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囁き声
夢を見た気がした。
部屋の中は暗い。
甘い香りが室内に残っていて頭がくらくらする。
痺れる体・揺れる視界。
シーツを握り締め、体をゆっくり起こす。
全身がだるさを訴える。
窓を開けずとも今が夜明け前だとわかった。
いつも起きるのはこの時間、日の昇る瞬間を見るために昔つけたクセが今も抜けない。
室内には俺一人。
いつもそう。
ココには誰もいない。
そう、昨夜も一人で過ごした。
――――本当に?――――
何かが囁いた気がした。
俺は聞かなかったことにすると、窓を大きく開けた。
外はまだ暗い。
山と森の輪郭がゆっくりと見極めれるようになってゆく。
強い風が音を立てて俺をなぶってゆく。
すると、全身に残っていただるさが消えてゆく。
「おはよう」
昇る朝日、強い風。けだるさも痺れも不快な物全てが消えてゆく。
――――消えはしない――――
髪をかきあげる。
もうひとつの声を消すために……
「今日もいい天気だ」