五ヶ所目 9
今、僕は<合コン>の場に居ます。
……この僕が合コンに参加してるなんて信じられない。
でも、事実なんだよね。
今、女の子達の対面にソワソワを抑えながら座っている。
すごくドキドキするんだ。
ほのちゃん。
美月ちゃん。
茜ちゃん。
3人とも、すごく可愛いくて。
しかも、すごく仲良しで。
ってか、やっぱり同じ空気を吸っててダメなんじゃないか僕は!?
こんな僕みたいな、惨めな腐れ外道が。
「オースケ、ナイスだぜ」
ガッチリと僕の肩に腕をまわしてる蓮が、楽しそうに僕の耳元に囁いた。
ナイスと呼ばれたせいか、それとも僕は耳元が弱いのか…何だかムズムズする。
でも、そんなムズムズが吹っ飛びそうだ。
今から、蒼ちゃんと同じ衝撃を感じた、女の子の自己紹介。
女の子の自己紹介を待つのが、こんなにドキドキするのも蒼ちゃん以来。
「さぁて、メンズの皆様お待ちかね!姫ちゃんの自己紹介だよぉ」
ほのちゃんが、ニコニコ笑ってパチパチと手を叩く。
蓮も立ち上がって、同じ様に手を叩いた。
「…バカは立ち上がるな、阿呆…」
ボソッと、大河君の呟きが耳に入ったが気にしないでおこう。
ってか、ほのちゃんが連呼してくれてるお陰で……姫って名前だって分かってるからなぁ。
噂の姫ちゃんが、ゆっくりと立ち上がった。
思わず、生唾を呑んでしまう。
「雪白です。今日は、新しくお友達が増えて嬉しいです」
照れたような、でも神々しさを感じる微笑みを浮かべる雪白さん。
「おい……欧介」
「……ふぇぃ」
「口は閉じた方が良い。だらしがない」
「うぇっ……あっ、ありがとう大河君」
大河君に言われて初めて、自分の口が全開になってる事に気付いた。
それにしても。
名前が〈雪白 姫〉かぁ。
すっごいピッタ……。
「雪白 姫ちゃんかぁ。本当にお姫様みたい」
花君がニコニコと笑う。
「ありがとうございます、森島君。」
「お礼なんて要らないよ。本当の事なんだからね」
あっ…。
あぁぁ……。
花君、それ僕の言いたかったセリフですよ……。
しかも自然に、サラサラ会話してる…何か悔しいな。
「来て良かっただろ、オースケ」
「う、うん」
蓮が満足そうに笑う。
「上手くその気にさせて、お持ち帰りしても良いんだぜ…にゃんてなぁ!ハァハ八ッ」
「ちょ、蓮!?声が大きいって!」
ヤバイって、聞かれてたら不味い…
「あのぉ、何をお持ち帰りするんですか?」
雪白さんが、小首を傾げて微笑む。
くはぁっ!
よりによって、一番聞かれたくなかった人に聞かれちゃってる!?
ここは、ほのちゃん辺りが喰い付く話でしょ?
こうなったら、目が合った人に助けを求めよう!
誰かっ!?
救いを求めて、皆の顔を見回す。
「よよぉ!このチキンは美味しいぞぉ!ほらほら、みぃちゃん、茜ちゃんも食べて食べて」
口いっぱいにチキンを頬張り、ニコニコ笑うほのちゃん。
「コラ、ほの!両手に骨付きチキン持って食べないの!」
「でもでも、その食べ方は、ほのちゃんらしいよね」
茜ちゃんと、美月ちゃんも何だかんだ楽しそうだ。
「うわぁ、美味しそうだなぁ。ほのちゃん、僕にも一本取って」
「うん良いよぉ。はーい花君。えへっ、ほのの王子様もどうぞぉ」
「王子様?……ありがとう、いただきます」
「大河君、やったじゃん!王子様だって。僕が言うのも変だけど、確かに大河君は王子様っぽいね」
「ふっ……そんな事より、花。口にソースがついてるぞ」
「えっ、嘘!?」
「ちぇ!朴念仁が王子様かよ。ホノちゃん、気を使いすぎだぜ!とりあえず、オレにもチキン頂戴なっ」
「ぶぅ!!蓮君!大河君は、ほのだけの王子様なんだから!」
えっ。
何だろ……。
この疎外感……。
何でミンナ、盛り上がってんの!?
ってか、蓮!?
お持ち帰り発言ブチまけたのアンタだよね!?
何、堂々とミンナの会話に参加してるんだよ!
「あ、えっと、お持ち帰りってのは……その……」
袋小路に迷い込んだ僕に、雪白さんは相変わらず優しい微笑みを浮かべている。
その微笑みが、僕を袋小路に追い詰めてる事に、どうかお気付き下さい。
「ほ、骨付きチキンがお、美味しそうだから!お持ち帰りしよっかなぁって!」
雪白さんから、目を逸らさずには居られなかった。
あけましておめでとうございます。
久しぶりに更新します。
これかれは、無理なく200文字程度で更新しようかと思います。
和紙でした!
では!