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Humility  作者: けろ太
1/8

Irregular

ふわっと甘くどこか懐かしさを感じるこの香り。この香りを嗅ぐともうこんな時期なのかと思う。


上着を着てくれば良かったなと少しの後悔を胸に、駅から家までの道のりを歩く。


専門学校を卒業し、就活もせずにフリーターをしながら将来の夢を探し続けて、もうすぐ3年が経つ。今年こそは何か新しい事が見つかるんじゃないかと毎年思っているが、思っているだけの自分には当然なにも変化が無くこうして、バイトと家への往復がルーティン化している。


103号室の標識を確認し、鍵を開けて部屋に入ると「ただいま、おかえり」と一人二役を素早く済ませた。


このまま、ベッドで寝てしまうのもありだと思ったが、お腹が減っているし、喉もカラカラだった。


電気をつける前に、急いで冷蔵庫を開ける。


多分、キャベツの反玉と豚バラが入っているだろう。今日はその具材でお好み焼きを作る


そう決めていた。


暗闇の中、開けた冷蔵庫からまばゆい光が放たれる。


目を細めながら中を見渡すと、豚バラとキャベツの姿は無く、綺麗に整列されたビール達だけがお出迎えしてくれた。


「そうじゃん!昨日焼きそばに使っちゃったじゃん!」


大きめの独り言が暗い部屋にこだましたので、電気をつけ、諦めてストックされているカップラーメンに手を伸ばそうとしたが、床に置いたカバンの中からピンク色の本が少し見えた事により、再びお好み焼きへの情熱が湧いた。


いやダメだ、今日は、絶対にお好み焼きを食べる。


いつにない堅い決心は、空腹や疲労さえ寄せつけなかった。


時計の針は11時30分を指している。


「後、30分か…」


家から少し離れたところにスーパーがあるが営業時間は10時〜24時まで。


ここまできたら、そんなの関係ない。


「よし。」と気合を入れて、今度は後悔の無いようにリビングに掛かっていた上着に腕を通し、帰ってきたばかりの103号室を後にした。

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