第六話
「ねぇ、彼方さん。」
「ん?」
美墨さんが呼んできたから、返事をした。
なんだろ。
「あのね、友達になりたいんだけど……。」
は?
誰と誰が?
どこで?
あ、これダメなタイプだ。
バカな小学生男子になるところだった。
「友達?わわ、私とぉ?」
なんか、変な感じになっちゃった。
恥ずかしい。
〈麗霊ちゃんったら、かっわい~い。〉
「も、もう、飛鳥~。」
「あ、飛鳥、聞こえる?私が彼方さんと友達になったら、うれしい?」
美墨さん……。
〈うんっ!もっちろん!早くなってほしいくらい!〉
私は通訳できずにいた。
だって、私は人類全員を滅ぼそうとしているんだから。
なのに、友達だなんて、そんなおめでたいこと……。
「彼方さん、どうしたの?」
〈麗霊ちゃん、早く通訳してよォ。〉
「あ、どっちでも、いいって!」
まぎらわすように私は適当なことを言った。
私、何感情的になってるんだろう。
〈麗霊ちゃん……。なんで嘘つくの?〉
「あっ、ごめん。でもっ……」
〈麗霊ちゃんのバカ!!もう知らないっ!!〉
えっ!?
「ちょっと飛鳥っ……。」
「彼方さん?どうしたの?飛鳥、どっか行っちゃったの?」
げっ、美墨さん……。
どどど、どうしよぉっ。
うぅ、もう!!
「美墨さんごめんっ!飛鳥は、早くなってほしいって、言ってた!!」
そしたら、美墨さんは、ポカンとした顔をして、「そうなんだ。」と言った。
なんか、脱力。
まぁ、いいか。
〈麗霊ちゃん、言ったの?私のため?〉
おわっ、飛鳥!!
「あ、飛鳥。なんか、ごめんね。」
そしたら、美墨さんが、叫びだした。
「あ、飛鳥っ!彼方さんを責めないで。
私が飛鳥の声を聞けないから悪いんだからっ!!だから、許してあげて!」
どど、どゆいみ?
どういうことっ?
なんで、美墨さんがわたしなんかのために……?
〈も~いいいよ。怒ってないよ、麗霊ちゃん、千聖。〉
飛鳥がにっこり笑いながら言った。
かわいい。
飛鳥のスカートが、ひらひらしててかわいい。
飛鳥自身もかわいいけどね。
人類滅亡とか、やめよう。
人類にも、いいところあるよね。
霊たちの事は、私が、ゆっくり教えてあげればいいよね。
霊の事を知ってる、私が、ね。
だって、私は人類とも、霊とも、仲良しなんだもん。
たまに、イラッとする人もいるけど、仕方ないんだよね。
だから、私はゆっくり生きればいい。
霊たちと、のんびり過ごして、のんびり教えて。
悪くないんだよって、教えてあげよう。
もちろん、美墨さんにも。
あれ?
美墨さんの名前って、何だろう?
「美墨さんっ!」
「ん?何、どうしたの?」
「あのねっ、美墨さんの名前……」
美墨さんは耳元で、「千聖」と小さく言った。
「う、じゃあ、私は麗霊だよっ!!」
「知ってる!」
美墨さん、じゃない、千聖ちゃんが笑って言った。
なんか、こういうの憧れてた気がする。
霊たちだけじゃなく、みんなが仲の良い、そんな世界を作りたいなって。
そんなこと考えてたのは小さい頃だけ?
違う。
今も、考えてる。
楽しい生活を過ごしたい。
「千聖ちゃん。」
「何?麗霊ちゃん。」
う、照れる。
恥ずかしいよぉ。
「これから、よろしくねっ!!」
〈ちょっと待ったぁ!!〉
はっ!?
って、犬?
あ、あの時の。
寂しくなったのか?
「久しぶり。元気だった?」
〈ちょっと麗霊ちゃん、やめてよそういうの。さっき会ったでしょ。〉
さっきぃ?
いつだよ。
〈ほら、やってあげたじゃん。〉
それさっきじゃないし。
結構前だし。
ま、いっか。
「じゃ、犬の名前決めなきゃね。」
〈あっ!!レモン!!〉
「は?レモン?」
「えっ?レモン!?」
ちょっ、全然話が読めない。
「どういうこと?」
「私の愛犬でーす!」
〈そうなの~っ!〉
〈だよ、麗霊ちゃん。冷たかったな、僕への言動。〉
むか。
こいつ、絶対仲良くしたくないタイプ。
「ま、仕方ないから、レモンも入れてあげるよ。」
仕方ないから、ね。
ほんとに、わざわざ入れてあげてるんだから、感謝してよねっ。
「おい、レモン。感謝してよね。」
〈なんで僕が?君が感謝してよ。僕という偉大な勇者が、
入ってあげたんだから。〉
わああああぁぁぁぁ。
超ムカつく。
今すぐ消えてほしい。
「今すぐ消えろ。」
〈ひーん、ひどいよ麗霊ちゃん!!〉
〈レモンをいじめないで~!!〉
うぐぐ、飛鳥めっ……。
「な、なに?どうなってるの?」
あ、みす、千聖ちゃんが困ってる。
ごめんなさい。
通訳が私事に取り掛かっておりました。
「えっと、私はレモンがっ……」
やめた。
こんなこと言ってもダメじゃん。
「レモンとも、仲良くしたいな~って!」
〈嘘つくな!!〉
黙れ邪魔者。
ま、仕方なく私は入れてあげてるんだけどね。
偉大な勇者様を、さ。
「まぁ、仲良くやろうね?偉大な勇者さん?」
〈仕方ないから仲良くしてやるよ。〉
ツンデレ?
ツンデレか?
ま、いいけどね、別に。
「レモンが仲良くしてくれるって!!」
「おぉ!!良かったじゃん!!」
一緒になって喜んでくれる千聖ちゃん。
好きだよ。
だーいすき。
「千聖ちゃん好き~!!」
「わ、何よいきなり~。」
霊界通信少女は、今日も活動中!!