四ヶ所目 4
お洒落な店って落ち着きませんよね?
さっきから何か落ち着かない。
花君に連れられて喫茶店に来たけど、路地裏にまさかこんな良い雰囲気の店があるなんて。
壁にはモノクロな風景や若いカップル等、色々な写真が、ところ狭しと飾られているし、テーブルも一昔前の外国のテーブルだと思う。
根拠は無いが、窓から差し込む夕陽を見ていたら店の中の物がとても高価に感じた。
頭のどこからか囁かれてくる、場違いだという言葉を気にしないよう天井から垂れさがって僕を照らしているシャンデリアを見ていると、蓮に呼ばれた。
「おい!!オースケだろ?ココアとバームクーヘン頼んだの」
「へっ?」
テーブルに視線を戻すと、真っ黒な髪をした女性がココアが入っているらしきカップとバームクーヘンをシルバーのトレイに載せて僕に向かって微笑んでいた。
「あ、すいません。ボーっとしてて…」
「良いのよ。でも不思議そうな顔してたね」
「え、あ…何かこんな良い雰囲気の店初めてで」
「良い雰囲気?フフッありがとうございます。花ちゃんの御友達は良い子ね」
「でしょ。さっすが綾さん、分かってるぅ」
綾さんと呼ばれた目の前の女性の笑顔に僕のハートは撃ち抜かれてもうまともに、綾さんの顔を見れなかった。
「じゃ、花ちゃん。友達とゆっくりしてってね」僕達が、注文した品をテーブルに置き終えると、綾さんは甘いクリームの様な香りを残し店の奥へと戻っていった。
「ハナ〜さっきの誰だぁ?」
綾さんの後ろ姿を名残惜しそうに見ていた蓮が僕の隣に座る花君の方を勢い良く向いた。
「え、だから綾さんだよ」
花君は、ニッコリ笑って注文していたアイスミルクティーを口に含んだ。
「あ、そうそう綾さん…っておい!!違うだろ、どうゆう関係だって事だよ」
「あぁ〜そういう事。ちぃちゃんのお母さんだよ」
(そっか、ちぃちゃんのお母さんなんだ…)
「何だよ。ちぃの母ちゃ…」
その瞬間、僕は対面の蓮を見て目を見開いた。
蓮も同じように僕の方を見て目を見開いていた。
(マ、マジっすか!!ちぃちゃんのお母さんなの?)
僕の脳裏に、無邪気に笑いながら花君の手を引っ張るちぃちゃんの姿が浮かんだ。
「ちょ、ちょい待ち。綾さん何歳なの?」
蓮が、僕が聞きたかった質問をズバリ聞いてくれたので、ついゴクリと唾を呑み込んでしまった。
「え、綾さんの歳?うぅーん確か、30歳だったかな…」
「いやいや、どう見ても20代前半だろ!!」
「確に!!」
僕も驚きの余りについ声を出してしまった。
「アハハ、欧介君どうしたの?いきなり大きな声だして」
(ええっ、花君そこ笑うトコじゃないでしょ…)
花君は、突然ツッコンだ僕の言葉に何故かウケてしまって、お腹を押さえてクスクスと笑い出した。
「ちくっしょ!!ちぃの母ちゃんって事は、もう人の物かよ。いや…俺なら」
蓮は、ワシャワシャと着ているジャージをこねくり回していたが何かを思いついた様に指を鳴らした。
ガシャン
突然、盛り上がる僕達三人(特に僕と蓮)を尻目に静かにホットコーヒを飲んでいた大河君がカップを強めに置いた。
(た…いが君?)
僕は、突然の出来事にビクッとしてしまった。
「さっきから大声で不謹慎な事ばかり言って騒いでいるな…忘れているなら言っておくが、ここは花の知り合いが働いている喫茶店だぞ。それに蓮!!お前に、さっきの女性が振り向くとは到底思えないな」
「大河…急にどしたの?」
蓮も突然の大河君の言葉に圧倒されている様だった。
それに大河君の言葉のニュアンスから、明らかに僕に対しても言っている事が分かった。
「あと…」
そう言いながらフンッと、小馬鹿にした様に大河君が鼻で笑う。
「こんな喫茶店に不釣り合いなジャージ姿で座っているのは欧介の相談を聞く為だろ?いつから花の知り合いについて熱く語る時間に変わったんだ?教えて欲しいな」
言うまでも無く、僕は大河君の顔を見れなくてうつ向いた。
蓮も同じ様に力無くヘラヘラと笑っていた。
「さ、さ〜綾さんの手作りケーキはオイシイよ。食べながら欧介君の話を聞こ〜」
花君は、場の雰囲気を盛り上げようと気を使ってくれていた。
「当然だな。その為に此処に座っているんだし」
大河君は、しかめっ面でイチゴのタルトに舌鼓をうっていた。
(こ、この雰囲気からどう話を切り出せば良いでしょ…うか)
僕は、そんな事を思いながらバームクーヘンを無意味に一ブロックちぎって、学校での事を三人に話た。
すいません…更新が遅れました。
コメントや御指摘をバシバシお待ちしています。
では!!