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プロジェクト4

「ゴリラ通信?なんだね、それは?!」大庭教授は、彼に訊いた。

「はい、それはまったく新しい”近未来型はーとふるこみゅにけーしょん”なんですよ」

「ほぉ。あ、そういえば君は私が担当していた『ゴリラ概論』の講義に出席していた学生だったよね」

「そうです。もう16年前の話ですけどね」

「あの講義は、今ではもうしなくていいって学長に言われてしまったのでやってないがなかなか人気があったよな」

「いえ、履修していたのは俺とあともう一人の女の子だけです…」

「そうだったか…」


二人は当時のことを振り返りながら、思い出話に花を咲かせていた。


「教授のあの講義があったからこそ、俺はゴリラに興味を持つようになりました。ゴリラから人間に進化したんじゃなく、人間がゴリラに進化したという逆進化論はとても興味深い内容でしたから…」


─ 16年前の講義 ─


大庭:君たち(といっても二人しかいないけど)は、進化論というものを知ってるかと思うけど、習った内容をどう思ってるかね?あ、そこの薄汚い顔した学生。どう思う??


小金沢:アメーバから徐々に魚、両生類、は虫類、鳥類、哺乳類、そして人間に進化する過程は原理は分からないけど、とにかくすごいなーって思います。


大庭:ふむ。君の知っている進化論はそんな迷信話か。そこのギャルはどう思う?


ギャル:はい、私は高校では生物学を選択科目にとりましたが、ダーウィンの説もそれ以前のラマルクの説もしっくり来ないと疑問に思っていました。なんで、進化論を説明するのにキリンさんを用いるのかと。私、ゾウさんのほうが好きなのに…


大庭:ほぉ!君はキリンさんよりもゾウさんのほうが好きか?


ギャル:そうですね。


大庭:なるほどね。まあギャルの言うように、世の中で広く知れ渡ったダーウィンの進化論『種の起源』をはじめ、知られている進化論にはいくつかの疑問点があるということを今日はお話したい。


一般によく知られる小金沢くんがいった”単細胞から人間への進化”というのは、あまりにも間違いだらけにもかかわらず、誰もが疑わない理論だ。しかし、科学がここまで発展しているのにもかかわらず、それを信じてるほうのが逆に疑問であるというのが私の意見だ。たとえば、こんな話。


たとえば君たちがアメーバだったとするだろう? 周りには、アメーバしかいない。水の中にただアメーバとして存在しているだけ。そんな世界に生まれて、何年かけてもいいから君たち自身と協力して別の形態になるとすれば、どう生まれ変わろうとするか… アメーバは無限に存在すると仮定してだ。どうだ?


小金沢:人間とかは細胞の塊みたいなものだから、アメーバ同士がくっつけば何かほかの生物に生まれ変われるかもしれません。


大庭:それは嘘だね。我々、造形美術家だったらそんな考え方はしない。アメーバが何億いようが、何兆いようが、アメーバしかいないその世界でどんなにくっついても巨大アメーバにしかなれないということだ。すなわち、何がいいたいのかというと、今生きてるこの世界では”模倣できる対象物”がたくさんあるからこそ、たくさんの作品が生み出せるのであって、アメーバしかいない世界でアメーバが自身を超えた存在になろうと思わないということだ。ようするに、魚も自ら陸にあがろうと考えることはないだろうし、鳥も歩くのが不便だから飛ぶ技術を身につけたいと思って飛んでるわけではないということ。


ギャル:結論は、先生は今の進化論がでたらめだといいたいということなんですね!


大庭:そういうことになる。進化論がどうこうではなくて、今存在するすべての形ある物は「あらかじめ予定されて生まれてきている」ということなのだ。人間が進化の最終形ではなくて、”人間”という設計書から出発して、すべての生命体が生まれたと見た方が説明がしっくりくる。人間を作るために、まず構成の最小単位である単細胞を設計し、その単細胞を結合させながら、生命を維持するのに必要な器官を作成して、アセンブルする。

人間というモデルがそんな感じで設計され製造されたものの、人間にはまるで特徴がない。泳ぎが特別にできるわけでもないし、走るのも正直100m10秒が限界。当然、空を飛ぶ能力がない。言い換えれば、人間は高機能な生物ではなくて、他の動物から比べてかなり身体能力が低いシンプルな生物であることが理解できると思うんだ。なので、人間を設計した誰かはそこからさらに機能を進化させた別の生命を作り、人間にそれぞれの機能を気付かせるためにわざと特徴のある生物を作り出した。そう考えてもおかしくはない。


小金沢:なんか宗教っぽいですね。


大庭:これは、私が某宗教団体にだまされた内容をそのまま説明しただけだからな(笑) しかし、これらの説は造形美術とものすごく通じるものだ。形あるものを設計したり、制作する過程を考えたら当然のことで、たとえば粘土細工を作るにしても試行錯誤しながらなにが生まれるか分からないまま適当につくるということはまずない。材料はなにを選ぶか? 形はこんな感じで、大きさはこんな感じで、、、と曖昧だけどあらかじめ頭に浮かんでいるゴールがあってこそ、はじめて作品が生まれるんだよ。


材料の準備→カット→仕上げ


私はとくに彫刻を専門としているが、闇雲に彫って、いい作品が生まれた試しがない。大抵は、気付けば男のチ○ポみたいな木彫りにしかなってない。


ギャル:それって無意識的なんじゃ…


大庭:ギャルちゃん、男のチ○ポに興味があったら私の研究室に来てみたらいい(笑) 私のものを直接披露してあげるからね。


ギャル:はい、行きます!!


大庭:さて、そろそろ本題に入るが、そもそもここで述べた「人間から逆の進化を遂げながら今のたくさんの動物、植物が作られた」という仮説でなにがいいたかったのかというと、なぜゴリラが人間になろうとしないのか?という疑問に答える説が欲しかったからなんだ。


ゴリラは、ゴリラ自身の今の生活に何にも困る要素はない。食べ物が確保されれば、死ぬまで人間になりたいと思うわけがない。なのになぜゴリラはそこから人間に進化しようと思ったのかがまるで説明することができない。我々人間が、生活を便利にするために道具を用いたが、自分自身に機能を”追加”してパワーアップしようと思わないのと一緒だ。・・・そりゃまあ体力向上などの訓練はするけどな。


このあと、大庭教授はさらにゴリラの本質について語り始めた。



(つづく)

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