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永遠と続く闇



俺の暗殺業は7年。子供の頃のスリを加えると10年にもなる。


まだ幼かった俺を育ててくれたホームレスのじいちゃんは病に侵されていた。そのためにあちこちから薬や治療代を盗むためにスリをやっていたんだ。


だけど、俺がスリに慣れた頃には病は悪化し、手の施しようがなかった。薬を盗んできても治るはずなく、治療代を盗んできても治療できない。

自分は何のためにやって来たんだ、恩さえも返せないのか、と後悔した。


それから間もなくしてじいちゃんは亡くなった。最後の最後まで俺のことを心配していた。

寒くないか?腹は減ってないか?と二言目にはそんな台詞ばっかり。

自分はどうなんだと言いたかった。薄いコートで寒さを凌ぎ、土にまみれた雀の涙ほどの残飯を食ってる自分はどうなんだと怒鳴りたかった。


俺のことだけを心配していたじいちゃんは心の支えだ。だから、じいちゃんが望んでいた世界を築きたい。


"誰も飢えることない世界"


これがじいちゃんの見たかった世界。誰よりも飢えを知り、誰よりも飢えを体験したじいちゃんの夢だった。若い頃から苦労していたじいちゃんは食事も出来ない頃が多々あった。


政治が不安定らしい。ガキの頃の俺にはわからなかったが、失業者やホームレスは増えていく一方で、政策もなかった。

ようは国民は捨てられた。そう気づいたのはスリをやり始めた頃だ。


じいちゃんが死んでから暗殺業を始め、スリの経験が活かされて有名になった。そのおかげで世界の名高い政治家や議員、さらには一般庶民も依頼を願望してきた。


だが、どんな依頼も受けてきたわけじゃない。例えば、殺害相手が善良な人間だったら、人々に手を差し伸べる人ならば、殺したくない。


以前、とある老年の議員から暗殺を承った。内容は敵対視している若い議員の暗殺だ。政策の思考で火花をぶつける間柄だとか。


老年の議員は増税や軍事力増加などという国家の増進に力を入れたがっていた。

それに対し、若い議員はそれよりも貧しい人達を救済するために国税を使うべきだと言い出したようだ。


金を貪る汚い政治家にはそれが目の上のタンコブなのだろう。そのために代表者の老年の議員が依頼してきた。


結果はどうだろう。どちらを殺すべくかは国民が決める。やはり、酷評なのは老年の議員だ。あいつこそが目の上のタンコブだな。


獲物は決まった、あとは実行するだけだった。



このように、対象は個人が決めるものではない。大半で決めるものだ。

個人の思考や思惑にはこだわらない。本当に殺すのが必要な相手だけを殺す、それが"狩人(プレデター)"だ。


ここに、主に貧民の味方をする暗殺者 "狩人(プレデター)"が誕生したのだった。




▼△▼△▼△▼△




「ん~、いい天気だな。」


そんな伝説の暗殺者も今は名家の執事。あの武勇溢れる業も無用の存在となった。


どこかの広々とした公園のベンチに腰掛け、ハンバーガーを食している。近くのハンバーガーチェーン店で買ったハンバーガーだ。なんでかは知らんがサービスされた。あの女性店員、クビにされないかな?


