面影
ふわふわの薄い色の髪を見ると君を思い出す。
そばにいることない君。
君は私の命の恩人。
君は追い立てられる可愛い小鳥。
私は君に助けられた。
本当ならあのまま、死んでいただろう。
君は助けてくれた。
熱にうなされ、傷のうずく痛みにうめく私を、君は献身的に癒してくれた。
それなのに私は恩を仇で返した。
軍のかけた懸賞金に目が眩んだ。
君は捕まらなかった。
しかし、私は情報料と軍への仕官という褒賞を私は得た。
今、君を追うのが軍の魔法使いである私の務め。
「ザラクビオ様」
部下の声に書類から目を上げる。
「なにかね?」
書類をテーブルに置き、窓から離れる。
「ブロッケス様が会議があるので同席せよとのことです」
かちんと靴音も高く敬礼する。
私は頷いてデスクをまわる。
「了承した」
「異端の魔女の足取りが途切れました」
部下がふいに口を開いた。
ブロッケス様の下へ行くまでにの報告だと容易に知れる。
いつもの日常なのにその言葉に驚かされた。
「足取りが?」
「追手の兵が死体で発見され、それ以降の足取りが追えません」
「死体、だと?」
まさかという意識が働く。
「追手の兵4名、無残にも切り刻まれて発見されました」
「……そうか……」
彼女が人を殺めたという事をほのめかす報告を受けたのは初めてである。
だから有りえぬ事と思い込んでいた。
彼女もまた世の闇、魔に属する異端の者。
私を救ったのは、ほんの気まぐれ。
彼女は、敵なのだ。
「ザラクビオ、会議に同席せよ」
すでに報告を受け理解していたことをブロッケス様があらためて告げる。
「承知いたしました」
―――サキ……君は変わってしまったのだろうか……―――




