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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
58/70

五ヶ所目 2

蓮を先頭に、僕ら四人は校門を出てバス停に向かっている。


「おらおら!いくぜ野郎ども!この蓮様に付いて来いや」


威勢よく手をパンっと鳴らし、高らかに叫ぶ蓮。


うほっ!

い、いつも以上にテンション高いなぁ……。


さてさて、どこに連れて行かれるのか。全く見当もつかない。


まぁ、楽しめるのは間違いないけど!


久しぶりの四人での〈お戯れ〉だし。


二人が険悪ムードにさえ、ならなければ……だけど。


歩きながら、四人で他愛ない話を交わす。


「そいえば……報告があります」


花君が控えめに手をあげる。


「発言を許可する、ハナ」


「ちっ、阿呆が」


蓮に向けての舌打ちが、大河君から放たれる。


「ちょっと前に、違うクラスの女の子にアドレス聞かれちゃったんだ」


ふむふむ。

最近、花君が他のクラスの女の子から携帯のアドレスを聞かれたのか。


……えっ何?


最近……アドレス聞かれちゃたんだ。ですとぉぉお!


「おおぉ!初耳だせハナぁ、マジかその話」


蓮が花君の肩にガバッと組みつく。


「うん……この前さ独りで廊下に居た時に、女の子が走ってきてさ。ビックリだよ」

「かぁあ!羨ましいねぇ。んでさ、誰?何組?顔は?スタイルは?何系?どんな……」


「落ち着け、阿呆。花が困惑しているのが見えないのか?」


大河君が、蓮をたしなめるように目を細める。


「これが落ち着いて居られるかぁ!?ダチが乙女を恋の迷宮に叩き落としたんだぜ?うら若い乙女だぜ?どんなんか、タイガだって聞きたいだろ?オースケ、お前も聞きたいよな?」


多分、手をワラワラさせるって言うのは、今の蓮がしてる動きなんだろうなぁ。


って、解説してる場合じゃない!


「は、はぃ!僕もぜひ聞きたい!」


もちろん手を高々と上げる。

手をあげてしまう衝動にかられた結果だ。


「やれやれ……全く。恥ずかしいヤツらめ」


大河君が顔をしかめ、小さく笑う。


彼のこの顔に、どこか優しさを感じるのは、僕だけでしょうか?


……って、気づけばバス停が目前ではないかぁ!


バス停近くで手を高らかに上げながら歩いてる、僕って……。


あぁ、やっぱり。


反対側のバス停の人から僕に何やら生暖かい視線がぁ。

「あわわ……落ち着いて蓮。欧介君ったら分かったから、手を下ろしてよぉ。うぅんと貰った紙が鞄に……あっ、あれ」



鞄に手を突っ込みかけた花君が、何故か唐突にバス停を指差す。


「おいおい、ここでお預けかよ?お預けなら昨日、散々ユズに……って、おっ!オースケ」


蓮が何か口走りながらバス停を見て、僕に向き直る。


「今日は、騒がしい夕暮れになったな」


大河君が、何かを楽しむような笑顔を浮かべる。

「えっ何が?何か特別なモノが見えたのかな?……何も特別なモノなんて……あっ、あれは」


蒼ちゃんがバス停に居た。


さっきは、人の陰に隠れて見えなかったが今はハッキリと確認出来る。


ぽぉーっと僕が蒼ちゃんの姿に見取れていると、蓮が僕の目の前に回り込んだ。


「ここからは、オースケが一人で歩いてくれや」


滑るようなステップを踏み、脇に避ける蓮。


こっ、この動きは……ト〇


あぁ嬉しくて変なテンションに。


いやでも、一人って?

何故にぃ?


「ほぉお〜そうゆう事ですかぁ。ナイスですねぇ、偉いよぉ」


花君が背伸びをして、蓮の頭を撫でる。


だが今は、そんな花君のキュートな行動を気に留めてなんていられない。


「ナァハハ!ダチの色恋を手助けしたまでよ。ハナの手は柔っこいな」


ほんわかムードの二人。


でも今は、ほんわかムードなんて気にして居られないんだぁ!


混じりたくたって、気にして居られないんだぁ!


「阿呆のクセに、珍しいな。……行くのか欧介?もうバスの到着時刻が迫っているぞ」


大河君が、金無垢の腕時計で時刻を確認する。


「うえぇっ、行っちゃって良いんですか?い、今から遊びに行くんじゃ?」


「イッて来いや、オースケ!あぁでも最後までは、蒼っちとイクなよ!お前がイッて良いのは、泉橋までだ」




う、うん?


明らかに一部、変なイントネーションが入っている。


ま、まぁ気にしないでおく。


「泉橋で降りれば良いの?……割とココから近いね」


バス停、2つ向こうではないか!?


あ……あんまり蒼ちゃんと話せなぁい。


ちくせう。


「ほらほらぁ、一時の幸せを味わってきなよぉ。欧介君」


「わぁ、わぁ花君!押さないで、ちょ、ちょい」


花君の柔らな笑顔には、不釣り合いな強靭な力で蒼ちゃんの元にグイグイと押されていく。


「ほらぁ、一丁上がりぃ。ばいばぁい欧介君。また後でね」


最後にゆっくりと、しかし力強く突き出され蒼ちゃんの前に躍り出た。


いや、飛び出したの間違いか。


可愛い顔して、すっごいなぁ……花君。


「え……えぇ、欧介君?」


「おっ、お疲れ様ぁ、蒼ちゃん」


キョトンとする蒼ちゃんの顔を見つめていると、バスが定刻通り到着した。

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