まあ、そんなことをふと考えながら大きく口を開けて食する。

落ちたパンくずを雀にやりながらまた口へと含む。


今日は護衛の仕事は休みだ。ここんところ働き詰めなので凛が休みをとってくれた。肝心の凛は桜花と朱乃の護衛だ。おそらく緋鞠もいるだろうな。

あのふてぶてしい凛が休みをとってくれるとは、明日は雨かな。


せっかくの休日だ。いつもは出来ないことでもやるか。


「で、そこのじいさんはいつまでそこにいるんだ?」


「・・・けっ、最近の若者は言葉使いがなってねぇな。。」


ベンチの後ろのアカマツからひょこっと一人の老人が顔を出す。

若干白髪混じりの頭髪に革ジャンを着たヤンキーみたいなじいさんだ。タバコをくわえながらベンチの隣に腰掛けた。


左の脇が膨らんでる。拳銃が一丁あるな。ここは、日本だ。帯銃はよせっつーの。


「ん?そんな燕尾服みてーな服、どっから盗んできた?」


「悪いがこれは支給品だ。職についたんだよ」


この悪態丸出しのじいさんは遠峰(とおみね) 和敬(かずのり)といって、元公安警察だ。

公安警察の中でも世間どころが、職場仲間にも公にしない秘匿の刑事をやってたらしく、数々のテロやカルトを解決してたらしい。


しかも殺しのライセンスを持つ特務の役職のようだ。幾度の修羅場を潜り抜けてきた国内トップクラスの秘密諜報員だ。アメリカでいうCIAみたいなもんだ。


現在はとっくに退役してブラブラしている様だ。年寄りだが腕は鈍ってない。


初めて来日したときに目をつけられたのが事の始まりだ。本人も政治の意向で動かされるのは嫌いらしく、馬が合った。その日から知り合いになった。


「お前が雇われた?その身なりなら、どこぞの屋敷に仕えたのか?」


「そうだよ。久遠家だ。」


その名字を聞いた途端、眉尻を寄せる。


「久遠か・・・。そういや、新人が入ったと風の噂で聞いたが・・・おめぇさんだったとはね。で?仕事はどうだ?」


「今日は非番だ。ちょっとブラブラしてた。」


「おめぇさんみてぇな奴をブラブラさせるとは、なかなか肝が据わった野郎じゃねえか。」


「やめろって。俺はもう"狩人(プレデター)"じゃない。先月止めたんだ。当主様の命令でな。」


「ほぉ、やっぱりね。さっき後ろに立ったのに反応が遅かったのはそのせいか。鈍ったようだな、納得したよ。」


「ふん。」


こんなじいさんと休日に二人きりとは因果な日だな。素直に凛に着いていけばよかった。


「・・・それに、血の匂いも薄い。こりゃ、どういうことだい?」


血の匂い。勘なのか、単に鼻が効くのか分からんが、プロとしての直感だろう。同じ人を殺す側の人間としてはバレバレのようだ。


「・・・まさかとは思うが、あんさん、殺しをやめたんかい?」


やけに重々しい口調だ。少しばかり目付きが鋭くなり、普段のちゃらけた態度は消え失せてる。

まるで別人と話しているようだ。


「・・・無理に決まってらぁ。俺も人を殺すことを何度止めようとしたか。だが、止める度に気がおかしくなっちまうんだよ。それを沈めるために殺す。一度人を殺した野郎は二度と引き返せねぇんだ。」


「・・・悪いが説教はごめんだ。」


「まあ、話を聞けって。今でも止めたくても止めれない。月に一回はそういうバイトをやってるんだよ。退役したってのにこの様だ。」


「だったらとっとと隠居しろ。俺はもう行くからな。」


これ以上、じいさんの昔ばなしに花咲かせてもしょうがない。せっかくの休日をこのじいさんだけで埋めるのは勿体ないしな。

ハンバーガーも食べ終わったので繁華街でブラブラするか。金も貯まったようだし。


ベンチから立つと突然じいさんは呟くようにして話しかけてきた。


「ーー先日、羽田に最重要監視人物(レッドリスト)が来た。CIAにいる知り合いの警告と一緒にな。」


最重要監視対象 通称"レッドリスト"。

国際犯罪者、テログループのボス、カルト教団の教主、元軍人など、政府が危険視している人物をファイルにまとめたものだ。一個人、もしくは一団体が対象とされ、各国の国際警察機関や軍事機関が日に日に追跡調査してる。


なかには過激派もいるため、一般人に危害がおよぶ前に阻止しなければならないのが一苦労なのだ。

たしか、俺も以前アフリカの対象人物を殺ったことがあるな。あいつは元軍人だったから始末は大変だった。


そんな危険な人物がここ、日本に来たとは。危惧すべき事態だ。


「奴さんの狙いはまだわかっちゃいねぇ。まあ、誰かを殺すのは当たり前だろうな。」


「・・・それで?俺に依頼か?」


「いいや、ただの警告だ。気ぃつけな、かなりの腕らしいぜ?」


かなりの強者か。まあ、俺には関係ない。どっかの誰かに任せるとしよう。


だけども嫌な予感がする。俺はこれでも勘がよく当たる、しかも、嫌な時だけ。


(まさか、あの家には来ねぇよな?)


