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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
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四ヶ所目 14

 今僕達は、教室へ向かって向かっている。

授業中なので各教室からは先生の話す声が聞えてくる。

当然廊下には、僕達四人の他は誰も歩いていない。


当たり前と言えば当たり前だけど、僕達四人以外消えてしまった様で、何だか寂しい。


でも見方を変えれば、僕以外に三人も居るんだ。

そう思えば、自然に寂しさが消えていく。


そんな事を思って歩いていると、いつの間にか教室が目と鼻の先になっていた。

「ねぇ、どうやって遅れた理由を説明するの?」


花君が、少し不安気な様子で僕を見た。


えっ、何故僕を見る?

ホントに僕が説明するのかよ!


理由など全く考えてないですぜ。


「と、突然の腹痛に苦しんでた作戦で、乗り切ろう」


苦し紛れに僕は提案する。


突発的に浮かんだ作戦とは言え、学級委員が考える作戦がコレってのも我ながら悲しい。

そして、ネーミングセンスが限りなくゼロだ。


「つまり腹痛の演技か。出来るんだな、欧介?」


大河君は、見るからに高そうなブランドの腕時計を見て僕に言う。


「うん、腹痛で苦しんでた芝居ぐらいなら何とか」


「一応言っておくが、授業終了まで残り約10分だぞ。つまり40分もお前はトイレに居たという事になる。ちなみに俺達三人もだ」


「う゛うっ、それは」


「僕達三人は、用を済ませた欧介君を保険室に運んで、一緒に居たって事にすればアリバイはせいり…」


「いや」


花君は、我ながらナイスなアイディアだ!的な笑みを浮かべて手をポンと叩いたが大河君の言葉に遮られた。


「アリバイは不成立だな。それだと後で担任が保健医に事情を聞いてしまう場合がある。そして、その可能性は高い」


「ちぇ〜」


花君は、残念そうに顔をしかめた。


いや、あの、いつからアリバイとかそんな単語が飛び交う様になった?

「バァカだなぁ、お前ら」


今まで黙っていた蓮が、頭を手の後ろで組んだまま笑う。


「聞き捨てなら無いな、馬鹿に馬鹿と言われるのは」


大河君は、鼻で笑うと冷たい眼差しで蓮を見据えた。


「ま、まぁ大河君。何か有るの蓮は?」


僕は大河君をなだめつつ、蓮に話を聞いてみる。


もしかしたら、状況を打開する助け船が出るかもしれない。


「俺は、欧介の突然の腹痛に苦しんでた作戦で良いと思うぜ。ネーミングもなかなかだ。ただな、足りないのは真実味なんだよ」


「真実味?」


何だか嫌な予感がしてきた。


「そうだ。だからな、この俺様が真実味っていうスパイスを加えてやるよ」


ガシッと僕の両肩を掴んで、今まで見た事も無い優しい微笑みを浮かべる蓮。


「ちょ、蓮。そんな怪しさ満天の優しい笑顔今まで一度だって浮かべた事無いでしょ。ってか真実味?スパイス?」


赤い奴は、怯える僕に更にニンマリ笑う。


「ははぁ!許せよオースケ〜俺達四人の為…そう正義の犠牲なんだ」


「ふえぇ?」


蓮の顔には、数十秒前に見せていた優しい笑みは消え失せ、今や悪意が見え隠れする邪悪な笑みが張り付いている。


「だ、大丈夫。きっと上手く出来るから…嫌だぐうぅ!」


懇願する僕の体を、強烈な電流が腹部から全身に向かって駆け巡り支配した。


蓮…嫌だって言ったじゃん。


痛みは無い、むしろ気持ち良い。


天にも昇る気分だ。


おや?

廊下に居るはずなのに、やけに景色が黄金色だ。


あらら、何で目の前にもう一人の僕が寝てるんだ?


「ちょい蓮、今のは痛かった。痛かったぞぉ」


僕の渾身の言葉にも目の前の三人は全く反応しない。


ってか、聞こえて無いみたいだ。


それに、いつの間にか僕の両脇には羽の生えた子供達が居る。


微笑みながら天を指差す羽の生えた裸の子供達。


えっ何、また僕を天に連れて行くんですか?


ウソぉ、今度はルーベ〇スの元に?


嫌だ、まだ行きたく無い!


謎の子供達に、強引に連れて行かれそうになるのを、必死に抵抗する僕。


そんな緊急事態の僕を尻目に、三人はグッタリしている僕の本体を両脇から抱えた。


「おっし、オースケには悪いけど俺の飛び膝蹴りも決まったし完璧だな」


満足気なセリフを吐く、蓮。


見せてやりたい、今の姿を。


「やりすぎだよ、蓮…」


花君、さすがです。

もっと言ってやってよ。

ってか、僕の体の異変に気付いて!


「でも飛び膝蹴りよりか、痛恨の一撃って感じだね。フフッ」


花君は、無邪気に笑う。


フフッて!

フフッて笑い事じゃないぜ花君よぉ。


「むしろ、急所突きだな」

大河君はボソッと溢した。


いや要らないから、そんなドラ〇エ的なノリ。


ってか大河君も、ドラ〇エ経験者?


っうか、頼むから僕を本体に戻してくれぇ!


そんな僕の悲痛な叫びはやっぱり届かず、三人は僕の本体を肩で支えながら教室に入っていった。


相変わらず微笑みながら天へと導いて行く、子供達の手を振り切り僕も三人の後を追い掛けた。


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