四ヶ所目 24
作中に下ネタが盛り込まれています。
苦手な読者様、すいません……。
午後からの退屈な授業、かったるい帰りのSTもやっと終わりだ。
今STを締めくくる号令を、高鳴る鼓動を抑えながら言い終えた。
いつもなら他愛もない話を蓮や花君と交わして帰るが、今日は違う。
そう違うんだ。
蒼ちゃんと、お勉強する。
二人だけで。
二人だけの。
二人にとってのハジメテ。
は、初めて!?
蒼ちゃんとの初めて……。
放課後、二人しか居ない教室。
夕日に照らされ、向かい合う二人。どこからか、渡り鳥の鳴き声が切なげに響く。
僕は、蒼ちゃんの華奢な肩にゆっくりと手をかける。
彼女の瞳は、心做し(こころなし)か潤んでるよう見えた。
「欧介君……この問題の解は」
「黙って」
蒼ちゃんを見つめながら、ゆっくりと背中に手を回す。
「蒼ちゃんの……体を解いてみたいんだ。ここからね」
セーラー服の下から手を入れ、ブラジャーのホックに指を掛ける。
切なげに吐息を漏らす、蒼ちゃん。
「優しく……解いて」
またどこからか、渡り鳥の鳴き声が聞こえてきた。
いや。
違うな。
僕が聞いたのは、蒼ちゃんの甘美な鳴き声だ。
っうあわ!
非道い……あまりに非道過ぎる。
いくらなんでも妄想を膨らませ過ぎでしょうよ!
よくもまぁ、しょうもない妄想が出ますよね。
我ながら感心……してる場合じゃない
。自己嫌悪に陥っていると、視界の端に花君と蓮が此方に歩いて来るのを捉えた。
正直あまり話したい気分では無いけど、仕方がない。
「お疲れ様ぁ欧介君!ついにこの時間が……ってどうしたの?顔が真っ赤だよ」
花君が、不思議そうな表情で僕の顔をぐっと覗き込む。
同時に彼の柔らかそうな前髪が少し揺れた。
目の前でパチっと瞬きする花君の仕草に心拍数が乱れる。
「は、花君!ちょっ、ちょっと顔が近ひよ」
いい加減、花君の仕草でドキドキするのは無くしたい。
だけど無理だぁ、だって可愛いんですもん!
あわぁわ、誰かに聞かれたら絶対勘違いされる言葉だ。
「ははっ!楽しみで堪らないってのは分かるけどさ、落ち着けやオースケ」
僕の火照った顔を見て、楽しげに言う蓮。
「にしても羨ましいねぇ、蒼っちに手取り足取り教えられるなんてな」
黒板を丁寧に消してる蒼ちゃんの方を見て、楽しげな笑いに拍車がかかった。
「て、手取り足取りって!僕は、ただ数学を教えるだけだし。そりゃあ教えてみたいけど……手を取り、足を取り」
くうはぁ!
蒼ちゃんの足とか、かなり萌える。
白くて柔らかい足。
考えただけで食んでしまいたい。
「そ、そうなんだ……突然のカミングアウトに僕は少しビックリだよ。欧介君、とりあえず落ち着こうね」
明るく豪快に笑う蓮と対照的に、僕を心配そうに見つめる花君。
花君には悪いけど、落ち着けと言うほうが無理だよ。
今はね。
不意に蒼ちゃんの姿を視界に捉える。
蒼ちゃんは、もう黒板の大半を消し終えていた。
一生懸命消している蒼ちゃんの姿は、ずっと見ていても飽きないだろうな。
高い所に書かれた文字を消そうと、背伸びをする蒼ちゃんがとても愛しい。
何だか、一生懸命な彼女の姿を見ていたら心が穏やかになって、不純な気持ちも消えた。
だいたい不純な気持ちを抱く時点で、オカシイけど。
「花君もう落ち着いたよ。心配させてゴメン」
「ううん謝らなくても良いよぉ、僕は何もしてないんだしさ」
花君は僕の言葉に少し驚いた様子だ。
そりゃそうだろうな、真っ赤に興奮してると思ったら突然落ち着いてるんだからさ。
「でも心配させるぐらい、舞い上がってたし」
事実、有頂天でした。
「まぁ分かってくれたんなら、良しとしまぁす。今回だけはねぇ」
優しく笑う花君。
彼の笑顔は、死ぬまでに見たい笑顔ベスト3に入っていたりする。
だって元気が貰えますから。
もちろん蒼ちゃんの笑顔の方が少しだけ上に位置してますが。
「さてとぉ、僕と蓮はそろそろ帰るね。欧介君、蒼ちゃんと仲良く勉強するんだよぉ」
親指をクイッと立てて笑う花君。
花君の手にそびえ立つ親指には、どんな意味が有るのかは分からないけど、何となく僕も親指を立て返した。
「蒼っちの前で立てるのは、親指だけにしとけよ!」
握り締めた拳を僕の下半身に突き出す蓮。
「おわぁ、蓮!?それは意思では……抑えられない現象だから」
「コ、コラぁ!蒼ちゃんが居るんだし下ネタ禁止だよ、二人共ぉ」
胸の前で腕をクロスさせて、ホッペを膨らませる花君。
もぉう可愛いぃ…じゃなくて、声が大きいよ花君!?
