寒い日
暖かな日差し。
庭に降り注ぐ日差し。
少女はただ見上げる。
此処に連れてこられて、3人の人たちに紹介されて。城を出なければ好きにして良いと言われて。
あの人は怖くて優しい人だった。
二度目にあの人に会った時、あの人は私のことをわからないようだった。
違う感じがした。
あの人に最初に会った時、あまり笑わない人だという印象があった。
今、見るあの人は違う。
よく笑う。……でも……
あの人の本心が見えない。
この庭を作り上げたあの人。
美しい庭。
きれいなだけでなく、どこか雑然とした所もあり、居心地よく出来上がった庭。
ありえない色彩の植物達。
「サキちゃーん、お茶にしようよー」
テラスにお茶の準備ができてるのであろうフィアナが元気に手を振る。
その横で青みがかった黒髪をまっすぐに流したティールが誘うように少し、微笑む。
テラスの手すりに腰掛けて、テーブルの方を真剣に見ているクロアート。
彼らはそれなりに私を受け入れてくれていて、一人じゃないと思う。
「サキちゃーん」
フィアナが急かすように手を振る。
何事かという表情でクロアートもこっちを見ている。
「今、行くね」
このあたたかさが何故辛く感じるのだろう。
それが私には分からない。
あたたかく優しく居心地のよい美しい空間。
一人でいた時の方が痛くなかった。
世界はあたたかいのに……
私にとって寒くて痛い日が終わるのはいつなんだろう?
「サキちゃん、はやくぅ」