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繋いだ手
風が総てを覆い隠す。
涙も何もかも。
そこに有るものはただの虚無。
どす黒い液体が大地を濡らしている。
折り重なった死体を見下ろす。
すでに動くことも喋ることもない親子。
失われた命。
魔物達がその身体を両側から引っ張る。
ぶつり
死体がただの肉隗に変わる。
魔物達はさらなる獲物を求めて崩壊した村を彷徨う。
持ち去られた親子の死体。
そこには、
一本の枝のような物が残っていた。
大人の腕と子供の腕。
しっかりと握り合った繋がれた手。
その繋いだ手が、自分にはなかった感情を僅かに呼び起こす。
「ゼオン様」
誰かが俺の手を取った。
目の前にいるのは黒髪の魔族の娘。
「帰りましょう。我らのうちへ」
俺は娘に手を取られたまま、その後に従った。




