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さがしもの
与えられたのは魔王の玉座。そして贅の尽くされた私室。
俺の言葉を待ち、その言葉に従うことを無上の喜びとするという部下達。
「魔王様、お食事はなんにいたしましょうか?」
青みがかった黒髪の少女が目を伏せ、そう問う。
少女の名はティール。
俺がこの城に来てからすべての面倒をみてくれている。
彼女がいるおかげでか、魔物達が気がきくからなのか不便も不都合もなかった。
「魔王様?」
答えない俺にティールが怪訝げに問う。
「何でもいいよ。ティール。ありがとう」
ティールは黙って一礼し、玉座の前を後にする。
他の魔物たちのように大仰にかしこまることもないティール。
出会った時に感じた感覚。
それは一瞬
出会ったその時に思った。
「見つけた」
そう思った。
控えめな、この魔王城における最強の魔の者。
一生、探し求めたとしても出会えないかも知れなかった
俺の さがしもの。