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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
60/70

五ヶ所目 4

 泉橋のバス停に降り立った。


バスに乗ったまま、僕の元から去っていく蒼ちゃんに手を振る。


このまま二人で帰りたかったなぁ。


結局、蒼ちゃんを泉橋で一緒に過ごそうぜ!とは誘えなかった。


脳内で、誘いの言葉を反芻するだけで口に出すことは出来なかった。


そのままバス停のベンチに座り、自分の進歩の無さを噛み締めなていると、ズボンのポケットに入れている携帯が、僕の太ももを優しくバイブする。携帯を取り出しディスプレイを確認すると、蓮の名前が浮かんでいた。


遅いから怒ってるんだろうな。


そんな不安を感じつつ、通話ボタンをゆっくりと押す。


「もしも……」


「オースケェ!?ようやく繋がったぜ!やったなぁ!お手て繋ぎは楽しかったかぁ?」


威勢の良い調子でまくしたて、カラカラと笑い出す蓮。


「うぇっ、何で……」


「見てたんだよ、俺ら三人で一部始終な。バッチリと!あぁー見ててドキドキだったぁ!手を繋いじゃうは、後ろの学生達からは大ブーイング受けてるわ!ハハッ」


そんな……どこで見てたんだよ。


「まぁ、そんな事より早く来いよ!俺らは、カフェ〈カンタータ〉の前に居るからよ!早く来いよ、じゃあ……」


「ちょ、ちょっと待って!?カンタータってどこ?」


電話を切ろうとする蓮を慌てて制する。


「あぁっと、オースケ場所分かんねぇか!、悪ぃ悪ぃ。バス停から……」


蓮に言われた道筋で、カフェに向かう。


辺りを見回せば、蒼ちゃんが言ってたように、お洒落で真新しい建物が至る所に建ち並んでいる。


それにお洒落な女子高生や大学生がひしめいている。


何だか、場違いだなぁ。


この場に、不釣り合いな自分に恥ずかしさを感じながら道を進む。


あぁ、そうか。


歩み進めながら、ある事に気づく。


さっきから何人も同じセーラー服を着た女子高生とすれ違って居るが、泉橋には女子高が有ったんだ。


千代菊女子高校。


この近辺の男児なら一度は恋い焦がれる。

菊女。


女子中学生が行きたい女子高NO1と言えば、ココだ。


それに男子高校生が、彼女にしたい女子高生NO1でもある。


菊女は、この地域に残された最後の楽園と密かに呼ばれている。


校内には草木や色とりどりの花が咲き誇り、妖精、エルフやセイレーン、天女、ドリュアド、エキドナ、ゴーゴンが住まう高校だとか。


うん……まぁ、それは無いと思うが。


誰だよ、こんな変な妄想広めたお馬鹿さんは!?


でも、校長が自ら生徒の美意識、仕草、気品を糺していると聞く。


それに各学年に……。


「オースケ!ここだ、ここ」


脳内の引き出しから、菊女の情報を手繰り寄せていると、ふいに蓮が僕に向かって手をブンブン振っているのに気づく。

気付かない内に、カフェの近くまで来ていたんだな。



菊女の事に、すっかり夢中になっていた。


「よぉ、幸せ者の果報者!」


会うやいなや、蓮がイタズラっぽく笑いながら僕を小突く。


「み、見てたなんて知らなかったよ!あ、あれは……」


僕の言葉を遮るように、花君が突然歩み寄った。


「ゴメンね、ま……また欧介君に迷惑をかけちゃって……僕」


言いながら、花君が肩を落として驚くような負のオーラを滲み出している。


どうりで花君の周りだけ、何だかドス黒いと思った……。


「うわぁ!は、花君!?いや気にしてない、気にしてないからさ全然!だから元気出してよ!」


この花君の雰囲気は、あの学校の時と同じだ。


な、なんとかして花君を元気づけなきゃ!


今からの展開が、壊れちゃう!?


「本当に気にしてないかなぁ……迷惑じゃなかったかなぁ?おぅすけ君……」


涙を浮かべ、許しを乞うような表情で呟く。


うっ……くぅうっ、そんな目されたら、ギュッと抱き締めたくなるじゃない。


い、いかん落ち着け。


「全然、全く!むしろ花君が押してくれたおかげで、蒼ちゃんと手まで繋げたし、なんと映画館まで送り届ける約束まで出来たんだよ!最高にラッキーですもん。蓮の言うとおり、僕は果報者だぁ!ありがとう、花君のおかげだぁ」


「ほぇっ、映画館に行くのぉ?」


涙目で、驚いたようにキョトンとする花君。


「うん。そうなりました」


「そっかぁ。映画館に行く約束出来たんだね。そうなんだ、そうなんだぁ。僕は役に立てたんだねぇ、良かったぁ」


涙を拭いながら、満面の笑みを浮かべる花君。


ふぅ……良かった。

やっぱり花君は、この満点笑顔じゃないとね。


安堵して居ると、肩に誰かが手を載せる。




振り向くと、大河君が小さな笑みを浮かべていた。


「ありがとう、オースケ。俺から礼を言わせてもらう」


「えっ、何が?」


「解らないのなら、良いさ」


笑みを浮かべたまま、肩から手をどける大河君。


まぁよく分からないけど、気にしなくても良いのかな?


