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12/18

若きシャーロック・ホームズ

朝焼けが目に染み、大きなあくびとともに朝の訪れを感じさせてくれる。


朝早くから久遠家イギリス邸から出て人通りの少ない道を一人寂しく歩く。灰色に染まった曇天空が太陽と交わり、スポットライトのような日光の光線を描いていた。


テムズ川沿いの河川敷に差し掛かる入り乱れた路地を潜り抜けるとタワーブリッジに当たった。


100年ものの歴史をもつタワーブリッジは古き良き香りを感じさせられる風靡を漂わせている。その隣に聳える英国のバベルの塔とも云えるロンドン塔も陽が昇ってくるにつれ、ちょうど頂点の部分と重なり、一本の蝋燭のような風景に見えた。


「こりゃまた絶景だな」


斗真は朝早くからイギリス観光に出掛けている。現役時代に何度も来たことはあるが、どれもロンドンに住む暗殺対象者に会うために訪れただけだ。観光する気もなく、なおかつ時間も余裕もなかったので、観光は出来じまいだった。


午前5時くらいに起床して屋敷を出たのは5時15分ほどだ。屋敷の家主も使用人も起きておらず、彼一人だけが無人の廊下を歩いていたことになる。


最初で最後の観光ともいえるので抜け出してもしたい事故に、一人で黙って出てきたのだ。

一応置き手紙をしておいたので誰かしら気づくはずだ。


そんな数分前のことを頭に浮かべながらの歩道を散歩する。


先程まで人通りが少なかったロンドンの街も時間が進んでいくと人があちこりから現れ、人口密度が増えていった。

これこそがロンドンだ。まさしくヨーロッパ有数の観光地にふさわしい。


「さて、どこから行くかな」


まだ朝方なので開いてる店や施設も少ないだろう。それでも開いてる所や無料の観光スポットなどに足を運ぶのもいいだろう。


辺りをキョロキョロしてみれば数々の歴史的建造物を追い越すようにビッグベンが顔を出している。


まずはそこへ行ってみたいという衝動に刈られた


レッツゴー!




▼△▼△▼△▼△▼△



「ほぅ~、これがビッグベンか。でっかいな」


ウエストミンスター宮殿の一角にある世界最大の時計ながら時計塔であるエリザベスタワー 別の名をビッグベンは多くの観光客に見られながらも秒針は正確に針を進めている。


言わずと知れたロンドンの象徴はテムズ川に架かるウエストミンスター橋から見るからこそ価値がある。写真や動画でもお馴染みな光景だからだ。


そのために朝早くから観光客で賑わっている。橋には一般人も通過するがそれよりも観光客の数が勝るだろう。恐るべしロンドン。


「えぇ~と......IS there a bus.........えっと.........大英博物館って何て言うんだっけ?」


「し、知るかよ。お前英語得意だったんじゃなかったっけ?」


「Is it good to go if there is no other use?《もう用がないなら行ってもいいかい?》」


「おい、なんて言ってんだ?」


「うぅ........まいったな.......これじゃどこへいけばいいのか...........」


ふと隣を見てみると日本人らしき観光客がガイドブック片手にロンドン市民に道を尋ねていた。

二人組の日本人はカップルだと思われる。女性はからっきしの英語を懸命に使おうとしてるが、途中でパニックになっている。


彼氏も英語をかじったことがないようで、慌て始めた。


来るなら日常会話を出来るぐらいになってから来てほしい。でなければ問題が起きたときに不利な状態になる恐れがあるからだ。


だが、今回は特別に助け船を寄越してやろう。


「どうかしたんですか?」


初対面なので敬語で接してみる。

すると日本人カップルは同じ日本人である俺を見て安堵の息を吐いた。


「実は.........大学の友人たちとイギリス旅行に来たのですが、はぐれてしまって」


「それで電話したら大英博物館にいるらしく、そこで待ってると言われたんです」


「で、大英博物館に行きたいと?」


「はい.........」


なるほど、迷子か。観光客がよくあるパターンだな。仕方ない代わりに通訳してやろう、


「I'm sorry, is there a bus to go form here to the British Museum?《すいません、ここから大英博物館に行くバスはありますか?》」