可能性はゼロではない。あの屋敷のメイドはほとんどが元傭兵や暗殺者やスパイだ。誰しも怨恨を招くのは目に見えてる。


1度屋敷に帰ってみるか。


「じゃあな、じいさん。」


「お前さんも頑張れよ?」


最後に軽口を叩きながら公園を立ち去る。去り際にチラッとあのじいさん見たけどまだタバコ吸ってんのか。

いいかげん禁煙しろっての。




△▼△▼△▼△▼





「ふふっ、次はどこに行こうかしら?」


「うむ、あの店なんかはどうだ?」


お嬢様と朱乃様は久しぶりに休日が合ったので買い物を楽しんでらっしゃる。

歓楽街での買い物が中心だ。服や靴がほとんどで、趣味である菜園の肥料などの消耗品を買い求められた。


朱乃様は何を買ったか教えてはくださらない。普段からミステリアスな方とは思っていたが、こうも変わってると驚く他ない。緋鞠が苦労するのもわかる気がする。


「凛、あの新人はどこぞへ?朝からいないとは思ってたけど・・・」


そんな朱乃様は斗真のことを聞いてくる。単純に気なっただけらしく、緋鞠も同様に再質問してきた。


「斗真は屋敷にいます。今日は非番ですので。ですが、あの問題児のことなので、外をブラブラしている頃でしょう。」


「ふっ、かなり面白い人なのね。堅実な人と思ってたけど。」


やけに斗真を買ってる様子だ。なんでかは知らないが、あの男は初対面で好感を持たれやすい。現にお嬢様がいい例だ。


「さて、買い物も終わりましたので屋敷に帰りましょう。朱乃様、当家でお茶でも?」


「ええ、頂くわ。緋鞠もいらっしゃい。」


「かたじけない。」


近くに停めたリムジンにお嬢様と朱乃様を乗せる。緋鞠は助手席だ。

この歓楽街から屋敷まで少しばかり距離があるが、お嬢様達は談笑なさってるので時間は関係なさそうだ。安全運転で帰宅したい。


「凛殿、斗真殿は屋敷に御座ろうか?」


アクセルを踏むと同時に緋鞠がそんなことを口にした。


「ええ、そうですよ?なにか用でも?」


「あ、いや、拙者、先日の戦闘で敗北を決し、己の未熟さを痛感したで御座る。願わくば、初めから鍛え直したい。無論、斗真殿を相手に。」


「斗真にですか?彼はそのようなことはしない質かと。」


「しかし、このままでは主君である朱乃様を御守りできぬ。是が非でも指南の了承を受けてみせるで御座る。」


久しぶりに緋鞠が燃え上がっている。こんなに熱い緋鞠はいつぶりだろうか。

彼女とは数年ほどの付き合いだが、こんな緋鞠はまだ見たことない。何がそんなに熱血にしているのだろうか。


そんなことをふと頭に浮かべながらハンドルを操作する。


この辺りは人里離れた地帯だ。高い樹木が生え、隣接してる市までの数少ない通りの一つだ。

そのなかでもとくに人通りが少ない道、伐採などの林業が盛んだった地域を通っている。夜になる前にここは過ぎたい。車のライトだけではお嬢様を怖がらせてしまうからだ。



日は沈みかけ、飄々とした闇が立ち赴く。もうじき夜であることを強調しているようだ。


(なんででしょうか?胸騒ぎがします。)


長年の勘。歳月を越して培った勘がそう叫んでいる。まさかとは思うが、敵だろうか?


