ティータイム
ひとかけらの氷が細長いグラスの中へ沈んでゆく。
細かい泡が小さな音を立てて消えてゆく。
細長い茎を持つ華やかな花が一輪挿しこまれる。
からん
軽い音とともにグラスが目前に差し出される。
「お口にあうとよろしいのですけど」
複数の視線がグラスに注がれている。
いや、一部はグラスではないものに注がれてるような気もするが……
透き通った琥珀色の液体。
「すごいかわいー。ティールちゃん、フィアナのお茶もこれがいいですぅ」
「冷たいお茶なんて素敵ね。涼しそうだし、華やかだし。私も味見してみたいな」
にぎやかに、少女達は言い合う。
そして挿してある花に熱い視線を送る少年……
「クロ、後で花やるからあんまり花ばっか見てんじゃないよ」
「やだぁ、ムードないですぅ」
「男の人ってどうしてそう……」
「お茶がしですよ。並べるの手伝って下さいね」
少女達の不満を本格的に聞かされる前に救助は来た。
「はーい」
少女達はにこやかにティールを手伝ってティータイムのテーブルを飾りつけてゆく。
狭くはないテーブルの表面を隠すかのようにケーキやクッキーが並べられて行く様はある種壮観。
「ゼオン様ぁ、チョコケーキとミントパイどっちがいいですかぁ」
我慢できなかったのかグラスの花が消えていたが、誰も追求はしなかった。




