プロローグ 入学式と悪童ちゃん
ここは【真堂中学校】。
今日から新入生が入学してくる。
そこにある三人の新入生が入学式した事から始まる、奇妙かつ異常な学校生活である。
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雲ひとつない(でも多分ポツポツ浮いてる)晴天の空、舞い散る桜。
くるものを拒まないくらいに開け放たれた校門の前に、アタシは立ち尽くしていた。
「今日からアタシも中学生なんだな〜…」
アタシは、浅木 希望。
今年からこの学校に入学する新入生で、結構大きい学校に絶賛ビビり中だ。
………まあ正直に言ってしまうと、学校なんてあんまり来たくないのだが。
アタシは小学三年生の時から卒業までずっといじめられてた、要するにイジメられっ子だ。
毎日毎日陰険なイジメを受け、何度も心が折れた。やさぐれた時期もあったがもう黒歴史。
今でもイジメられていた時の記憶が夢に出てくる。……………泣きたい。
実際今でもイジメの記憶が脳裏に出てきて、校門を潜れずにいる。足めっちゃガクガクしてる。
どうしても勇気ある一歩を踏み出せない。中に入れる気がしない。
……そうやってただただじーっとしていると、後ろからやる気のない声が聞こえて来た。
「………おーい」
ビクッとして、後ろに振り返る。
すると………黒髪をポニーテールに纏め、整った顔だが目にやる気がない。
そんな感じの背の低い、可愛らしい女の子が立っていた。
アタシの異常な学園生活は、この子と出会った時から始まった。
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まだ眠気が残っている気だるい朝。わちゃくちゃ話し声が聞こえてくる通学路。
かったるい体を引きずり、あくびをしながら通学路を俺は歩いていた。
(中学生か………めんどい)
俺は柊木 鈴。
今日から真堂中学校?とかいう中学校の生徒になる。正直だるい。
学校めんどくさい。入学式だろうが行きたくない。
母さんに行ってきてって言われなきゃ今頃布団の上で寝ているだろう。
別に学校に悪い思い出も無いが………いい思い出もない。
自分は、めっちゃくちゃ不良に絡まれる。
校舎裏に呼び出され、自分よりもデカイ野郎に複数で囲まれ、
全員ボコして授業に戻る。それが小学校での日常だった。
最初はクラス内でいきがっていた様子のガキ大将をボコった事から始まった。
そこから学校中の悪童にケンカふっかけられまくって一時期大変だった。
柔道、剣道、空手を習っている奴もなぜか挑んでくる始末。
高校生3〜4人叩きのめした時は本気で怖がられた。
まあ、そんな毎日送っているせいで学校行っても楽しくなくなってしまったワケで……
卒業まで退屈で退屈で仕方がなかった。
まぁ卒業したって中学まで義務教育上通わないといけないし。
こんな事言ってるうちに校門の前に着いたワケだけど……
「ぅぅ〜…どうしよう………でも……」
何やってんのコイツ?
後十分か十五分かそれくらいで入学式始まんのに
入ろうとしてんのか帰ろうとしてんのか、校門の前で挙動不審になってる
橙色の髪の女子生徒がいる。
精神的に余裕がないのか、全然こっちに気がついていない。
だいたい2m位まで近づいてるのに、メッチャガン見してんのに。
…………まあ、なんか珍しいもの見たような気分になったので、
俺はこの挙動不審の女子生徒に声かける事にした。
「おい」
「ん〜………」
「…おい」
「………………」
「………おーい」
「ふぇっ⁉︎」
ビビり過ぎだろ。つーか普通聞こえるだろ、どんだけ余裕無いんだよ。
足が小刻みに震えてるのは置いといて、やっとこっち向いた。
………以外に綺麗な顔してるな。
自分では気がついてないんだろうが、すごく怯えたような顔してる。
ああ、そういや自分、目つき悪かった。困ったな。この状況どう切り抜けるか?
………あーもうめんどい、出たとこ勝負だ。
「じきに始業式始まるぞ?」
「えっ?」
橙色の髪の女子が腕時計を確認するような仕草をして、
目に見えるくらいに焦り始めた。
「うそ!もうこんな時間なの⁉︎あわわ、どうしよ」
「じれったい奴だな」
もーコイツめんどい。さっきから慌ててばっかで余裕がない。
このまま相手してたら確実に遅れるので、手を掴んで、
「このままじゃ確実に遅れるからとっとと行くぞ」
と、本人の意思聞く気ゼロで引きずってでも連行する事にした。
なんか泣いているような気がするが、空耳、空耳。
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「えー、皆さん、ご入学、おめでとうございます。校長の…」
どんな時、どんな学校でも校長の話は長い。名前とかどうでもいい。
ああ、眠い………昨日夜の一時くらいまでモ○ハンやってたのが原因だろう。
無理矢理連れてきた橙髪の女子は自分の隣に座らせている。
どんだけ緊張してんだよ。足ガクガク言ってんぞ。
早く終わらないかなー、とか思ってあたりを見回していると
なんだか見覚えのある背中の男子を見つけた。
あれは……幼稚の頃から一緒だった波風 紫音か?