自分は元スパイだ。世界のあちこちで動いていたので恨みを買うのは慣れている。

まさか、日本(ここ)にまで来たのか?


ぬぐりきれない不安と恐怖を心に置き去りにして、運転を再開する。


しばらくすると屋敷が見えてきた。だが、門番に誰かいる。従者か?


その人物は緋鞠も気づいたようだ。だが、日が沈みかけてるので逆光により、誰だかは鮮明に捉えられない。


仕方なく車から降り、歩きながら問いただす。


「すみません、当家に何かご用ですか?」


フードを被っているので人物像まではわからない。だけど、立ち方からすれば男であることは間違いなさそうだ。


身長は極めつけ高い。目測でも180センチ以上はありそうだ。


四肢がヒョロっとしていて、痩せている。お世辞にも、スリムとは言えないが痩せこけていることは確かだ。


しかし、この男は私の問いに返答しない。それよりも、今の問いを聞いてなかったような素振りだ。


「あの・・・?」


この男が答えないことに疑問を抱く。

すると、ようやく男は口を開いてくれた。


「ようやく・・・・見つけたぜ・・・凛よぉ・・・!!」


「え・・・?」




ザシュという果肉を切り裂くような生々しい音がする。音源は自身の体。右肩から左腰にかけて横一閃に切り裂かれた。

支給品であるメイド服を裂き、その白い肌さえも裂いていく。


突然のことに頭が追い付かなかった。


「ぐうぅ!?」


バク転をして後方に移動しながら腰のククリナイフを手に取った。

傷は辛うじて浅いほうだ。腹にかすかな切り傷を付けられたが、戦闘に問題はない。


すぐさま構えをとる。


「凛殿!」


「来るな!こいつは私がやります!貴女はお嬢様をお頼みします!」


危惧を察知した緋鞠と不安そうに見守るお嬢様達を近づかせないようにする。緋鞠と二人で戦えば有利だが、あの男は禍々しい何かを感じる。

そんな男に緋鞠を危険に晒すわけにはいかない。ここは自分一人でやる。


「けけけけ・・・さすがは"蝙蝠(ファントム)、俺を楽しませてくれよぉ?」


男がフードを取るとそこには見慣れた顔があった。


「ジャスク!?」


「けけけけ・・・2年ぶりか?ずいぶん出世したじゃねぇか。屋敷のメイドさんとはな。」


「なぜここに?貴方は死んだはず!」


「死んだ?それは語弊だな。俺はちゃんと生きてるさ、お前を・・・」


ダッッ!!


「殺すためになぁぁっ!!!」


踏み込みが見えないほどの走り。一瞬でトップスピードになり、凛との間合いを詰めてきた。長い体を勢いよく動かし、攻撃へ図る。


奴の使用武器はナイフ。万能なアウトドア用のナイフではなく、人を殺せるような異形のナイフだ。

刺されば良くて重傷、悪くて致命傷だ。一撃が重いゆえに、殺傷力も高い。危険なタイプの業物だ。


さっきの一撃は多少距離があったために軽く済んだ。もし、深刻に受けていたら臓府が機能することは二度となかっただろう。

なんとしても攻撃を避けなければ。


「ヒャハハハハハハハ!!」


ジャスクは一心不乱にナイフを振るってくる。右から左からと蠅を叩くように振ってきた。


「くっ・・!」


一つ一つ見切ってはククリナイフで防ぎ、見切っては防ぐの繰り返しだ。ジャスクの武器はあのナイフだけだ。銃も持ってないように見える。


(距離をとって撃ちましょう・・・)


素早い移動で屋敷から離れた森に入る。思った通りジャスクも付いてきた。このまま引き寄せ、狙いを定めた。


ガッ!