日本人のカップルに道を尋ねられていた熟年の男性にもう一度尋ねてみた。


男性はようやく英語の話せる日本人がいたという喜びを表情で示しており、カップルは同じ日本人なのにこんなにぺらぺらなの!?と軽くショックを受けていた。


「Oh, Well you can go form there bus stop, Do not think it's soon come time,《ああ、それならあそこのバス停から行けるよ。まもなく来る時間だと思うな》」


「Is Really?Thanks you,《ほんとですか?ありがとうございます》」


「It is above all in useful, have a nice trip,《役に立ってなによりだよ。それでは良い旅を》」


男性は最後に旅を祈るようにしてその場から立ち去った。


主旨を伝えてやろうとするとカップルは目を輝かせながら子供のような表情だった。


「スゴいです!英語ペラペラなんですね!もしかしてここら辺に住んでいるんですか?」


「いいや、ロンドンには仕事で来ました。今日は休日なんでロンドン観光をしてるんです」


すると、カップルの傍らである女性は何か思い付いたようで彼氏に耳打ちをする。

なんだろう、嫌な予感が.......


「あの!もし出来たらでいいんでしばらく通訳してくれませんか!」


「道中の料金は僕らが払うんでお願いします!」


やっぱりか。そりゃ通訳いたほうがいいもんな。

もちろん答えはイエスだ。観光出来る上に料金はタダ。これほど嬉しいことはない。


「わかりました。ご同伴します」


「わぁ、ありがとうございます!」


頭をペコペコ下げるカップル。そうと決まればすぐに行こう。


目的地の大英博物館まではあそこのバス停から着くとさっきの男性が言ってくれた。


名前を聞かれたので名を教えると、今度は二人が名前を教えてくれた。

男の方は結城さん、女の方は由香さんというようだ。まだ付き合いはじめて半年で、今回は始めての海外旅行だという。

由香さんは少々英語が得意だと胸を張っていたが現地に来るなりテンパってしまい、あやふやになってしまったのだ。


三人はイギリス財務省の側にあるパーラメント・ストリートのバス停でバスを待ち、ものの数分でバスが来た。


ロンドンのバスといえばダブルデッカーだ。赤い車体に2階建ての観光バス。一度は乗ってみたかった代物だ。



それからしてしばらくバスの揺れに体を許し、幾度のバス停を乗り越した。チャリング・クロス駅の近くのチャリング・クロス・ロードを突き抜け、ドミニオン劇場が属してあるトッテナム・コート・ロードの一角を走っている。

20分くらいだっただろうか。ようやく目的地についた。


ここからは徒歩だ。とはいっても数分ほどで着く近い距離だ。


古い建物に狭間れた路地を突き進んでいくとようやく目指していた建物がビル群の間から顔を出している。


「あれが大英博物館!すごいでかいね」


「来てよかったな~」


カップルは初の大英博物館に興奮している。残念ながら俺はそれほど興奮しない。あんなところ行っても頭がパンクしそうだ。


すると、


ベチャ


若い外国人が両手に持ったアイスクリームを不意にぶつかってしまい、由香さんのTシャツに付着してしまった。


「Oh,no!Lo siento!」


「な、なに?何語?」


「え、英語じゃないね.......斗真さん.....」


いや、これはスペイン語だ


「Me since mal!Yo borrare ahora' ........《申し訳ありません!今拭きますから.......》」


スペイン人と思われる青年はポケットからハンカチを取りだし、由香さんの服に付いたフルーツ系のアイスクリームを拭き取ろうとする。


手を貸そうと結城さんも手荷物を置き、ポケットティッシュから一枚取ると懸命に染みを残さないように拭く。


だが、俺は手助けしない。ここが正念場だからだ。


え?なぜかって?それはだな......


