回転木馬
魔法で作られた水馬が噴水を駆け巡る。
飛んだり跳ねたり飽きることなく、くるくると。
鼻歌混じりにフィアナが指を動かす。
「すごいでしょ♪」
得意げに振り返った瞬間水馬は動きを止め、噴水に沈んだ。
「すごいな。一気に沈んだ」
フィアナの後ろで見ていたクロアートは、沈んだ水馬が気になるのか噴水を覗き込んだ。
噴水の底に沈んだ動かない馬達。それは手製の木馬。
「チビどもはこんな沈む物の何が楽しいんだ?」
「チビどもってなんですぅ?」
クロアートの言葉にフィアナは首をかしげる。
別にこの噴水の木馬は「沈む物」ではないが、それはフィアナ自身の失態である。当然その事柄に触れる気はさらさらない。
「チビどもだ」
クロアートの解答はいつもこのような感じである。
わかれと言わんばかりの単語のみ。異世界から来た者とは言えど強調性のなさはぴか一。
「んも~~~。信じられないですぅ~~」
水中から一体の木馬を引き上げ、フィアナはその背に座る。
「振り落とされる心配のない乗馬は大好きなんですぅ~。涼しいですしぃ」
噴水をフィアナを乗せた木馬が一周した頃に、クロアートはフィアナに尋ねた。
「乗馬って、なんだ?」
しばらくの沈黙。
フィアナはにこりと笑った。
「ゼオン様かティールちゃんに聞いてくださーいですぅ。フィアナはもう少し遊んでるのですぅー」




