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風の魔王城  作者: とにあ
18/30

ティータイム


 ひとかけらの氷が細長いグラスの中へ沈んでゆく。


 細かい泡が小さな音を立てて消えてゆく。


 細長い茎を持つ華やかな花が一輪挿しこまれる。



 からん



 軽い音とともにグラスが目前に差し出される。


「お口にあうとよろしいのですけど」


 複数の視線がグラスに注がれている。


 いや、一部はグラスではないものに注がれてるような気もするが……


 透き通った琥珀色の液体。


「すごいかわいー。ティールちゃん、フィアナのお茶もこれがいいですぅ」


「冷たいお茶なんて素敵ね。涼しそうだし、華やかだし。私も味見してみたいな」


 にぎやかに、少女達は言い合う。


 そして挿してある花に熱い視線を送る少年……


「クロ、後で花やるからあんまり花ばっか見てんじゃないよ」


「やだぁ、ムードないですぅ」


「男の人ってどうしてそう……」


「お茶がしですよ。並べるの手伝って下さいね」


 少女達の不満を本格的に聞かされる前に救助は来た。


「はーい」


 少女達はにこやかにティールを手伝ってティータイムのテーブルを飾りつけてゆく。


 狭くはないテーブルの表面を隠すかのようにケーキやクッキーが並べられて行く様はある種壮観。


「ゼオン様ぁ、チョコケーキとミントパイどっちがいいですかぁ」


 我慢できなかったのかグラスの花が消えていたが、誰も追求はしなかった。




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