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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
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四ヶ所目 20

 「おはよ!花君」


僕は昨日の出来事を三人に話す為に、花君に声をかけて大河君の席に向かった。


何故、大河君の席かと言うと彼以外の席にすると大河君に伝わらない気がするし、それ以上に彼が自分から僕の元へ来てくれる確率は低いから。


まぁ、小さな気遣いってヤツです。


「おはよう、大河君」


僕は爽やかさを全面に出して声をかける。


彼は今日も、凛としたオーラを放っている。どうやったら、こんなに凛々しい雰囲気を出せるんだろ?


出来ることなら教えて欲しい。


「今日は朝から元気だったな」


軽く笑みを浮かべる大河君。

普段あまり笑わない大河君の笑顔を見たら、女の子は誰でもドキドキだろうなぁ。


男の僕もドキドキなんですから。


そっちの気は無いんだけど。


「まぁね。昨日良い事が有ったからさ」


「良い事?あぁ、花から聞いてるぞ。楠木と電話で話したんだろ?」

大河君は一瞬思い出した様な表情にしたけど、すぐに真っ直ぐな視線を僕に向けた。


温かみの有る視線に僕の心も温まる。


「ゴメンね欧介君。我慢出来なくて、つい二人に言っちゃったんだ、僕…」


花君が舌をペロッと出して申し訳なさそうに笑う。


「良いんだよ、謝らなくてさ。気にしないからね」


まぁそのペロッと出してる、可愛い舌に免じて許してあげよう。


それに、こんな可愛い仕草は、花君だから、こんなにも可愛い感じなんだろうな。


「おぉっ優しいですねぇ」


彼はニコニコと笑って、両手で僕の右手を優しく包んだ。


ドキッ


高鳴る胸の鼓動。


いかん。


いかんぜ、花君は男!

彼は正真正銘の男!


それに僕には蒼ちゃんという心に決めた女性が。


「でさでさ詳しく教えてよ、昨日の事」


自分の中の越えてはイケない境界線を、必死に越えないように耐える僕を知るよしも無く、花君はお決まりの笑顔で僕を見る。


「う、うん。もちろん話すよ!その為に学校に来てる様なもんだからさ」


「ふっ、学級委員が言う言葉だとは思えないが、聞こうか」


大河君は鼻で笑いながらも、僕の話を聞いてくれるみたいだ。


「よぉ!お前等、何集まってんの?」


多分トイレから帰ってきた蓮が、髪をイジリながら僕達の元へ歩いてくる。

「あれぇ、どこ行ってたの?」

花君が不思議そうな顔をしながら蓮に向かって手を振る。


「ナイス質問だ、ハナ」


蓮は僕達の元に向かいながらニヤリと笑みを浮かべる。


「朝の仕事をバッチリ決めてきたんだ、スカッっとしたぜぇ」


腹部をパンパンと叩きながら、豪快に笑う蓮。


ちなみに、蓮の腹筋は鍛えているらしく引き締まっている。


僕は、蓮の生腹筋を見る度に自分の腹と取り換えられたらと、密かに願ってたりしている。もちろん大河君も引き締まった肉体を持っているし、以外なトコロで花君も中々筋肉質だ。


それに比べて、僕は…。


おっと、何落ち込んでるんだ。


気付けば僕の目の前で二人の口喧嘩は火蓋を切られていた。


「下品なヤツ」


大河君は、かなり冷たい視線を蓮に浴びせた。

おっと、大河君の体から凍気が溢れてきてる。


教室の気温が下がった気が…。


「下品だ?聞き捨てなんねぇ!」


おっぷ。


今度は蓮の体から闘気が溢れてる。


教室の気温が急上昇してる様な…。


「じゃあ聞くけどなぁ、オメェはしねぇのかよ?」


蓮は、両眉を吊り上げ声を荒げる。


「排泄は、人間なら当たり前の生理現象だが?」


大河君は、彫刻みたいに形の整っている鼻をフンと鳴らし笑う。

でも目は笑ってない様な気が。


「あぁ!?何、小難しい事言ってんだよ」


「小難しい?ふん!この程度の話も理解出来ないのか。笑わせるな!言っておくがこれ以上、下劣な話に付き合うつもりは更々無い」


「んだと、てめぇ!もう一回言ってみろ」


「お前にはが理解出来なかったのか?ならば、もう一度言ってやろうか?」


蔑げすむ様な氷の微笑を浮かべ、大河君が立ち上がった。


その事で戦いは秒読みになった。


ヤ、ヤバイ!

ってまたかよ…この展開。


この二人は、本当に仲が悪いんじゃないかとマジで思う。


いくらなんでも口喧嘩以上、殴り合い寸前のギリギリな状態に発展し過ぎじゃないか。


「ちょ、ちょっと止めなよ二人共」


あぁほら、花君がオロオロしてる。


って僕も負けず劣らず、オロオロ状態ですけど。


「は、花君の言う通りだよ。二人共落ち着いて僕の話を聞いて…」


オロオロ状態の花君とオロオロしながら二人を仲裁していると、誰かに肩を優しく叩かれた。



なんだよ、こんな時に。


イラッとしながら叩かれた方に振り返ると、心配そうな顔をした蒼ちゃん立っている。


「あ、おいちゃん」


彼女が後ろに立っている事に驚き、僕は自然と体を彼女の方に向けた。


「あのぉ欧介君、二人はどうしたんですか?」


蒼ちゃんが僕の後方で口論している二人を不安そうな顔をして見る。


そんな不安そうな顔をした蒼ちゃんも、僕は大好きです!


