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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
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四ヶ所目 28(大河&花)

 聖蘭の中間考査まで、あと数日。

……だから何だと言うのか。


日頃から勉学に励んで居れば、恐れおののく必要などない。


学友達の慌てふためく姿を見ると、下らなくて笑いがこみ上がる。


下らない空間。

下らない会話!

下らない汚物ども!!


お前らのような生きる価値のない存在達と同じ空気を吸うだけで、吐き気がする!


……以前の俺は、いつもこう思っていた。


だが今は……違うのかもしれない。高校に入るまでの俺は、春日の家訓や父の教えを盲目に信じてきた。


幼い日の別れ以来、他人を見下し踏み台としか思えなかった。

存在する価値すら無いとまで思った。


俺に釣り合う他者など居ない……まして同等の者など必要無いと思っていた。


他人が俺の役にたつわけが無いと思っていた。


そんな内面を、ひた隠しながら他人に善い人間を演じる日々。


だが、高校に入って俺の価値観が少しずつ変わってきた。

花、蓮と再開し。

欧介と出会ったからだ。約束を果たし返ってきた、花。


幼い日以来、絶縁状態からまた向き合う事が出来た蓮。


その二人を繋いで、俺に結びつけた欧介。


アイツと知り合ってから、何だか自分が変わっていく気がする。


春日の血と教えが全てでは無いのか?


そう考えるようになった。


だが今はまだ答えは出ない。



「もぉ、大河君聞いてる?」


頭の中で思案を巡らしていると、花の不服そうな声が耳に入った。


「んっ、何だ花?」


「やっぱり聞いてないなぁ!この最後の化学式はどう解くのか分かんないよぉ」


俺は今日は花と勉学に勤しんでいる。


俗に言うテスト勉強ってやつだ。


俺は終えているが。


「すまない、考え事をしていた」


「もぉう、何回も呼んだのにぃ」


「耳に入らない程に深く考えに囚われていたんだ、すまない。……その化学式は……」

花に解き方と意味を教える。


「ほぉほぉ、うーん……へぇー!わあぁ!わかったよぉ、ありがとう大河君」


喜びを全面に押し出す、花。


「さすが、大河君。頼りになるなぁ」


花以外に、こんな無垢な笑顔を出せる人間が居るのだろう。


いや滅多に居るはずがない。


「そういえば、今日は欧介君が、なんとなんと蒼ちゃんと二人で勉強してるんだよぉ」


「そうか。ふっ……だから帰り際、挙動不審だったわけだな」


隠せないヤツだな、アイツは。


「そうだよ。欧介君、喜びとドキドキで顔が赤くなってたからさ」


まるで自分の事のように、楽しそうに話す花。


こうゆう人間は、本当に価値が有る。


居るだけで安らぎや癒やしを与えられる人間。


花は昔からそうだ。 幼い日の思い出の花も、いつも俺に笑顔を与えてくれていた。


「あとは、欧介次第だな。上手く行けば良いが」


「だねぇ。上手く二人の絆が深まって欲しいよ。。心からそう思うなぁ、僕。応援してるんだぁ」


「そうだな。そうなれば良いものだ」


「もちろん、蓮と大河君も応援してるよ。三人は大切な友達だから」


どこから取り出したのか、カラフルな手旗をパタパタと振る花。


「ありがとう、礼をいわせてもらうよ」


俺が女性と付き合う等、無いに等しいが……口には出さないでおこう。


「でも……三人で最後。僕はもう他の人の事は応援したくない」


唐突に笑顔が陰った。


その様子から今朝の一件を思い出した。


花は何を心に秘めているのかは分からない。


だがその秘めている事が、花の心に深く根付いているのは確かだ。


「……幸せを壊すの嫌だからさ。迷惑かけたくないから……だから、三人の事を応援するのも、本当はちょっぴり怖いな」


いつの間にか、元気良く振られていた手旗は消えていた。


花の明るい笑顔が消えたように。


「それは好きなようにすれば良い。花の好きなようにすればな」


「……だが、俺を含めて欧介も蓮も花ちゃんに応援されるから、前向きになれるんだと思うよ」


口をついて、心に湧き出した言葉が出た。


最近は特にそうだ。


無意識に心に秘めた言葉を口に出してしまう頻度が増えた。


悪い気はしないのだが。


「そうだね、僕のしたいようにすれば良いよね。……うん、最後なんだから」


再び花の顔に笑顔が輝いた。


「ありがとう大河君。何だか心が軽くなったよ!よぉし今以上に三人を応援しちゃうぞぉ、決ぃまり」


「ふふっ、その意気だよ、花ち……花」


「あぁー!さっきは花ちゃんって呼んでくれたのにぃ。照れ屋さんだぁ、大河君」


「ぐっ、そ、そうか?」


……いい加減この呼び名をなんとかしなければ。


俺は断じて照れているわけでは無いんだ。

これも無意識で出てしまうのだ!


そう伝えようとした矢先、花がまた手旗を降り出した。


「さぁて、大河君から元気の出る言葉を貰ったし、もう一頑張りするぞぉ。大河先生、よろしくぅ」


「り、了解した」


この呼び名の恥を、阿呆なアイツに聞かれてなくて心の底からから良かったと思った。

気をつけねばな。


居ないハズの阿呆が、俺を冷やかす不愉快な言葉が耳に聞こえた気がする。


気のせいで有るが、無性に腹立たしい。


……まぁ良い。

落ち着かねば。


「ううぅ……これは、なんだろぅなぁ……大河先生ぇ助けて」


また花が困り顔で俺に助けを求めてきたので、再び化学式を紐解いていった。


こんな時間を過ごすのも、最近は悪くないと思えるようになった。


だからこそ、強く想う。


父さん。

貴方の言う春日の血、春日の教えがどれ程尊いモノか分からない。


本当に万人は……多くの人間は生きている価値のない愚民共なのか。


本当に春日一族が世界を支配出来る、一握りの支配者的立場の人間なのか。


分からない。


だからこそ、俺は心に決めた。


これからは〈春日の血〉、〈父の教え〉に固執しない俺自身の目と心で見極めて答えを出す。


これからも人間の真価を見せてくれた、三人に関わりながら。

テスト勉強編終了!


いやぁ、時間掛かりました(苦笑)

自分は本当に亀並みの更新だと痛感しています。



さて、次回からの上手な修正液の使い方は……。




未定ですね、はい。


ですが、必ず書きます。


和紙でした、では!!

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