第5話:同居
「あ、そう言えば...」
床に寝転がりながらゲームをしていた鈴弥が口を開いた。
「な、なによ...?」
琴はソファーに座って鈴弥の家にあったゲーム雑誌を読んでいる。
「帰る家がないって...どいうことだ?」
「え、いまさら!?」
時刻は朝の10:30
今朝のやり取りから3時間は経っていた...。
「いや、帰る家がないって...今までどうしてたんだ?」
「う、うーん...どう説明したらいいか」
琴は首を傾げていろいろ考えている。
「まぁ...とある人の家に...居候してたんだけどね」
「...男の人?」
「女の子よ!」
「ホッ、てか女の...子!?」
「そう、アンタと同じくらいの歳の女の子よ」
「なん…だと…」
(テッテテテテテ〜)
鈴弥の持っていたゲーム機から
ゲームオーバーの効果音が流れた。
「その子は色々と私に協力してくれたし、昨日使ったあの蛇になる紙だってその子が作ったのよ?」
彼女は鈴弥と目を合わすことなくゲーム雑誌を読み進めていった。
「へぇ...もしかして、陰陽師かなにか?」
「うーん、どうだろう? 陰陽師紛いなことをやってるみたいだけど...別に妖祓いとかはしてないみたいだし?」
「どういうことだ...?」
「陰陽師の術を研究してるのよ、
式神から対妖用の武具まで...
あ、そういえば彼女の家に陰陽師がよく尋ねてきてたわね」
「俺と同い年くらいでそこまで...でもなんでその子の家に帰らないんだ?」
鈴弥がそう問いかけると
琴は読んでいた雑誌をソファーに置いて鈴弥に背中を向けた。
「そ、その子と喧嘩しちゃったのよ、些細なことでね...だからつい...こんな家出ていってやるって言っちゃったのよ」
・・・・・・・・・
「......(もっと何か凄い理由かと思ったら可愛いじゃないですか)」
「ま、まぁ、私も悪かったんだけどね...でも私だって研究に付き合ってあげてるんだからさ...(ゴニョゴニョ」
「...(研究?)」
鈴弥の脳内には琴と少女の研究風景のアレやソレやが駆け巡った。
「ちょ...なにニヤニヤしてるのよ!」
「はっ!...ご、ごめんごめん」
「また、どうしようも無いこと考えてたんでしょ!」
(図星し)
「そ、そんなことはない!」
「どうだかねぇ...?」
琴は腕を組みながら
横目で鈴弥を見ていた。
「で、でもアレだ!
喧嘩したんならちゃんと謝った方がいんじゃないか?」
「うっ... そ、それはそうなんだけどね?出て行った手前帰りにくいというか?...謝りにくいというか...」
「...(素直じゃないなぁ)」
「だ、だからさ...あ、あのね、ほとぼりが冷めるまでここに私を置いてほしいなぁ...なんて...あ、もちろん無理にとは言わない...」
彼女の提案に
鈴弥は考えることなく答えた。
「いいよ?」
「え...即答!?」
「まぁ、てか昨日だって即答したじゃないか」
「そ、それはそうだけど...」
琴はまさか本当に居候させてくれるとは本気で思っていなかったらしく
何度も鈴弥に本当かどうか聞き返した。
「う、うそじゃないわよね!?」
「本当だって...あ、でも俺の家...
女の子の服ないよ?」
もちろん当たり前のことだが...
「あ、しまったわ...私の生活用品とか全部あの子の家に置きっぱなしだった...」
「えっ? それは...まずい」
問題は服だけでは無く生活用品もあったようだ。
全部買って揃えるにしても、鈴弥にはそれだけの財は持ってなかった。
「仕方ない...その子の家に行って事情を話してこっちに生活用品とか持ってきてもらうか」
「それしかない...よねぇ...」
琴は少し暗い表情をした。
自分から出て行った手前
本人に会うのは気まずいようだ。
「心配すんなって、住所さえ教えてくれれば俺が行ってくるよ」
「ほ、ほんと!?...ほんとに行ってくれるの!?」
「おう!」
「あ、ありがとう!」
鈴弥は琴に紙を渡して
その子の住所を書いてもらった。
「はい、ここが赤城書店の住所よ」
「赤城?...それがその子の苗字か...?」
「そう、表向きではただの書店なんだけどね...」
「ふーん...表向きでは...か」
表向きでは...
それはその書店が裏では妖関係に
通じているということだ。
「まっ とりあえず行ってくるよ」
「う、うん!気をつけて行ってらっしゃい!」
鈴弥は未支度をして玄関へと向かった。
「あぁそうだ! 鍵は一応かけとくけど変な人とか来たら開けちゃだめだからね?」
「分かってるわよ! 人を子供扱いしないでよね!」
「あはは、冗談だよ冗談!」
鈴弥は少し笑い
行ってきますを言うと
自分の家を後にした。
(バタンッ)
「フフッ...まったくもう」
琴の胸には少しの不安と
大きな喜びが広がっていた。




