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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
55/70

四ヶ所目 27(蓮)

久しぶりの更新で、すいません。

今回は蓮と柚夏の話です。

 今頃、二人は上手くやってんだろか?


オースケと蒼っち。


太陽が地平線の彼方に消え、夜の気配を窓の外に感じながらダチへの想いを巡らせる。


まぁ俺が心配しなくても、オースケなら蒼っちと楽しく過ごしてるだろな!


でもアイツのテンパってる姿が、目に浮かぶぜぇ。


ハハハァ!


っとお、そろそろアイツが来る時間か?


時計を見ると、もう間も無く18時になる。

今日は幼なじみの柚夏が勉強を教えにくる。


幼なじみ。

独り暮らしのマンションで勉強。

夕暮れのイケない×××。


おぉい!

完全にロマンスが生まれちまう展開だぜ!?



なぁんてな。

そんな展開は俺とユズには無ぇよ。


「蓮!今日は家に行ってあげる!テスト勉強を見てあげるんだからね!いきなり蓮が赤点なんか取ったら、蓮のお母さんに申し訳ないんだからっ!」


実際は、ユズが一方的な調子で、勝手にぬかしやがっただけだ。



母ちゃん……恨むぜぇ。

ユズにヨロシク頼んでくれた事をよぉ。


ユズは、ガキの頃から俺に説教をしてきやがる。


高校でも会う度に、有り難いお小言を聞かせてくれる。


お馴染みの、腰に手を据えるスタイルで。


何だっつうの!

俺は親のカタキか?

末代までの祟りか?


もう幼なじみってか、腐れ縁だ!


まぁ良い意味でも、悪い意味でもさ。


そうこうしてる内に、玄関のドアがドガバガとかなり乱暴に叩かれた。


あぁ、噂をすればなんとやらだな。


「はい、どちらさん。ちなみに新聞の勧誘なら遠慮する。間に合ってるんで!あとピザと蕎麦は頼んでないから、ドアは開けられない」


8割の確率でユズだと思うが、取り敢えずインターホンに向かって言葉を投げかける。


もしかしたら新聞社や何かのデリバリーの可能性も……。


「私だよ、ユズっ!」

その可能性は露と消えた。


あぁ知ってるぜ!

そんな意味を込めて舌打ちをかました途端、ユズがギャーギャーと騒ぎ出す。


「もぉ!早く開けてよ。女の子を玄関に立たせておくなんて、本当にデリカシーないわね!バカ蓮のくせに!早く開けてよ、開けなさいよ!!玄関先に居たら恥ずかしいでしょ!」


恥ずかしいとか言いながら、よく大声でドアぶん殴れるよな。一抹の疑問を抱えながら、買い言葉を返す。「うるせぇなユズ!ドアがぶっ壊れちまうだろ!ったく何しに来てんだよ」


もう一度舌打ちして、ドアを開けるとユズが腰に手を据えて、ギュッと眉間にシワを寄せて俺を睨んでいる。


ハハッ、この顔を見るとデコピン喰らわせたくなるぜ。


「バカバカバカー!蓮!!早く開けなさいよ。来るまで暗くなりかけで怖かったんだからね、私!……部屋に入るから退きなさいよ」


俺の腹をグッと押し退けて、部屋に入るユズ。

いや……押し入ってきたの方が、正しいか?


「あぁもう、男臭い!部屋を丸ごと洗濯しちゃいたいわ。今度消臭剤買いに行くんだからね、私と二人で!あぁもう、部屋も散らかってるし!」


「お、おい!入ってそうそう、あんま触んないよ」


あんまり物色されるとと、秘密の弥生ちゃん(大きいお友達Ver)シリーズが見つかっちまうぜ!?


「良いじゃない、減るもんでも無いんだから。それとも何よ!何かあるわけぇ?」ギュッと目を細めるユズ。


あぁクソ!

この小生意気な表情を見ると、ユズの頬を堪らなくつねりたくなるぜ!


そんな衝動にかられながら、俺は。




やっぱり頬を抓ってしまった。


左右からの感触を楽しみながら、蹂躙するうにグリグリとな!