ガシッ


「Que'!?《なに!?》」


拭き作業に集中している二人を人混みに紛れ、後ろから忍び寄る男の腕を捕まえた。

男はアイスを持った青年と同じくらいの年齢で結城さんと由香さんの手荷物に手を伸ばそうとしていたのだ。


「結城さん、由香さん、気を付けてください。これはアイスクリームスリですよ」


「ア、アイスクリームスリ?」


「ええ、観光地などではよくある手法の一つです。二人一組で片方がアイスを手に持ち、観光客とわざとぶつかるんです。そして、もう片方が皆の目線が逸れた時を狙って手荷物を盗む。大抵、手荷物を持った人は汚れに専念しますからね、手元が疎かになるんです」


「そ、そんな.......じゃあ、この人も?」


「Mierda!《くそ!》」


「Escaper!《ずらかるぞ!》」


二人は失敗したことで逃げた。

どうせ、逃げたあとでまた別の観光客のを盗むつもりだろう。

ここで捕まえてやる


「結城さん、由香さん、ここでお別れですね。あとはご友人を見つけてください!それじゃ!」


「えっ!あ、ああ.........」


さてさてあのカップルのデートにお邪魔虫は不用だ。あとは友人探すだけだから俺はとっととあのスリグループを追う。


「Wow!」


「Oh!?」


あのスペイン人グループは大英博物館へ入場しようとする客にぶつかりながら逃げようとしている。


俺は二人を追いながら奴らの動きを見る。


スリグループは大抵二人以上で行動するのが当たり前だ。

だが、スペインのスリに関してはヨーロッパ一の悪党揃いだ。男性5~6人でグループを組み外国人観光客を、特に人を信じやすいとされる日本人がいい狙い目だろう。


彼らは集団で観光客を襲い、羽交い締めなどで拘束し、暴行するのだ。

日本人は体格では負けるので防犯グッズを常備してることを知っている。そのために奇襲するのが一番の得策だ。そして金品を盗む。


スペインで近年問題となり、増えてるのは暴行型スリ。そのためにあの二人組は逃げてると同時に俺を人目つかない場所へと誘き出してるのだ。

だが、わざとその手に乗ってやる。さっき捕まえれば二人だが、仲間ともに捕まえれば数人は越える。その方がお手柄だ。


奴等を追って入り乱れた路地を進んでいくと廃工場に辿り着いた。

さっき看板をチラッと見たが自動車工場のようだ。敷地内にも車の部品やタイヤがゴロゴロ転がっている。


「ここか....」


すでに奴等はここへ入り込み、見失ってしまった。


「さて、どこにいるやら......」


「Pero chico estu'pido y vienen persiguiendo aqui, 《ここまで追ってくるとは馬鹿な奴だ。》」


「Es en absoluto. De lo contrario, yo vivo no lo que el rostlo esta' arruinada Noniyo,《まったくだ。でなければ、その顔が台無しになんなくてすんだのによ》」


ものすごいガラの悪く、ドでかい奴等がゾロゾロ出てきた。派手なシャツを身に付け、手にはメリケンサックが装着されてる。


その後ろにはさっきの青年二人もいた。虎の威を借る狐のような立ち位置で媚びてるようにも見える。


全員スペイン人か........数は8人。ほぼ全員がメリケンサック付きだな


「Estoy cierto que me truco japone's fa'cil, Una vez que hacer!《日本人は騙しやすいってのは本当だったんだな。やっちまいな!》」


厳ついウドの大木のような奴が一声命すると周りの奴等が一斉に襲いかかってきた。


「金を盗る気か?なら容赦はしねぇ!」


「Pero!」


まずは一人目。右手のメリケンサックを避け、懐に入り込み足払い。そして腹部へ肘を与える。


二人目は後方からだ。メリケンサックではなく、そこら辺に転がっていた鉄パイプを振りかざしてきた。

だが、遅い、遅すぎる。凛の剣と比べたら遅すぎるな。ヒラリと避けて喉へと抜き手でトドメ。


三人目と四人目は集団できた。やはり素人の集まりだ。誰一人武術を手にしてる者はいない。


立て続けの攻撃も無用だ。二人まとめて片付けた。さらに五人目、六人目のアイスクリームをぶつけた奴も成敗してやる


残ったのはあのデブとスリの傍らだ。


「F、Fuerza........《強ぇ.......》」


「E、Escaper!《に、逃げろ!》」


あっ、また逃げる気か。このやろ、また追ってやる


俺を大きく迂回して再び出入り口からトンズラする二人。



すると鉢合わせしたかのように一筋の影が二人を襲った。

ここからはよく見えないが人間なのは間違いないだろう。名無しの権兵衛さんは二人をあっという間に倒してしまった。


「警察か?にしちゃ、おかしいな」


いそいで駆け寄ってみる。そこにいたのは自分と同じくらいの少年だ。幼顔らしく、女性のような顔つきだ。

黒っぽいくせっ毛のショートヘアにディアストーカー・ハットと呼ばれる探偵帽を被っている。イギリスの高校生らしく制服に身を包んでいた。


「There?What was the japanese?I thought surely orplainclothes policeman,《あれ?日本人だったのかい?てっきり私服警官かと思ったよ》」


