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上手な修正液の使い方  作者: 和紙
33/70

四ヶ所目 5

お久しぶりです!!


僕は、バームクーヘンを千切ったり口に入れて味も解らずに無意味に噛み潰したりしながら学校での事を3人に伝えた。


勿論、蒼ちゃんの対して抱いている気持ちを悟られない様に気をつけて。


「それで、テスト対策してないのに…先生に見栄張っちゃって」


(ホントは、蒼ちゃんに対して見栄張ったんだけど…)


普通なら『僕さ、蒼ちゃんが好きなんだ。でも…テスト勉強バッチリだぁ!!って、見栄張っちゃたんだよ。ど、どうしよう!!』


みたいな感じで友達に相談するモノだろう。

と、思う…多分!!


しかし、今までこんな相談や気持ちになった事が無い僕には何か気恥ずかしい。


それに、蒼ちゃんは僕の事を学級委員の片割れとしか思ってないみたいだし。


それに、ただ笑って話せる今の関係が続けば良い。


そんな気がしたから、皆には隠しておいた。


「おいおい…オースケ。お前も先公の評価気にすんのかよ」

蓮が、頼んでいた抹茶のムースを口に運んで、顔を歪めた。


抹茶が予想外に苦かったのか、僕の話した内容にガッカリしたのか分からないが…多分後者だろう。


「その"お前も"という言葉が引っ掛かるが、あえて気にしないでおく」


大河君は、ホットコーヒーを掻き混ぜながら蓮に向けて視線を投げつける。


花君は、僕の顔をずっと見ていた。


いつもの、太陽みたいに明るい笑顔で。


こんな3人に、本当の気持ちが言えない僕は、何なんだろうか…。


友達として3人の事を見ている筈なのに、本当の気持ちは僕の口から出る事は無かった。

相変わらず、夕陽は窓から差し込んでモノクロな写真に、懐かしさを感じさせる味を加えている。


僕がそんな事を思っていると、大河君が口を開いた。


「勉強の事は…自分の努力次第だ。どれだけ自分自身が励んだかで成果が変わる。それは、俺達に相談しても何も解決しない。担任に見栄を張ったのは欧介…お前自身だ。自分の力を尽せば良い」


大河君は、僕の目を真っ直ぐ見ていた。


その真剣な目線に僕は頷くしか無くて、機械的に相槌を打った。


「おいおい…普通、『それじゃ一緒に勉強しようじゃないか!!アハハ』とか言う場面だっしょう」


蓮は、また一口抹茶ムースを口に含んで顔を歪めた。


もしかして、本当に抹茶ムースが苦いとか?「僕も、大河君の意見に賛成だな…」


「花!!お前もかよ」

蓮は、驚いた様に声を荒げた。


僕も、実際少し驚いたが花君と大河君の言っている事は的を得ていた。


「欧介君が言った事なんだし…欧介君が頑張るしか無いよ…」


花君は、今までの笑顔を止めてうつ向いた。

「そ、そうだよね!!僕が言った事なんだから、僕が自分で解決しなきゃね」


僕は、少し寂しさを感じたが3人に隠し事をしてるんだから仕方ない。


「ゴメンねーこんなくだらない相談しちゃって」


僕は、頭の後頭部をワシャワシャと掻いて笑った。


それを最後に、楽しかったさっきまでが嘘の様に僕達は黙って頼んだモノを食べた。


そして、僕達は綾さんに挨拶して各々に別れた。


結局相談なんて、出来なくて友達に嘘を重ねただけだった。


今考えると、何で素直に言えなかったんだろう。


素直に気持ちを言えていたらきっと…楽しいお茶が飲めただろうな。バーベキューの楽しい雰囲気のまま、4人で笑いながら。

もうテストの事も、担任の事もどうでも良い気がする。


何か、上手くいかない。


もう太陽が沈んで、辺りには闇が広がっている。


僕の周りに広がる暗闇が僕の今の心境と重なっていた。


そんな暗い気持ちを抱きながら僕は、トボドボと帰った。

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