だけど過度な痛みは感じさせない。

そんな案配のグリグリ。


まぁ仕方無ぇよ、我慢は俺自身の体に良くないし。


抓られた時のユズの反応が、楽しくて堪らないんだからさ。

「ふぅがぁー、れん!?やめへよ!やめなぁはい」


「おぉ?何だって?ふぅがぁーしか聞こえないぜ」


「ふ、ふぅがぁー!はいてぇよ、ふぉんなほこにふぉんなこほすふなぁんふぇ!(最低よ女の子にこんな事するなんて!)」


とまぁ、こんな状態でも何となくユズの言葉は分かる。

俺って、将来はバイリンガルってか!?


「最低って、誰の事なんだろうな?ふぅがぁーってヤツの事かな?ハハッ」


「きはいきはい!ふぇんなんふぇ、らぁいっきはい!ふっくぅ(嫌い嫌い!蓮なんて大嫌い!うっぐぅ)」


嫌い嫌いと連呼しながら、悔しそうに涙を浮かべるユズ。


ヤベッ!

もう泣きやがった?


こんなにユズって泣きやすかったか?


「な、泣くなんて卑怯だぜ。泣くことないだろよ」


急いで、両頬を弄んでいる指を離す。


「ア、アンタのせいでしょ……うぅぅ。」


俺に抓られ、桃色に染まった頬にユズの涙が伝っていく。


ガキの頃から、何回こんなやりとりが有ったんだろうな。


何度見ても、見飽きねぇな……何度見てもよ。


「悪ぃ悪いユズ。つい……なぁ。分かんだろ」


「くううぅっ分かるわけないでしょ!一方的にホッペをグリグリされて……全然分かんないわよっ!何回目よバカ」


ハハッ!数なんて数えてねぇよ。


なんて軽いジョークを決めよう思った時、眉間に力を込めて更に涙目で睨むユズの顔が目に入った。


そんな顔で睨むなよ、仕方ねぇな。


「ち、ちょっ……蓮!何よぉ」


「ほら動くなっての、バカ。……あんまに睨むと眉間にシワ出来ちまうぞ。涙拭いてやるから許せよ、柚夏」


たなごころで優しく涙を拭いてやる。

ハンカチなんて要らねぇ。

涙を拭くのは、やっぱり自分の掌だろ。


ユズにはガキの頃から通じる、俺流の謝罪の言葉ってやつだ。


「し、仕方ないわね。許してあげる!ただしこれが最後の最後だから、次は無いんだから」


「おうサンキュー、ユズ。次も楽しみだなぁ、フニフニぃてよ」


「ふ、ふーんだ!もし次したら……」


まだ涙で艶やかな瞳で、悪戯っぽく笑うユズ。


良い顔するじゃねぇか。


「もし次したら、柳さんから受け継いだ延髄切りだからね」


「おいおい、柳さんの延髄切りとは穏やかじゃねぇな。だけんど、柳さんとは懐かしいぜ」


やなぎ 湊一そういち


通称、りゅうさんとは、俺の実家に住み込みで働いている渋い兄さんだ。

親父の右腕で、親父がもっとも信頼してる。

昔はかなりのアウトローだったらしいが……今は落ち着いたらしく、俺の事を理解してくれてる大切な家族だ。


「ねぇ懐かしいでしょ。今日は勉強の合間にこの話をしてあげようと、思ってたんだから。でも私、蓮に虐められたからなぁ……たくさんねぇ。ふっふっふ〜ん!どうしよかなぁ」


ちっユズの野郎!

もったいつけやがって。

クソ、久しぶりに中村一家の話が是が非でも聞きてぇ。


こうなったらご機嫌取りするしか無ぇな。


俺の本気を見せてやるぜ。


「そうなんだ。まぁ俺が蒔いた種だからな……でもよ」


ユズの目を見据える。


「今日は楽しい1日の終わりを迎えられるな。もしかしたら久しぶりに実家の話も聞けるし……ハハッ!今からはユズと二人で勉強出来るんだしな。もしかしたら幸せな1日って、今日みたいな日の事を言うんだろな」


「ちょ……蓮、な、何よ急に」


もう一息だな。

柚夏ぁ敗れたり!


