四ヶ所目 18
電話が繋がって蒼ちゃんの声にドキドキ過ぎな僕。
まだ二言三言しか蒼ちゃんの声を聞いてないけど、甘い響きが耳から入り直接脳に響いてくる。
「あの、もしもし欧介君?聞こえてますか?」
「う、うん。ばっちり蒼ちゃんの声聞こえてるよ」
蒼ちゃんの声しか、聞きたくないから。
なんて、言えない。
「それなら良かったです。早速英語のテスト勉強のポイントを教えますね」
蒼ちゃんは、自信有り気なトーンで話す。
そのトーンに自慢する様な、イヤらしさは感じない。
むしろ頼りになる感じがする。
「どこが解らないんですか?」
蒼ちゃんは、優しく問いを投げてくれた。
何だか、幼い時に大好きだった保母さんの雰囲気に似てる。
もう何年も前だ。
あっと、今はそんな回想に浸ってる場合じゃない。
一言でも多く、蒼ちゃんの声を感じよう。
「未来形の含んだ長文の和訳と、あと重要な範囲が何処なのか聞いてなくてさ…」
やべっ!
言い終えたそばから、つい口を滑らせてしまった事に気付く。
テストの重要な範囲の話は、明日にでも大河君に聞こうと思ってた。
蒼ちゃんには、こんな基本的な事も聞いてないなんて知られたく無かった。
それなのに、つい話をしてしまった。
蒼ちゃんには、どうしても素直に答えてしまう。
この事は前から感じてる事だけど。
もしかして、恋する男ってこんな感じなのかな?
「未来形の長文とテスト範囲ですね。分かりました、聞いてて下さい」
蒼ちゃんは、僕のバカっぷりを聞いても笑う事は無かった。
多分、気を使ってくれてるんだと思う。
「まず未来形から…」
僕の近い未来にも蒼ちゃんが一緒に居て欲しい。
そう思いながら、彼女の優しさにまた一段と好きな気持ちを重ねた。
それから僕は、蒼ちゃんの甘くて柔らかい声に導かれ英語のポイントと範囲を理解した。
「蒼ちゃんホントにありがとう。むっちゃ解り易かったよ。英語の才能有るね」
お世辞では無く、マジでそう思う。
「そんな事は無いですよ、普通です。それに欧介君が英語のテストで良い点を取ってくれれば私も嬉しいから」
蒼ちゃんは、少し照れたみたいだ。
そんな蒼ちゃんに、萌えちゃう僕。
是非、目の前で照れてる姿を見たい。
それに抱き締めたい。
あぁまたいつもの、妄想癖が。
「蒼ちゃんに教えてもらえたんだから、絶対良い点取れるよ。ってか取ってみせます」
「はい、頑張って下さい」
ホントに英語頑張らなきゃ。
蒼ちゃんとの電話を無駄にしたく無い。
「次は僕の番だね、数学の一次…」
何気無く時計を見ると、もう21時35分を回ってた。
あまりに早く時間が経っていて、一時間も話してたなんて信じられない。
そろそろ時間も遅いし、明日にした方が良いよな。
そうした方が、明日も蒼ちゃんと話せる。
僕にしては、かなり良いアイディアが浮かんだ。
「蒼ちゃんは一次方程式が分かんないんだよね?」
「はい、応用がニガテです…」
「あのさ、もう時間も遅いから明日にしない?蒼ちゃんにこれ以上迷惑かけたく無いからさ」
「迷惑だなんて、私が教えてもらうんですから…」
「でももう22時近いからね。今からだと夜遅くなっちゃうからさ…僕は説明するの下手だから余計にね。明日教えるよ、絶対教えるから!学校でも電話、蒼ちゃんの好きな方法で良いよ」
「はぁい!分かりました。気を使ってくれてありがとうね、欧介君。じゃあ明日学校で教えてもらいます」
蒼ちゃんは、僕の提案を承諾してくれた。
これで明日も、彼女と話せるぅ。
ナイスアイディア、ナイス自分。
小さくガッツポーズする、僕。
「では、欧介君また明日ねぇ。おやすみなさい」
やんわりと蒼ちゃんは、言う。
「うん、また明日…」
「そうそう、欧介君!?」
「えっ?」
突然僕の声を、蒼ちゃんが遮った。
ど、どうしたんだ?
いきなりの展開に見当が付かない僕、そして心臓はバクバクだ。
「明日からの授業は、ちゃんと起きてなきゃダメだよ。授業聞いててね」
彼女は、フフッと優しいニュアンスで笑う。
電話越しでも、その可愛いさは伝わってくる。
ってか、僕のハートにダイレクトアタックだ。
「ふ、ふぁい。明日からはちゃんと起きて聞いてます」
照れながら情けなく言葉を返した。
「約束ですよ。明日から寝てないか見てますから」
再びフフッと笑う、蒼ちゃん。
冗談だって分かってるけど、今の言葉はかなり嬉しい。
「大丈夫だよ、僕約束は守るから絶対」
蒼ちゃんとした約束なら、尚更。
「欧介君の言葉なら信じます。では今日は電話してくれてありがとうございました。また、明日」
「ありがとうって言うのは、僕の方だよ。ありがとう蒼ちゃん、また明日」
そして蒼ちゃんとの幸せな一時は、切れた。
僕は、幸せと高まる気持ちを噛み締めながら溜め息をついた。
明日も蒼ちゃんと、話せる。
やったぜ!
興奮したまま、窓に手を掛けて開けると、虫の声と共に草の息吹を感じさせる薫りが体内に流れ込んだ。
見上げると夜空には綺麗な星が輝いていて、僕を照らしていた。
こんな幸せな夜がまた訪れれば良いな。
そんな事を思い、明日へ向かって体を休めた。
こんにちは、和紙です。
皆様、予防接種は打ちましたか?
和紙自身、今年と来年は中々忙しいので今日打ってきます。
気になるんですが、後で痕が痛くなるって噂はホントなんでしょうか…(苦笑)?
もうすぐで50話です!
執筆気合いを入れて頑張りますので、コメントや感想をお願いします!
物語を面白くして行きたいので!
皆様の意見をお待ちしています!
あぁ注射か…(涙)
和紙でした!
では!!