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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
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ニヶ所目 2


僕がアーチ状の校門に入った途端、後ろの方から呼ぶ声がした。


えっ、知り合いなんて居ないよな。


そう思い振り返った瞬間、僕の足は地中に根を生やした。


蒼ちゃんが、僕の方向を目指して走ってきている。


(あわわわわ、蒼ちゃんが後光を出しながら走ってくるよ。まっ、眩しいっす…)


僕の目には、蒼ちゃんの後ろに後光が指しているのが見えた。


走ってきた蒼ちゃんは僕の前で止まると、軽く息を整えて、小さく笑った。


「あの、良かったら一緒にクラス表見に行きませんか?」


そのう言葉が蒼ちゃんの笑顔を一層引き立たせた。


「(あの、良かったら一緒にクラス表見に行きませんか?)」


この言葉がリピート機能が働いた様に僕の頭の中に、木霊した。


(えっ?蒼ちゃんが誘ってくれた?さ、誘ってくれたぁ〜)


僕は、空から天使が降りてくるのを確認した。


天使っているんだねっ。パト〇ッシュ。



パト〇ッシュがワンと吠えた。


「あの…ダメですか?」


僕が、自分の世界でパト〇ッシュと戯れていると、どこからか蒼ちゃんの声が聞こえたのでパト〇ッシュを放り投げた。



「僕で良かったら」



僕達二人はクラス表の前に着いた。


表の前で蒼ちゃんが僕を見た。


「あの、名前は何ですか??私は、楠木蒼です」


ニッコリと微笑んで自己紹介してくれた。



ええ…もちろん知ってますとも(内なる欧介談)。


「僕は、真田欧介って言います」


「じゃあ…欧介君って呼んで良いですか?」


その響きに、また空から天使が舞い降りてくるのが見えた。


「良いですよ。僕は、蒼ちゃんって呼ばせて下さい」


僕は、照れながら言った。


「はい」


蒼ちゃんのOKしてくれた事に僕は溶けてしまいそうだった。


二人で表を見ていると、蒼ちゃんが口を開いた。

「私は、4組みたいです」



(僕は、何組なんだぁ?真田…真田…)


真剣に表を探していると、蒼ちゃんが見覚えの男子の名前を指した。


「欧介君も、四組みたいですよ」


(マ、マジっすかぁ?)


四組の名前を見ると確に真田欧介という名前がある。


僕の周りに天使が集まってくる。


あっ天使さん、次は僕の番なんですね…。


パト〇ッシュ‥今行くからね……。


僕は、今とっても幸せなんだよ……。



一人で悦に入っていると、


「改めてお願いします」


蒼ちゃんが笑顔で頭を下げた。


「こちらこそです」


戯れてくる天使を強引に天に還して欧介も、頭を下げた。



二人で、体育館に向かおうとした時、誰かに後ろから呼ばれた気がした。


振り向くと、母さんが手をフリフリ立っていた。


「欧介〜この方がカメラで写真撮って下さるって、記念写真撮ってもらうわよ〜」


さっ……最悪だぁ〜〜。


欧介が、僕は、母さんの姿に恥ずかし過ぎて他人の振りをしていると、蒼ちゃんが僕を見た。


「お母さんですか?えっと…じゃぁ、私は先に体育館行ってますねぇ。では、教室でまた」


そう言って歩いて行ってしまった。


あ、蒼ちゃーん。


後方から、更に大声で母さんが呼んでいるのが聞こえる。


か…母さん、俺…消えたいよ。


そう思いながらテクテクと母さんの方に向かった。



入学式も始まって後半に差し掛かった頃、周りの父兄を見て思った。

聖蘭って結構、お金持ち率高いんだ。


明らかに父兄席から金持ちオーラが漂っている。


公立なのに私立並の金持ちの多さだな。と感心してしまった。


家の経済事情は大丈夫なのか?


何か心配になった。


「では、最後に一年生を代表して、四組の春日かすが 大河たいが君に新入生の宣誓をして頂きます」


カッコイイ名前だなと思っていると凛とした雰囲気を漂わせた黒髪の学生が壇上に上がった。


黒髪の少年が宣誓を始めた途端、一瞬にして女の子がウットリし始めた。


僕は、ガックリした。


(はぁ、カッコイイ良すぎ。優等生登場ですね…蒼ちゃんもウットリしてんのかな)


宣誓が終わった途端、拍手が大爆発した。


その拍手に、本人は軽く会場に会釈した。


更に会場に拍手が沸いた。


ここは、何かの授賞式の会場かよっ。


その時、拍手の中ではっきり舌打ちの音を聞いた。


うえっ、舌打ち?


後ろの列を見ると赤毛が壇上の彼を見ていた。


うわっ!!赤毛君も四組だったんですかぁ。


悪夢が蘇り更にガッカリした。



入学式が終わり父兄は自主解散となり生徒は各自のクラスへ移動する事になった。


移動する途中、母さんが僕とスレ違い様に素早く手を動かした。


(帰るわねっ。今晩はすき焼きよっ)


そう、真田流手話を僕に送ってきた。


(了解)


僕は、コクリと頷いて手話を返した。




四組のクラスに着き、席に座って周りの誰に話掛けようか考えていると肩を強く掴まれた。


「よぉ〜鼻水君。お前さぁ、イメチェンしたの?」


掴んできたのは赤毛君だった。


(い、いきなり赤毛君ですかぁ…)


内心うわっと思いながら、とりあえず笑顔を作る事にした。


「うん…どうかな?」


「はぁ?似合ってるわけねぇだろ。ダサ男君は、何してもダサイっつうの」


笑いながらサラッと毒を吐きかけて離れていった。


(ぐっわぁわぁ…)


その様子を見て、さっきの天使達が僕を見てエディーマーフィー並に爆笑している。


(あっ…天使さんが、えっ、パト〇ッシュまで?)


僕が猛毒に耐えきれず机に倒れ込むと、教室に担任の先生が入ってきて初ホームルームが始まった。


先生からの、祝福の言葉と明日からの日程を聞いて今日は解散となった。


しかし僕の頭の中は、赤毛の言葉が頭に響いてもう帰りの時間だと気付くのに数分かかった。



帰り際、校門付近で蒼ちゃんが別のクラス友達らしき女の子と話していた。


僕が、ボーっとしていて蒼ちゃんに気付かず側を通りすぎる際に笑顔で話かけてくれたおかげで、少し元気が出た。


と、同時に教室に筆箱を置いてきた事に気付いた。「あっ筆箱取りにいかなきゃ」



急いで教室に向かって戻って行く途中、頭に問いが浮かんだ。


(僕って、まだダサイのかなぁ?)


はっきり言って自分では、中々カッコ良くなったと思っていたので、赤毛の言葉に相当ショックを受けた。


(よし帰ったらもう一回鏡と雑誌で研究だ)


そう思いながら、教室の付近まで来ると四組の中から話声が聞こえた。

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