「あぁ、ゴメンな……何か急に想ったんだ……幼なじみの柚夏と同じ学校でホントに良かったなぁ!って。俺はユズに感謝してるんだぜ」



声を低くして、照れた表情を浮かべてフィニッシュだ!


「バカ……私だって蓮に……って。何よぉ!も、もぉいいわよ」


プハッ!

ユズ、一丁あがりってか!


「し、仕方ないから教えてあげる。この前ね、柳さんと太一っちゃん、シゲ君に会ったんだ。三人とも蓮の事、心配してたわよ」


「ハハッ、三人と会ったんだ。偶然だなぁユズ。あの三人、ガラ悪いからなぁ。目立つよな」


太一とシゲ。


俺を慕う可愛い奴らだ。二人も俺の実家に住み込んで生活してる。


今は中三だったな。


まだまだ血の気が多くて、ガラも言葉使いが悪いから誤解されるが、俺にとっては可愛い弟みたいな奴らだ。

弟みたいじゃないな、弟達だぁ!


「柳さんも太一もシゲも何だか懐かしいぜ……ははっ!三人とも元気なのか?」


「蓮を心配するぐらいなんだか、元気に決まってるじゃない!」


ふんっと鼻を鳴らし、腰に手を据えるユズ。


「ははっ!確かになぁ!違いねぇ」


「でしょ!あの三人……あっ、蓮を含めなきゃ。アンタ達、四人が元気が無い時なんて無いわよ」


「それは言い過ぎだぜ、俺はデリケートで壊れやすい……」


「はいはぁい、そろそろテスト勉強始めるわよ」


「……デリケートなんだぜ、ウサギみたいに」


まぁ良いか!

よっと、そろそろ準備するべ!


折り畳み式のちゃぶ台と二枚の座布団を床に並べ広げ、あっと言う間に勉強スペースの出来上がりっと!


「さぁ、聖蘭高の入試の時みたいにじっくり教え込んであげる!」


「えっ、ちょい待てや!?じっくり教え込んであげるって……」


ユズの不意打ちに、素でドキっとしたぜ。


「ちが、変な意味じゃない!バカ、バカぁ、バカぁぁあ」


「お、おい!もう分かったから、そんなにちゃぶ台殴んなよ。割れちまうぜ……って!?」


はあぁぁあぁ、木目に変な割れが入ってる。


「ア、アンタが変な事言うからよ」


「もともと、お前が言ったんだろうが!」


「ちゃぶ台ぐらい何よぉ」


ちゃぶ台ぐらいって……これ母ちゃんの嫁入り道具なんだぜ!


もし見つかったら……俺、親父にアボ〜ンされちまうよ。


「いつまで割れた部分を触ってるなんて女々しいわよぉ!ほら、勉強するんだから」


俺の手を掴み、強引にシャーペンを握らせるユズ。


「わ、分かったよ。やるっうの」


「なら、よろしい!」


ユズは満足げにそう言って、自分のノートをカバンから出した。


「おっと、その前に聞き忘れだ」


俺とした事が、すっげぇ重要な事を忘れてたぜ。


聞いておかなきゃならない事だ。


「ミカンは、元気にしてるのか?」


問いを声に出した途端、振り返るミカンの柔らかな笑顔が脳裏に浮かぶ。


俯いて自分のノートを捲っていたユズは手を止めて、俺の目を見つめ、そして微笑んだ


「美柑姉、元気だよ」


「そっか!元気なら、良いんだ」


「さぁ勉強開始なんだからぁ、ビシビシいくわよぉ!覚悟しなさい蓮」


こうして俺とユズの二人だけの勉強会の火蓋が、今切られた。


明日の朝、俺が俺だと認識出来ることを願うぜ。


欧介の話の他に、蓮の話も始まりそうです。

花や大河も動かして行きます。


評価やコメント待っています。


和紙でした。

では!!

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