あいつもここに在校すんのか…まあいた方が気楽でいいが。
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「んん〜やっと終わった…」
校長の話さえ終われば後の流れは結構スムーズ。入学式ってそんなもん。
HRの担任の話もほぼ聞き流し、やっと帰宅できると背筋を伸ばした。
橙髪の女子は同じクラス、紫音は別のクラスに入ったらしい。
まあ俺は基本的に他人にはあまり関わりたくないのでそれだけ確認したのちに
カバンに教科書やらを詰め込んでとっとと帰ろうとした。
その時、朝出会った橙髪の女子に声かけられた。
「ね、ねぇ」
「何?」
「今日、一緒に帰らない?」
…なんかこういうやりとりが懐かしく感じてしまった。
不良やらをしばいていた時期は皆から避けられたので
当然こういうお誘いはゼロに等しかった。
まあ、せっかく向こうから声かけてきたので、
「ああ、いいけど」
と返し、一緒に帰る事にした。
そんで帰宅路で橙髪がこんなことを聞いてきた。
「ね、ねえ、あなたはどうして私を引っ張っていったの?」
「んぁ?
あーそうだなぁ、なんか友人思い出してな」
「そ、その子はどういう人だったの?」
「優柔不断でおっちょこちょいでネガティブ」
そう答えた時、橙髪は何故か落ち込んだような様子だった。
聞かれたから答えただけだよ?そんな反応されたら困る。
「…………そういえば名前聞いてなかったな
俺は柊木 凛だ。お前の名前は?」
「えっ、あっ、浅木 希望です…」
そう自己紹介し合った時、視線を感じて前を見た。
「よう柊木ぃ。相変わらず無愛想なツラしてやがんなぁ?」
「ヒィッ⁉︎」
なんかいかにもガラ悪い奴らが3人位いた。
ああ、いつものヤツか。俺はそう思えるけど隣の浅木はそうはいかない。
完全にビビっている。襲いかかられたら絶対泣くタイプか。
甲高い声まで出しちゃって、そういう反応されると相手が調子のっちゃうよ?
「おうおう!柊木テメェ、俺らの顔忘れたわけじゃねぇだろうなぁ!」
「あー……どちらさんだ?お前らみたいな顔はいくらでも見てきたから
正直覚える気が無くてな」
「このヤロ、ふざけやがって!」
「きゃあああぁぁーー‼︎」
浅木が叫ぶ。
やっぱこうなるのか。いつもの殴り合いが始まる。
まあ相手の攻撃は大抵見切れるから相手の拳は当たりゃしないけど。
一人目は大ぶりの拳をしゃがんで避け、腹に膝をかます。
二人目は膝決めた隙突こうと横から蹴ったが肘使って防ぎ、回し蹴り。
はい腰巾着の出番終わり。後はいかにも小物っぽく喋ってた奴だけ。
「この程度か?つまらない」
「クソがァ!」
もうヤケになった感じで突っ込んでくる。馬鹿なやつ。
こういう奴以上にやりやすい奴はいない。
「ほいっと」
ベキ!
「ぐぎゃあ⁉︎」
ちょっと後ろに下がって顔狙いで蹴り上げる。見事に命中。
少しばかり宙に浮き、大の字にぶっ倒れた。
「はい、おしまい……」
「……………え…?」
ビビって目をつぶってガタガタ震えていた浅木がこっち見た。
なんかあり得ない物を見たような目で。
「え……えええええええええええ⁉︎⁉︎」
………まあこういう反応されるとは思った。
絡まれてボコられそうになって目をつぶってもう一回開いたら
こんな死屍累々になっているんだから。
あーあ、またやってしまった…どう説明しようかこれ?
そう考えつつ、腰が抜けていたらしい浅木を無理矢理引っ張って
帰路に着いた。
…明日からどうなるか、期待せずに楽しみにしておこう。
小説を読んで下さり、ありがとうございました。
これが初めての投稿なので全然うまく書けていないかもしれませんが、これからもこの連載小説を読んでくれたら嬉しいです。