五ヶ所目 12
10年ぶりに更新します。
過去の章も修正していきます。
「今日は楽しい時間を、ありがとうございました」
店を出て、美月ちゃんが微笑む。
彼女の笑顔は、街頭の光に照らされたせいか、より柔らかな印象を感じる。
「うん!すっごく楽しかったね!今日の合コンは」
ほのちゃんは、クルッと回転したせいか、スカートがフワフワと揺れた。
うん?
今日の合コンって事は、何回も合コンしてるのかな?
まぁ、千代菊の女の子と合コンしたい学生は山ほど居るか。
しかし恐るべし、千代菊!
「楽しい時間は、あっと言う間ね。夜風が気持ち良いわ」
ふわりと髪を掻き上げる、茜ちゃん。
夜風の匂いなのか、風にのった彼女の髪の匂いなのか、甘い匂いが鼻をくすぐる。
いや間違いなく後者だな。
これは茜ちゃんの髪の匂いだと、僕の本能が確信する。
雪白さんは、店のオーナーと話しが有るらしく、まだ店内に居る。
結局、彼女&店の御好意で2本のチキンを1本分の値段で御土産に出来た。
やっぱり美人さんは、違うな。
美人は、心まで綺麗なんだな。
改めて心に深く刻みつけた。
「おっと、忘れるトコだったぜ。ホノちゃんそろそろ!?」
「りょ〜かい。蓮くん、やっちゃいましょ」
蓮とほのちゃんが、ニヤニヤしながらスマホをササッといじる。
二人の仕草に注目する僕等。
「さぁ、みなさまぁ!グループトークにようこそおいでましたぁ!!」
蓮とほのちゃんは、僕達を笑顔で見回し、LINEの画面を見せた。
「おぉー!さっすが、二人は段取り上手ね」
自分のスマホを開いて笑顔になる、美月ちゃん。
「だよね。やり手の幹事さん二人には、敵わないわ」
悪戯っぽい目をして、茜ちゃんが蓮を見る。
「イヤイヤ、グループトークって機能使うの初めてだぜ!?ほのちゃんにフォローされながらだったけど、緊張して指がめっちゃ震えてたぜ。見えてたハズだけどなぁ。」
蓮はイタズラっぽく笑った。
えっ、ってことは…。
自分のスマホでLINEを開くと、グループトークのお誘いが来ていた。
「でも何つうか、楽しい時間が終わるのが寂しくてさぁ。終わって欲しくなくて……」
悪戯っ子のような笑顔のまま、蓮が少し寂しそうに言った。
「私も同じ気持ちです……」
美月ちゃんも、スマホから目を離してしんみりと呟く。
しんみりしてる、美月ちゃんも可愛い……じゃなくて、こんなアッサリと女の子達と【お友達】になって良いの?
しかも、【千代菊】ですぜ!?
そう考えると、自然に手に力が入った。
「あの阿呆……人に伺いもせず、勝手に」
「ま、まぁ仕方ないね。僕は気にしないから良いけど」
大河君と花君が、スマホを片手にボソボソと話してる。
「あの、本当に参加して…」
二人に問いを投げようとした時、雪白さんが店から出てきた。
「お待たせしました。皆さん」
僕達の元に優雅に歩いてくる、雪白さん。
そんな彼女の雰囲気に、むかしテレビドラマで見た女優さんの姿が重なった。
きっと、間近で見るとこんな雰囲気なんだろうな。
それにしても、雪女優さんは白雪姫より……シンデレラのイメージ。
蒼ちゃんが、白雪姫のイメージだな。
そんな訳の分からない妄想をしている自分に、ふと気づく。
「今日は、ありがとうございました。中村君」
白雪さんは艶やかな笑顔を、蓮に向ける。
「姫ちゃん。来てくれてありがとう、会えて光栄だぜ。友達追加も宜しくっす」
蓮は照れ臭そうに笑う。
「春日さんも、森島君も、真田君もありがとうございました」
僕ら三人にも笑顔を見せてくれた雪白さん。
「こちらこそ、楽しいひと時を過ごす事が出来ました」
「僕も楽しくて、幸せでした。姫ちゃんありがとう」
大河君と花君が、優しく微笑む。
「真田さん。お土産のチキン、貴方のご両親もきっと気に入っていただける思います」
「えっ…あ、ありがとうございました。ご厚意でチキンのサービスまでして貰えて、恐悦至極でございます」
雪白さんに声を掛けられて、テンパって変なことを口走ってしまった。
しかし、こんな僕なんかにも言葉を掛けてくれて、何とも優しいお方ですよ。
急にLINEとか書いてみたりして、前話の辻褄を合わせるのが大変だ……。
和紙でした。
では!!