「やったな、オースケ!蒼っちと休日デートかぁ。よっしゃ、この勢いで今日も頑張ろまい!よっしゃ、みんな友達!奇跡の全員大集合!ってか!?さぁてカフェに入ろうぜ、もうお待ちかねだぜ」


蓮が、いつも以上に豪快な笑いを飛ばし、店の扉を勢いよく開いた。


「よぉし、カフェで欧介君の話をたくさん聞いちゃうぞぉ、けってぇ〜い!」


花が天を指さして、ピョコンと宙に飛び上がった。


うん?


なんか聞き覚えがあるセリフだな?


まぁ今は良いか。


「ふっ悪くないな。でも花、お前の話も話さねばなるまい?」


大河君が、花君に釘をさすように呟いた。


その表情に、なんとなくサドっ気を感じるのは僕だけでしょうか?


「うぅー。やっぱり話さなきゃなりませんかぁ。僕も話す事……けってぇい」


さっきとは、うってかわって弱々しく呟く花君。


まぁ何にしても、このカフェで楽しく4人で話せるって事は間違いないかな。


店に入ると先頭の蓮が店員の女性に、手を振りながら話しかけた。


「ふふっ、お待ちしておりましたぁ。こちらですよぉ」


「はぁい、どこまでも着いていきますよ!べっぴんなお姉さん」



蓮が元気よく、女性に笑いかける。


うぅーん、蓮のこうゆう所に憧れるなぁ。


僕も……さり気なく、べっぴんさんとか言えたらなぁ……。

店員に連れられ、店の奥へと連れられていく僕ら。


「こちらの奥のテラス席です。先にお連れ様がお待ちかねですよ」


お、男四人でテラス席かぁ。

うん?

お連れ様?


「べっぴんなお姉さんに案内されて、すっごい良い気分だなぁ。ありがとう!さてと……」


お姉さんと楽しげに話していた蓮が、急に僕に向き直り僕の髪を弄り始める。


「えっ?」


僕の疑問符にも、無反応に髪を弄り続ける蓮。


「よっしぃ髪型準備完了!男前になった、オースケ」


「えぇっ?男前って何が?」


蓮は僕の言葉を無視して、次に花君の目尻に触れる。


「涙の跡……なしだな!ほら、ハナぁ笑ってくれ」


「わ、笑うの?……こうかな?」


「その笑顔、最高だなぁ!花の笑顔でイチコロにしてくれて良いからな。よし、じゃオースケと手を繋いでくれ」


蓮は、花君の頭を軽く撫でた。


「ふぇ?手……」


僕と花君は、お互いに目を見合わせて、言われたまま……手を繋いだ。


「俺さ、お前らのそうゆう素直なトコ大好きだわ」


手を繋いだ僕らにニカッと笑顔を向け、やがて真剣な表情で蓮は大河君の前に拳を差し出した。


「……何だ?」


「タイガ、手を出せ」


真顔で言葉を交わす二人。


「何故?」


「お前に渡したいモノが有るからさ」


疑うような眼差しを向け、しばらくして大河君はゆっくりと手を差し出した。


蓮は、拳を解いてゆっくりと大河君の手を握る。


「阿呆……気色悪い、離せ」


不快感を露わにした大河君の言葉を完全に無視して、同じように片方の手を花君と繋いでいる僕の手を掴む。


蓮は、ゆっくりと僕らを見回して呟き出す。


「さっきに言っておく……お前らの恨みつらみは明日聞く!侠の約束だから……だから許せ!さぁて今日は、楽しもぉうや。侠の闘争の場だぁあ」


そのまま蓮に、凄まじい力で引かれる。


ほ、本日引っ張られるの二回目だぁぁー!!


一瞬、今自分が居る空間から別の空間に弾き出された。


そんな不思議な感覚に襲われた。


「茜ちんとお友達ぃ!お待たせぇ、蓮と愉快な仲間達の到着だぁ」


直後、蓮が元気良く叫んだ声が耳に入る。


その声で、不思議な感覚が吹き飛んだ。


いや感覚が吹き飛んだのは、僕の視界に四人の女の子の姿を捉えたからだった。


目の前には夜景が映し出された大きな窓、そしてこちらを四者四様に見つめている四人の女の子達。


夜景の光を纏った女の子達は、すごく幻想的で見とれてしまう。


って、待てぇい!


見とれてる場合じゃないぞ!


どゆこと?

このいきなりの展開は!?

これって……。


「れ、蓮これって?もしかして……」


「前に言っただろ?合コンするぞって!だから今日、決行したんだぜ!菊女と合コン」


してやったり!と言うように、顔をニヤリと歪める赤い悪魔。


だよね…やっ、やっぱり合コンですよね!?

誰が見ても分かるよね。

しかも相手は、菊女ですってぇ!?


今この瞬間、聖蘭男子四人と千代菊女子四人の他校交流親睦食事会……端的に言えば合コンが幕を開けた。

侠の闘争の場編、本格始動しました!


新キャラ……しかも女の子四人登場させちゃいます。


さて、聖蘭四人組とどう関わるのか……魅力的な話を書けるよう頑張ります!


コメントや評価をお待ちしています!


和紙でした!


では!!


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