「っ!?」


だが、それも出来なかった。狙いを定めると同時に、ジャスクが投げた小型ナイフが銃口の奥まで突き刺さる。

引き金を引いても弾丸が発射されない。もはや、この銃は無用の存在となった。


仕方なく銃を棄て、接近戦でけりをつけることにした。


「一つ質問です!なぜ日本に?」


「けけけけ、忘れたとは言わせねえぜ!2年前、あの事をな!」


「っ!まだ根に持ってるのですか!あれは貴方の自業自得。恨むなら自分を恨みなさい!」


「いいや!俺のしたことに責はない!死ぬのは・・・お前だぁぁ!!」


執念深い怒りを露にし、四肢を使って猛攻してくる。


連続かつ断続的な斬撃は厄介な代物だ。長い胴体の分リーチが長く、鞭のようにしなることで攻撃が倍加される。


「ハァ!」


すると突然、ジャスクは何かを投擲した。手榴弾か何かか?


いや、手榴弾ではない。ナイフだ。無数の数を誇るおびただしい数のナイフを両手で辺りへ投げた。武器を易々と捨てるなんて気が狂ったのだろうか。


(何かを仕掛けてくる?いや、今のナイフに何の意味が・・・?)


ジリジリと足踏みして相手の出方を見る。しかし、ジャスクは動くなく、ただその場に佇んでいる。

ニヤニヤと笑っているのが妙に気になる。


「ここで勝負を決めます!」


チャンスと読んでか、凛が先手をとる。なにもせず立っているジャスク目掛けて勢いよく走り出した。


現役時代によって鍛えられた足腰でいっきに間合いを詰めてくる。


だが、


シュパッ


「うっ!?」


何かの手によって、走行中の足を止めねばならなくなった。

ジャスクは数メートル先にいるはずなのに、突然 右の二の腕の皮膚が割れた。鋭利な刃物で切られたような傷だ。だが、ジャスクは現に同じところにいる。一体どうやったのだろうか?


「どうした?"蝙蝠(ファントム)"の狩猟(ハント)はそんなモンか?」


「・・・ちっ」


悔しさのあまり、おもわず舌打ちをした。だけども、状況はいっこうに優勢に向かわない。


シュパシュパッ


また見えない刃物に切られた。今度はメイド服だ。裾やスカート部分がキレイに切られ、風に靡いてる。


「今のは一体どうやって・・・」


あの無数のナイフ、見えない刃物、そして・・・体の痺れ。


「うっ・・・!?」


ようやく気づいた、己が不調であることを。

ビクッビクッと小刻みに手足が痙攣する。寒さで体が震えることを医学用語で「シバリング」とは言うが、根本的に違う震えだ。

寒いわけではない、薬によって引き起こされた現象だと理解できた。


「ジャスク、貴方・・・まさか毒を!?」


「へへ、ようやく効いてきたか。」


あのナイフだ。毒はあのナイフに塗られている。

最初の一撃に何故か本気が籠られていないのはこの為だったようだ。


「その毒はクロドクシボグモの毒だ。身体がマヒし、激痛が襲い、やがては死ぬ・・・。」


楽しんでる。あの男、人が苦しむのを楽しんでいる。

敵ながら紛うことなき外道に等しい男だ。


痺れで立つこともままならない。視界もボヤけ、焦点が合わなくなりつつある。


身体の各所から激痛が生じる。 筋肉痛のようなジワジワなぶる痛みがどんどんひろがっていく。

世界最強の毒グモの毒はこうも恐ろしいのか。


「本来なら、毒に苦しんでるお前を眺めながら余韻に浸ろうとしたのだが、そうはいかないようだな。邪魔物とは無粋な・・」


ブシュ


あらぶる獅子が獲物に飛び掛かるように、一弾の影がジャスクを切りつけた。

ジャスクは咄嗟の判断で身をかわした。そのおかげで肩を軽く斬っただけだ。


「・・・テメェ、その女に手出してタダですむと思ってんのか?」


「斗真・・・!」


嫌と言うほど見慣れた存在が、眼前にあった。








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