今度は英語かよ。


「Oh sorry, ..........ゴホン、これでいいかな?日本語を話すのは久しぶりでね。ちゃんと合ってるか不安だ」


日本語話せたんかい。以外とペラペラだな


「日本はイギリスでも人気の国だからね。親日家も増えてるし、日本語を覚えようとする人も増えてきてるんだ。ボクもその一人さ」


「そうか。俺は五月雨 斗真だ。イギリスには所用でな。スリやってたあいつらを追ってたんだ」


「ボクはエル・バスカヴィル。近くで私立探偵をやってるんだ。高校生だけど、警察にも認められてるから大丈夫だ」


「私立探偵?まるでシャーロック・ホームズだな。ベイカー街にお住まいか?」


「もちろんだ。ボクが目指してるのはホームズ他いない。学校の寮が工事中だから代わりにベイカーストリートのアパートを借りたんだ」


なるほど。ホームズに憧れて私立探偵をやってるのか。


そしてエルが着ている制服はいたってシンプルな男子用の制服。

生では初めて見るがエリート校の総本山 パブリックスクールのイートン(ガレッジ)の制服だ。


名字であるバスカヴィルも土地の名前だ。もしかしてだが、こいつはとある土地の持ち主の家系じゃないのか?


そんなお坊ちゃんな奴が探偵とはねぇ.........変わった奴だ


「さっきは奴等を捕まえてくれて感謝するよ。彼らはこの辺りで悪評高いスリだからね。神出鬼没のグループだから警察も手を焼いてるんだ」


「そうか、探偵だから奴等のアジトを探すように依頼されていたのか。なんだか手柄を横取りしたようで悪いな」


「いいや、おかげで苦労せずに一網打尽出来たよ。むしろ感謝したいほどだ。それより、君も中々やるんだね。相対したらボクが負けそうだよ」


ふむ......たしかに中肉中背の少年だな。無駄な筋肉も隆々とした筋肉もない。これでよくあいつらを倒せたな


「もしよかったらボクのアパートでお茶を飲んでいかないかい?感謝もそうだけど見たところ訪英したばかりのようだね。もてなしも兼ねて招くよ





▼△▼△▼△▼△▼△




あのスペイン人スリグループを警察にも引き渡した。エルは警察にも顔が利くようだ。知り合いが何人もいて警部とも仲がいいようだ。シャーロック・ホームズでいうレストレード警部だな。


