にピザを持ちながらしっかりと彼女の方を見て言った。



彼女は一瞬、僕と目が合ったがすぐに逸らした。


うつむきながら、小さい声で言った。


「…うん。いいよ。」




僕はその後、なんて言葉をかけていいか分からなかった。


とにかく、幸せだった。


僕の顔を少しだけ覗き込むように彼女は顔を上げたので、恥ずかしくなり、片手に持っていたピザを急いで口の中に入れた。

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