鈴
からん……
鈍い音がする。
かららん……
金鎖の先についた赤い飾り珠。
かららん……
不思議な世界だと感じる。
多くの存在が同一の範囲に存在し得る状況。
そばには誰もいないのに慣れている我が身には違和感が強い。
人が喋れば空気が動く。
触れれば温かい。
不思議だが、疲れる。
そばに誰かがいること。
それがこんなに疲れることだとは知らなかった。
混乱する。
見知らぬ世界。
受け入れてくれた『風のゼオン』
自らの縄張りに何故異端者を入れれるのか、我が身には理解できない。
赤い飾り珠を目前で揺らす。
『風のゼオン』は庭の植物の手入れをしている。
彼は我の食事のために一区画を深紅の花園にした。
栄養として『赤い花』しか摂取できぬ我のために……
しかし、少しはずれた区画に見つける赤い花。
力に満ちた花を摘む事は止められない。
ふっと過ぎる飢えを満たすにはそれでも足りぬのだから……
帰りたい。
命に満ちた飢えとは無縁であれた故郷に……
かららん
鈴が寂びた音を立てる。
「クロ。手伝え」
ゼオンが笑いながら呼びかけてくる。
「今、行く」
何故、この時間がいとおしく思えるのか、我にはわからない……