エルに連れられるままについていくとベイカー街へと足を踏み入れた。ロンドン有名なベイカー街はホームズ所縁の地として有名だ。


そのベイカー街を十数分ほど歩くとエルの住むアパートへと辿り着いたわけだ。


「ここがボクのアパートだ。少し狭いが我慢してくれ」


若干古さが積った築数十年ほどのアパートへとお邪魔した。部屋は二部屋で片方はベッドルーム、もう片方はリビングになっている。

ユニットバス式でキッチンは極狭。まあ一人生活するくらいなら充分な物件だな。


「ささ、くつろいでくれ」


「悪いな、お茶を淹れてもらって」


「気にするな。ボクは一人暮らしが長かったから家事全般は得意なんだ。お客に茶一杯出すくらい苦でもないよ」


「ふむふむ、たくましいなこいつ」


私立探偵だけあって部屋には警察からの賞状が飾られてある。

逮捕協力や犯人の追跡などの類いだ。どれも名誉ある受賞だろうな。


それにさっき上着を脱いだときに気づいたのだが拳銃が脇に一丁。チラッとしか見えなかったが自動拳銃(オートマチック)だな。


「探偵やって苦痛はないのか?子供が事件現場に来んなとか言われないか?」


「始めた頃はよく言われたよ。子供の出る幕はないってね。でも、何度か解いてく度に腕を認められたんだ。あれは嬉しかったよ」


七難八苦の連続なのか。大変なんだな。


「.........それで斗真、一つお願いがあるんだが........」


「お願い?なんだ、言ってみろ」


「ボクの........パートナーを組んでくれないか?」


「.............はい?」


パートナー?一体何を言ってるんだが


待て待て待て、落ち着け俺。順を追って説明させよう


「........どういうことだ?」


「ボクは長年追っている組織がいる。名も目的も分からぬ謎の組織をね。ロンドンの秘密組織では有名な話だよ」


「それで?そいつらを追うように依頼されたのか?」


「いや、それもそうだが...........仇を討つためだ、両親の」


「仇だと?」


聞き間違いと信じ、しかめっ面の顔でエルに問いただした。


「そうだ。ボクの両親は死んでる。世間的には不幸な事故死と公表されてるが実は違う。..........殺されたんだ」


「なんだと!?」


「殺されたのはボクが13才の頃だ。当時は知り合いの刑事が捜査に任命していたので簡単に資料を借りることが出来たんだ。そこで気になるのを見つけた」


するとエルは戸棚から取り出した緑色のファイルケースを俺に見せてくれた。


俺はそのファイルの付箋が貼られたページを開き、ゆっくりと目を通す。


"19××年5月14日 金曜日 午前10時38分ロンドン郊外のブライトンで乗用車の事故が発生。乗用していたエドガー・バスカヴィルとその妻 コーデリア・バスカヴィル両者が重症。病院に運ばれたが治療の甲斐なく死亡した。

二者はガードレールに衝突し、車は炎上していたことから衝突事故として処理される"


港町ブライトンでの事故か.......端から見ればただの衝突事故に過ぎないだろう。


「これのどこがおかしいんだ?」


「次のページだ。警察の資料をそのまま借りたからボクの意見は入ってないけどね」


ぺらっと一枚めくれば続きがあった。それにも目を通す。


"イギリス ブライトン・マリーナ・ビレッジ警察は当事件を事故と処理したが、ロンドン警察のバルフェルト警部はこの事故を事故を装った殺人事件と公表し、バスカヴィル夫妻の遺子であるエル・バスカヴィルも彼に賛同している。

しかしながら証拠も薄く、れっきとした犯人像もないために再捜査されることはなかった"


「バルフェルト警部は父と知り合いでね。よく酒を飲んでいた真柄なんだ。だから父のことをよく知っている。彼は『エドガーは事故を起こすような奴じゃない』と根っから反対してたんだ」


「そうか」


さらに続きを読む


"バルフェルト警部は『事故現場は車通りが少なく、気候も穏やかで事故を起こせるような状況ではなかった。故にこの問題はただの事故ではない』と主張している。"


たしかにこれには俺も同感だ。穏やかで車が少ない道路で不慮の事故。なにかと変だ。飲酒運転や薬物でもない善良な市民が不注意故の事故、ありえるだろうか。


これはもう一度調べた方がいいんじゃないか?


「ボクの両親だけじゃない。他にもロンドンの名高い政治家などの次々と不幸な事故死が相次いだ。これに対し、ロンドン警視庁は国際犯罪者ではないかと推測した」


組織ねぇ.........ホントに組織かどうかはさておいて、こいつの両親は間違いなく殺されたに違いないだろうな。


「君はボクより遥か上のレベルの人間だと思う。体力、判断力、決断力、洞察力、頭脳もすべてだ。だからこそあのスリグループを倒せたんだ」


「そう上げるな」


「いいや、これは事実だよ。だからこそ頼んでるんだ。ボクとパートナーを組んでくれればボクの両親を殺した黒幕を突き止められる」


「............」


「ボクは両親の仇を討つ。何年かかろうと、何かが待ち構えていようと仇を討つまでは死ねない」


決意を改めるためにグッと拳に力をいれるエル。たくましさだけでなく熱意が伝わってくる。


「.........いいだろう。だが、数日後には俺は変えることになっている」


「構わない、一時的でもいい。少しでもいいから君の力を貸してほしい。何だか君なら一緒に戦ってくれそうだから」


「俺もだ。よろしくなエル」


「よろしく」


互いに手を出して握手する。どうせ、帰国まではほとんど仕事がないからな。こいつの無念でも晴らしてやろう


「そうと決まれば明日、屋敷へ来い。俺の屋敷じゃないが、莫大な資料を調べることが出来るかもしれない」


エルに桜花の屋敷の住所を渡してこの日は終わった。






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