郷愁の音色
「まわしてごらん」
言われたとおりにまわすと
『……ポロ♪』
可愛らしい音がした。
彼は笑った。
「驚いたかい? アンティークショップで見つけたんだよ」
頭をなでながら片手で小さな突起のある小さな箱を彼は取り上げた。
「オルゴールというんだよ。サキ」
キリキリと音を立てて突起がまわされてゆく。
「おるごぉる?」
彼はまた笑って頷く。
再び、目の前に置かれた箱が可愛らしい音楽を奏でだした。
彼に撫でられながら聞くこのプレゼントは最高に嬉しい物だった。
「ドクター。会議のお時間です」
硬質な女の声。
いつもこの声が彼を私の側から引き離す。
不愉快な記憶。
目の前にある人形は愛らしく小首を傾げている。
「遺跡で見つけたんだ。オルゴールなんて見るの久しぶりだったから嬉しくて取ってきたぜ」
彼は得意そうに笑う。
やわらかだった彼の笑顔とはもちろん異なる。
「サキ!」
「はい?」
「コレやる」
ぽん……と投げられた人形。
「台座のところ回せる仕組みがあるからそれを回せば音が鳴るぜ」
私はよほどきょとんとしていたのか、彼は腕をくるんと回した。
「気にいらないか?」
「……いいえ……ありがとうございますゼオン様」




