表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の魔王城  作者: とにあ
6/30

太陽の下で

 少女の名はフィアナ。


 人に変化しきれぬ水妖の少女。


 洗濯物を追いかけてくるくる慌てふためいている所を見つけた。


「ありがとですぅ」


 舌ったらずな口調で見えてはいないだろう俺に礼を言った。


 それほどまでに抱え込んだ荷物はいっぱい。


「半分、持ってやろう」


「わぁ……ありがとうですぅ。フィアナですぅ。はじめましてですよねー」


 明るく朗らかに自己紹介をするフィアナから洗濯物の一部を持ってやった瞬間、




  ばさばさばさ


 


 音を立てて洗濯物全てが地面に落ちた。


「フィアナ、落ちちゃったよ?」


 凍りついたような少女に、「いいのか?」と尋ねると泣きそうな表情で洗濯物を集め始めた。


「ごめんなさいですぅ」


「なにが?」


「王さまだなんて思わなかったんですぅ」


 フィアナはそう言うと洗濯物を必死で抱え込み、走り去った。いや、走り去ろうとした。


「だいじょうぶか?」


「だいじょうぶですぅ……」


 地面にうつぶせた少女は手を伸ばして散らばった洗濯物を集める。


 汚れのひどかった物もそうでなかった物も今となっては区別がつかない。


「半分、持とう」


 拾うのを手伝いながらそう言うとフィアナは必死に首を横に振った。


「とんでもないですぅ。王様がそんなことなさっちゃいけないんですぅ」


 俺はティールが「意地悪そう」と評する笑顔を浮かべフィアナの眉間をつついた。


「王様は好きなことを好きなようにやるのさ」






 洗濯物をフィアナは汚れたまま吊るしていく。


「これでいいのか?」


「はい。王様」


 恐縮しきった少女の姿に苦笑がもれる。


「ゼオン・セイフィルト・シェイファー・ルー。ゼオンと呼ぶといい。王様ヨバワリは苦手だ」


 少女は目をぱちぱちさせてきょんっとしている。


「……ゼオン様?」


「ん?」


 少女は俺を見上げ、申し訳なさげに口を開いた。


「少し離れてください。清めますぅ」




 はためく洗濯物に水滴がまとわりつく。




 その水滴が地に落ちきると洗濯物の汚れは落ちていた。


「後は太陽が気持ちよくしてくれるんですぅ」


 眩しげに少女は天空の太陽を仰いだ。




 こんな出会いから晴れた天気のよい日は太陽の下で元気に働く少女と時を過ごすこともある。  





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