四ヶ所目 16
二人で夕暮れの中、下駄箱を出た。
残念ながら手は繋いでいない。
それに僕は、蒼ちゃんが校内用のサンダルから皮靴を履き替えた時、本気でテイクアウトしようとサンダルに手を伸ばしかけたが、危ういトコロで自制した。
こんなテンションで無事帰れるのか?
一人で苦笑いを浮かべて居ると、蒼ちゃんが何か呟いた。
「えっ?」
僕は、彼女が何を言ったのか聞き取れなかったから聞き返す。
「欧介君のテスト勉強の調子を聞いたんです」
蒼ちゃんは、僕の顔を見た。
夕日で肌が黄金色になってる、蒼ちゃんは美しい。
夕日の光を宿してる瞳が特に。
「あの…聞いてますか?」
蒼ちゃんは少し眉をひそめた。
「ゴメン…夕日が眩しくてさ。テストの調子は、どうかなぁ」
正直全然!
諦めてるっすよ、ハハッ!
とは、好きな人の前では言えない。
「蒼ちゃんは?」
「私は、まぁまぁです」
彼女は、少し頬を緩ます。
まぁまぁ=結構出来る。
この方程式は、18年生きてれば嫌でも分かる。
「でも、数学の一次方程式の応用が分からなくて」
あぁ、そいえば数学テストの最重要課題だったなぁ。
まぁ僕には、二度目の数学だから少しは分かるけど。
「僕は、英語の和訳が解んないトコが有ってさ」
二度目の英語だけど、さっぱりだ。
「私、英語なら分かりますよ…多分」
蒼ちゃんは、笑顔を浮かべた。
蒼ちゃんが、英語に自信が有るのは初耳だ。
そういえば、英語の時間に英文を滑らかに訳してたなぁ。
「蒼ちゃんは、英語得意なんだ」
「得意って訳じゃないケド、他の科目よりは分かります」
やっぱりな、なら教えて貰おうかな。
「蒼ちゃんの訳は綺麗に訳されてて、分かりやすいよ」
いや、そんな事言えないよ僕。
「そんなぁ…綺麗だなんて」
ダメだ、逃げたら。
自分の思った事を伝えなきゃ。
気付いたら、僕と蒼ちゃんは最寄りのバス停の近くまで来ていた。
太陽は、もう沈んでいた。
そのせいで、蒼ちゃんが顔が見辛い。
今どんな顔をしてるんだろう?
よしっ、言おう。
「あのさ…もし良かったら、良かったさ…」
僕なら言える。
帰るのだって誘えたんだから。
ドキドキする鼓動を抑える為、深呼吸する。
「えっ?」
日が無いから、彼女の顔は見辛い。多分、キョトンとした表情を浮かべてるんだと思う。
「僕に英語を教えて欲しいんだ。今日家に帰ったら電話するからさ…良いかな?」
最高調の心拍数だ。
蒼ちゃんに聞こえてるかも。
そう思うと更に、高くなる。
「はい、喜んで教えます」
優しい声と共に、バスのライトで照らされた蒼ちゃんの笑顔がはっきり見えた。
「い、良いの?」
僕が言葉を言った瞬間、乗車するバスが到着した。
搭乗口のドアが、空気が抜けるを立て開く。
その音が、何故か《やったぜぇー》と聞こえる。
興奮でおかしくなったか、僕?
バスに車内に入り空いている席を見付け二人で座った。
彼女が座った瞬間、色の白い太股が一瞬だけ見えた。
出来れば、秘密の布トライアングルも見たかった。
いやいや、止めておこう。
そんな事を考えてる僕の隣で彼女は、紙に何かを書いていた。
僕は喜びを噛み締めながら、蒼ちゃんの横顔に見とれる。
少しして、バスの運転手が泉区美坂の到着をアナウンスした。
蒼ちゃんは、照れた様な笑いを見せて僕の手にメモを渡した。
「欧介君、これ。またね」
そう言って、蒼ちゃんは降りて行った。
手にメモを握りながら、蒼ちゃんを見送る僕。
体温が上昇していくのが分かる。
熱を計ったら確実に37度は有ると思う。
僕は蒼ちゃんの残り香を味わいながら、メモを見た。
そこには携帯番号とメールアドレスが記してあった。
《夜の電話が楽しみです。 蒼》
それ以上に、最後のこの言葉が可愛く思えて堪らない。
「よっしゃあ」
僕は、大きくガッツポーズをして流れていく景色を眺めた。
数時間後の蒼ちゃんとの電話の事を考えると、僕のテンションと体温が高まり、大好きな気持ちも膨らむ。
今日は、昼間までのクヨクヨしてた僕がマジでバカみたいだ。
自分のハートがどんどん強くなっていく、そんな事を思い、下車を知らせるボタンを押した。
こんばんは、和紙です。
無事風邪が治りました。
その勢いでランキングサイトに登録しました。
読者の皆様、よろしければコメントや感想、ご指摘をお願いします。
現実世界は、もう冬がやってきています。
しかし作品の中は、もうすぐ梅雨(笑)
更新頑張ります。
和紙でした。
では!!