今の話が聞こえちゃうじゃん、蒼ちゃんに。
「あ、はぁい。森島君、私がどうかしましたか?」
黒板を消している体勢から振り返る蒼ちゃん。
あぁ、やっぱり聞こえてますよね。
「はははっ。ハナぁ声がちょっと大きかったな」
イタズラっぽい笑みを浮かべて、蓮は見るからに中身が入って無さそうな鞄に手をかけた。
ま、まさか?
「えぇーそんなに声大きかったかなぁ……僕」
花君もいつも学校に持ってきている橙色のレザーバックに手をかけた。
この状況で?
「あぁ!ちょっとばかしな。でもオースケが何とかするさ。じゃな、後で首尾を教えろよオースケ!蒼っちぃ、また明日ぁ」
赤い彗星が流れかのように駆け出した蓮。
「まっ、待ってよ蓮ちゃん!?ゴメンねぇ欧介君。蒼ちゃんを上手く誤魔化しておいてね。そうゆうの得意だから大丈夫だよね!夜にメールちょうだいね。蒼ちゃん、バイバぁイ」
フワッとシャンプーの良い匂いを残して駆け出す花君。
「はぁい?え、えぇー」
二人共、言いたい事を早口で捲くしたてて逃げた……だとぉ!?
黒板を消し終わった蒼ちゃんは、肩に黒い革製の鞄を掛けてハンカチで手を拭いながら、ゆっくりと近付いてくる。
「なんだか、二人共凄い勢いで帰っちゃいましたね。あのぉ欧介君、さっき森島君が私を呼びませんでした?あと何かを立てるとか、立てないとか」
首をかしげ、やんわりと微笑む蒼ちゃん。
ナニかを立てるとか、立てないとか。
彼女の口から出たフレーズに、心臓が暴れる。
「あ、蒼ちゃん。黒板消しお疲れ様です。ふ、二人は買い物に行ったよ。とにかく急いでたみたいでさ。二人はぁ、今日はゲームの記録を……立てるとか言っちゃってたんだよ」
「そうなんですかぁ。今から買い物とゲームだなんて、楽しそうですね」
夕日に照られている、蒼ちゃんの瞳は太陽が溶け込んだように、鮮やかに輝いている。
「そ、そうだね。二人はいつも元気だからさ」
「はい、そうですね」
「うん」
僕と対面するように机の向きをかえる、蒼ちゃん。
って、ボーっと見とれてないで手伝えよ自分。
「でも私は……」
鞄から数学の教科書と問題集を取り出して椅子に腰をかける蒼ちゃん。
「欧介君が、一番元気だと思います」
「蒼ちゃん……」
このまま。
太陽が地平線に沈みかけてる、今のままで時間が止まれば良いのにな。
そんな想いを胸に秘めながら、蒼ちゃんに
「ありがとう」を伝えた。
僕たちだけの勉強会が、今始まった。
最近傾向として、下ネタが入ってしまいます。
爽やかなラブコメになるよう頑張ります。
コメントや、評価、御指南をよろしくお願い致します。
和紙でした!
では!!