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Humility  作者: けろ太
7/8

Cried

あの後の事はそんなに覚えていない。


とにかく、あの一言の衝撃が激し過ぎた。


唯の家から駅までは5分くらいのところにあったが、どおやってたどり着いたのかもいまいち覚えていない。


あの後、お母さんは別れて欲しい訳を淡々と語っていた。


何が何だかよく分からなかった。


さっきまで、あんだけ楽しかったのに、どっちが夢なのか、いやどっちも夢なのか、もう頭は訳が分からなくなってしまい。


気付いたら自分の家の目の前にいた。


そして、物事をゆっくりと理解していくために、帰ってきてすぐシャワーを浴びた。


熱いシャワーを浴びていると色んな事から現実逃避できるからだ。


僕は、昔から何かあるとこうやって熱いシャワーを浴びていた。そうして、一度あった事を全部忘れて、ゆっくりと頭の中を整理していく。




「唯と別れてほしいの」


「え…?」

絶対に聞き間違いだと思った。なぜならそんな事を言うはずが無いと思っていたから。


「さっきも言ったかもしれないけど、うちにはもう、お父さんが居ないの。そして、私のお母さんも先月倒れてしまって、私は新潟に帰らないと行けない事になってしまったの。」


僕は無言でお母さんの話を聞く。


「でも、唯はこっちに残るんですって。多分貴方がこっちにいるからよ。でもね、唯が選んだ相手なら私信じてあげようと思ってたの。だから唯を置いて1人で新潟に帰る決心ができてたの…。」


お母さんはそう言って泣き始めてしまった。


「でも、それなら、どおして…」


「私はね…そんな唯の背中を押してあげようと、思っていた…それでねこないだ唯に、彼氏のあなたの事を…色々聞いてみたの…」


お母さんは、涙ぐみながら続ける。


「いい?…今から結構ひどいこと言うわよ…、」



「はい…」



「唯にはね、幸せになって欲しいの…お父さんが亡くなった今、やっぱりきっちりした収入がある人と結婚して、そして、いい家庭を気づきあげて欲しいの。でもね、佐藤くん、それは、あなたとじゃそれはできない気がするのよ。

今日佐藤くんと少しの時間を過ごして、貴方は良い人だって分かった。でも、それだけじゃダメなのよ…。」


そう言ってお母さんはまた、大きな声で泣き始めてしまった。


「お母さん、でもぼく、」


そう言いかけて、言葉を飲み込んだ。


悔しかった。めちゃくちゃ悔しかったが続ける言葉は見つからなかった。


そこからの記憶はあまり無いが、失礼しますと頭を下げて、逃げてしまったんだと思う。


もう、悔しくて情けなくて自分の事を今よりも大っ嫌いになった。


お母さんは唯の為を思って言ってるんだ。


今のどおしようもない僕がどうこう言っても、変わる問題じゃない。


いつのまにか自分に言い聞かせていた。


気付いたら指がふやけるほど長時間シャワーを、浴びていたので、勢いよくドアを開け、タオルでからだを拭く。


ふと前にある鏡を見てしまった。


「何、泣いてんだよ。お前が悪いんだろ。」


鏡に映る自分の姿に、怒る。


泣いたのは何年ぶりだろう。


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