五ヶ所目 8(蓮)
今回は、蓮視点です。
オッス!
オラ、蓮!
ハハッ!
テンションも上がって参りましたってな。
いやぁ、内輪で合コンは最高だぜ。
しかも、相手は千代菊!
更に、千代菊の一年生〈姫〉が入ってる超豪華盤。
多分、この事実にウチのサクランボトリオは気付いてないと思う……もしかしたら〈姫〉の存在自体知らないかも?
いや……それはココら一帯に住んでる男としたら、有り得ないな。
近隣の男子高校生が一度は妄想と快感を右手に乗せて……って違うかぁ。
一度は、恋い焦がれる千代菊の〈姫〉を合コンに呼べるなんて、俺のイケてるアプローチのお陰だぜ。
これは仁徳?
いや、持って生まれた俺の人徳だなぁ。
よっしゃ、更に盛り上げるっちゃね!
「タイガぁ、待ちきれなかったみたいだなぁ!?今日は朝からソワソワしてたもんな」
俺の言葉に、一瞬だけタイガの眉がピクついた。
だが、今は気にしてられない。
「さぁてアカネちゃんの番だぁ、待ってましたぁ」
手を叩いて、アカネちゃんに自己紹介を促す。
期待してなかった朴念仁のタイガが、折角作った流れだ。
流れを潰したら、申し訳ないない&癪だからなぁ。
俺が更に加速させるぜ!
「うぅ、いざ自分の自己紹介になったら、緊張してきちゃった……名前は、伊集院 茜です。気付いてるかもしれないけど、ほのとは幼なじみです。みぃち……」
「ほのは、小さい頃の茜ちんの面白い話をたくさん知ってるよぉ」
「コ、コラほのぉ!?私の自己紹介中に茶茶入れないの!それに、そんな話言わなくて良いんだから!」
「エヘヘッ!あぁ~、茜ちん照れてるんだなぁ?フフン、攻守逆転だぁ!」
アカネちゃんに向けて、勝ち誇った様にピースをする、ホノちゃん。
ハハッ!
この子、やっぱりオモロいなぁ!
「……よ~く分かったわ。今日は、ご飯の後で御説教だからね!攻守逆転したか、じっくり確認したいし、今日は本気だからね」
「えぇ!?お説教は嫌ぁあ!茜ちん、ゴメンね!?もうしませんからぁ……」
さっきの勢いは、何処へやら、焦り出すホノちゃん。
「ね、ねぇ?ちょっと二人とも落ち着こうよぉ……ここお店の中だし、それに蓮君達に笑われてるぅ~。ひ、姫ちゃん、何とかしてぇ~」
ミツキちゃんが、ドギマギした様子で《姫》ちゃんに助けを求める。
「賑やかなディナーなったわね。美月、ほのが元気なのはいつもの事なんだから。……4人に私達のいつもの姿を見て貰えて良いんじゃないのかしら?」
《姫》ちゃんは笑顔のまま表情を変えない。
プハッ、やっぱりダチ同士の掛け合いは聞いてるだけで愉しいぜ!
掛け合いを楽しむ俺を尻目に、慌てるホノちゃんに向けて眉を顰める、アカネちゃん。
彼女のそんな顔を見て、ふいにユズの顔が頭に浮かんだ。
もし、ユズに合コンしてるってバレたら……絶対不機嫌になるだろうな。
きっと、こんな感じだ。
俺の頭上に、未来の出来事を表す魔法の吹き出しが現れる。
校内で、ユズに出くわす。
「おぉ、ユズ!お……」
「楽しかった?」
やけにニコニコと笑顔を浮かべるユズ。
「はっ?ちょっと待て、な、何…」
「だからぁ、合コン楽しかった?」
腰に手を据えて、俺の顔を覗き込む。
笑顔のままで。
「楽しいとかじゃないんだぜ。俺は、オースケやハナの為に……」
「そっかぁ、蓮とミンナで楽しく《合コン》したんだ!昨日は、千代菊の可愛い可愛い《女の子達》と楽しい時間を御過ごしになれて良かったわね!普段、私とは滅多にご飯食べないクセに、他の女の子とならホイホイ食べるんだ!……あぁ、もう顔も見たくない!バカ!バカ!バカ!!」
魔法の吹き出し終了。
いや、間違いねぇ。
こんな展開になり、理不尽な言葉を浴びせられる。
別にユズに怒られる理由が無いんだが……何故だよ。
これが、ミカンなら笑って見過ごしてくれるのにな。
「蓮ったら、しょうがないなぁ……もう」
みたいな。
全然違うからな……アイツら。
きっと、この4人の内の誰かもそんな子なんだろうな。
女って難しいぜ。
まぁ、良いや!
今は合コンなんだ、《侠の闘争》に命を懸けずして何をするモノぞ!
ユズにはバレないって、例えバレても……いや、バレる事は有り得ないな!
俺様に抜かりは無いんだ!
さて、次はラストだ!
「やっぱ、友達の前とかだと素の自分に成れたり、友達と一緒に居ると何処でも飾らない関係で居られる事は、とても良い事だと思うし……ホントの友達だと思う。だから、四人はホントに仲良しなんだね。今まで見てて、心からそう思います」
急にオースケが真面目な言葉を声で綴った。
「……って、僕は突然何を言ってるんだぁ?……ゴメンね、いきなり。何か、僕達も茜ちゃんやホノちゃん、美月ちゃん、姫ちゃんみたいに仲良いからさ。だから、同じなんだなって。改めて、友達って良いなぁ……って思ったんだよね」
静まり返った女の子達。
もちろん俺達も静まり返ってるのは、言うまでもない。
「欧介君……たよ」
「えっ?ほのちゃん?」
「見直しちゃったよ!ほのは、今この瞬間、君を見直したぁ!」
ほのちゃんが、ナイフとフォークを掴んで立ち上がった。
だけど。
「ひぃいい!?」
勢い良すぎたのか、ナイフが手から飛び出し、オースケの丁度目の前の位置に突き刺さる。
ハハッ。
ほのちゃん、天才だな。
「コラァ!?折角の欧介君の言葉が台無しじゃないの!ほの!!はしゃいだらダメだって言ってるでしょ」
「うわぁーん、茜ちんの鬼ぃ!?赤鬼ぃ」
「うぅ……せ、折角静かになったと思ったのにぃ。また騒がしくなっちゃったね。でも、欧介君の言葉良かったです。真っ直ぐな言葉で」
ミツキちゃんが、瞳をキラキラ輝かせて笑う。
「そんな……ただ思った事を口にしただけだから」
オースケは、頭をポリポリと掻いた。
オースケ。
お前。
やっぱ最高だな。
最高のツレだよな、俺達は!
気付いたら、俺は席から立ち上がって、ハナとオースケの肩をガッチリ組んでいた。
もちろんタイガの肩にも手をかけてる。
「うぇえ……蓮、ちょ、ちょい」
「フフッ。蓮ちゃん、ご機嫌だね」
「阿呆……何だ、肩に手をかけて」
「楽しいから、肩を組んでる!ハハッ、そんだけだぜ」
ツレの肩に手を掛けるのに、それ以外理由なんて無いぜ。
「さぁ、最後は《姫》ちゃんだよ!バッチリ決めてな!」
俺は、高まったテンションに任せて、千代菊一年の《姫》に自己紹介を促した。
次回からは、欧介の視点に戻ります。
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和紙でした!
では!!