いや、この状況で何を考えてる?


「分かんない、急に口喧嘩が始まっちゃって」


「そうなんですか…。普段は仲良しなのに」


いや、そんな事も無いでしょ。


そんな言葉が口をついて出そうになったけど、危ういラインで呑み込んだ。


異様な静けさに気付いて辺りを見渡すと、クラス中が大河君と蓮の口論に注目している。

三人の方を振り返れば、花君が一生懸命止めに入っているけど二人は全く眼中に無いみたいだ。


まさにアウト オブ 眼中!


この表現の古さに、皆との歳の差を改めて感じたり。


んな事は、どうでも良いって!


いよいよヤバくなってきた。


もう一時間目が始まっちゃうじゃん!?


教師にこんな場面見られたらどうなる?


四人とも呼び出し、くらちゃうよ!


元はと言えば、僕のせいでも有る…のかどうか分かんないケド、キッカケは僕なんだから何とかしなきゃ。


学級委員の影の薄い方だと思われてるのも、返上出来るし何より蒼ちゃんの前でカッコ付けたい!


今の二人の状態は恐いけど、友達だから何とかなるさ…多分。


それに花君も一緒だし…一緒だし何とかなるかなぁ?


決心が鈍らない内に実行しようと、僕は蒼ちゃんの方に向き直った。


「ぼ、僕が止めるよ!学級委員として、いや友達だかぁ」


「欧介君!」


僕の言葉を遮る様に蒼ちゃんが叫んだ瞬間、背中に大きな衝撃を受けて僕は前方に飛び出した。

もちろん蒼ちゃんの真正面に。


勢い良く飛び出した筈、なのに周りを流れている時間の定義を覆したかの様に感じる。


逆に蒼ちゃんが僕の方にゆっくりと近付く、そんな不思議な感覚に襲われた。


驚いている蒼ちゃんの見開いた瞳さえも、鮮明に確認出来る。このまま、どさくさに紛れてキス出来るかも?


不意に邪な考えが頭に浮かんだ。


が、そんな考えが達成出来るわけも無く、僕は蒼ちゃんに覆い被さる形でぶつかった。


勢いでバランスを崩す僕達。


とっさに蒼ちゃんを抱き締め、彼女が頭を打たない様に体勢を変える。


普段の自分からは想像出来ないぐらい冷静な行動に、自分自身かなり驚きだ。


胸の中に蒼ちゃんの体を抱き寄せる瞬間、きゃ。

と言う可愛らしい言葉と共にセーラー服越しに彼女の柔らかい体の感触が僕に伝わった。


その甘い余韻に浸る間も無く、鈍い音と共に僕の背中に痛みが走った。


床でなのか机なのかは分からないケド、頭も打ったらしく後頭部が痺れている。


音は一切聞こえない。あえて聞こえると言えば、鋭い音の耳鳴りぐらいか。


周りが静かなのは多分クラス中が、僕と蒼ちゃんに注目しているからだろう。


「あっ痛、痛った」

そう洩らしながら目を開けると、蒼ちゃんの栗色の頭が僕の腕の中に有る。


一先ず、蒼ちゃんを守れた事を確認して安堵した。


抱き締めている両腕から力を抜くと、蒼ちゃんの頭がゆっくりと僕の胸から離れた。


そして僕の顔をまじまじと見た。


その表情は驚いてる様な、照れてる様な何とも言えない。


顔と顔とのが、近い。


この距離なら、抱き寄せれば《キス》だって簡単に出来るだろう。


また《キス》したいという、邪な願望が心に流れ込んできた。


でもその願望に任せ、僕の身勝手な気持ちで彼女の唇を奪う理由も権利なんて、無い。


「大丈夫?」


キスというの甘く邪な誘惑を振り払い、蒼ちゃんに問いを掛けた。


「大…丈夫」


蒼ちゃんは、頬を桜色に染めながら僕の目を真っ直ぐ見つめ、ゆっくりと言った。


「良かった、蒼ちゃんが無事で」


「欧介君は?」


僕は、頭と背中を強打したさ。


そんな事を言うつもりは無い。


彼女を守りたかったから、僕が変わりになった。

ただ、それだけだ。


「僕の事は気にしないで良いよ。それより立ち上がれる?」


「えぇ…。あっ気付かなくてゴメン。重かったよね」


そう言い、蒼ちゃんは立ち上がる為身を起こす。


立ち上がっていく彼女を見ていると、太股の間から下着の色が、一瞬僕の目に自己主張した。


その赤と白のストライプのパンティを心のフォルダに保存した。


もちろんプライベート指定だ。


だけど、下着を見てから始まった瞬間からドキッと胸が大きく跳ね、止まらない。


その活発な心臓の動きにつられて僕の下半身も自己主張しそうだったから、慌てて立ち上がろうと体を起こした。




膝に力を込め、立ち上がる。


その気持ちとは裏腹に腰に痛みが走り、立ち上がれない。


痛みで顔をしかめていると、誰かが僕の顔の前に手を差し延べた。


その手の主は、目尻に涙を浮かべた花君だった。

お久しぶりです、皆様。


バレンタインが過ぎました。


私はビターが好きです。


コメント、感想、理由の有る酷評は、歓迎しています。


和紙でした。


ここで次回予告を。


次回は、花の涙の訳と欧介が蒼に数学を教えるぐらいまでは書きたいと思ってます。


では!

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