二ヶ所目 5
自己紹介から一週間が過ぎて、クラス内にもポツポツと友達関係が出来てきた。
女の子のグループも少しずつ出来始めたし、男子達も誰かカレかとつるんでいた。
僕も、近くの席の子と少しずつだが話をしたり、一日一回は赤毛に絡まれたり、たまに蒼ちゃんと話たりの一週間を過ごしていた。
あれ、以来赤毛君と大河君の間のイザコザも消沈気味なので少しホッとしていた。
今日も、授業が終わり学校から家に帰る為にバス停に向かった。
バス停で、ボケーッとしながらバスを待っていると、
「ちょっとアンタ!!なに、横入りしてんのよぉ〜。」
いきなり後ろから女の子に怒られた。
(いきなり何だぁ?)
っと思い、後ろを向くと
「早くどきなさいよぉ」
女の子が腕を組んで僕を睨んでていた。
「横入りって、今まで居なかったじゃないか」
訳も分からず僕が言うと、
「居たわよ。ここに」
と、斜め前のベンチを指差した。
「ココにって…?」
ベンチの上には、マスコットが付いたカバンが置いてある。
「ちゃんと、私のカバンが順番を守ってたわ。」
女の子は、鼻高々に言った。
(カ‥カバンって…。なんだよカバンって!
「バス停でカバンで順番待ちなんて、むちゃくちゃだよ。しかも、こんな分かりにくい場所だなんて。だいたいカバン置いてドコ行ってたんだよ」
「あっ、あんた!女の子にそんな事よく聞けるわね!バカじゃないの。セクハラよ。セクハラだわ」
僕が理不尽さを主張した途端、女の子は、真っ赤に照れてなって叫びだした。
セクハラという単語にバス停に居た人が皆、僕の方を見た。
(うわぁ…。ま、周りの人に見られてるよ。ってか、俺噂されちゃってる)
「どうぞ…」
世間の白い目に耐えられなくなって欧介は、女の子に順番を譲った。
「それで、良いのよ。最初からそうしなさいよね」
女の子は、ブツブツ文句を言いながら欧介の前に並んだ。
(はぁ…)
僕は深くため息をつき、テンションは空気の抜けたゴムボールの様にヘコんだ。
やがて、バスがやって来た。
バスに乗り、女の子から離れた席に座った。
遠巻きから、女の子を見てみると以外に可愛いことが分かった。
結構スタイルは良いし、茶色味を帯たショートも可愛いい。
(あれで蒼ちゃんの様な女の子だったならな)
残念だぁ。と、ドカッという音と共に座席にもたれかかった時、
ブゥーン
ブゥーン
マナーモード状態の携帯が電話を知らせた。
ビクッとなり、ポケットから震え続ける携帯を取り出すと、
<愛しの母さん>
と、携帯に表示されていた。
愛しのって!母さん、いつの間に僕の携帯イジったんだよ?
周りに悪いと思いつつ電話に出ると、
「もしもし〜欧介?あのさ〜マグロの切身と豆腐一丁とネギ一本ヨロシクゥー」
プチッ
(えっ?)
ツー
ツー
(切れた?僕には、イエス、ノーを言う権限も与えられないのかよ)
苦笑していると、
<次は、泉区2丁目です。御降りの方はお知らせ下さい>
バスの知らせが響いた。
(泉区かぁ〜蒼ちゃんと会えるかもしれないし買い物もあるから降りてみるか)
蒼ちゃん会えるかも…、という微かな希望を信じてバスのベルを鳴らした。