54P科学の音色(テクノ・ポップ)で奏でる真実
夏中に完結させたかったのに、終わらない…終わらない。
でも、ぼちぼち最終章
「あの赤髪の奴、裏街のマフィアかなんかか?」
「あんた、ぶん殴られたいわけ?」
三人揃って説教を喰らったイオンとユーリ、ゼクスはがっくりと肩を落とす。
「あいつの父親はカナレの騎士団専属医師だからな。子供のころから荒っぽい大人達と一緒に生活していたから、口が悪い」
「へ?初耳」
キョトンとユーリは目を丸くする。
父親が医者だとはフィーナから聞いていたが、従軍医師とは知らなかった。
「そーいや、あんた貴族の坊っちゃんなのにあの赤髪遠慮なかったよな。知り合いなのか?」
「お前も大概だが……。あいつと俺は幼馴染みたいなもんだ。父親がカナレの砦にいた時に俺も一緒にいたからな」
「はぁーん」
ゼクスの説明にイオンの反応は実に適当だった。
「興味がないなら聞くな」
「いや、いまいちつまんない理由だったから」
「どんな理由ならつまんなくなかったの?」
「彼女とか」
「冗談よせ!!おやじさんに殺される」
ぎょっと目を剥いたゼクスにイオンはカラカラ笑う。
「何話してんの?」
「いや、何も」
口を割ろうとした後輩二人を眼光で黙らせたゼクスはフィーナからジュースを受け取って飲む。
「それにしても、若様。まだ方向音痴治んないんだね」
三人が知り合い、一緒に魔導に巻き込まれるまでの経緯を離した後、フィーナは憂鬱そうに溜息をついた。
「………俺は方向音痴じゃない」
「ほざくな。超ド級」
憮然としたゼクスにイオンが睨む。
「まぁまぁ、落ち着いて。……そうだ。訊きたい事があるんだ。フィーナ、ミーシャはここに来てない?魔導に触れたから検診くらいは受けた方がいいと思うんだけど」
「ミーシャ…。ミーシャ・ヴェルデの事?」
「そうそう」
「会ったの?彼女に」
頷いたユーリにフィーナの表情がどんどん曇る。
「どうかしたのか?」
「行方不明になってるらしいのよ」
「え?」
「下宿先の女将さんから学校から帰ってきてないって連絡があって、ほら、うちって迷子になる事必須の図書館あるでしょ?もしかして迷子になってるのかもって、司書達も探したんだけど、いなくって。学校の方もいままで無遅刻無欠席だったのにおかしいって、騎士科の生徒と自警団がいま動いてる」
「穏やかじゃねーな。『学研』近くに、今年の『学研』はどうなるんだ?ただでさえ魔導科の占術学部でとんでもない事故が起こったのに」
「行方不明になってるのはミーシャだけじゃなくて、騎士科の生徒も何人か」
「そうなのか?誰かわかるか?」
「ん~。魔導科で図書館の司書と生徒達がドンパチしてるの知ってる?それの鎮圧に騎士科の生徒も動いたけど、その中のひとグループ丸々、魔導に巻き込まれて行方不明って」
だから、名前まではわからない。とミーシャは言う。
「とにかく、君たちみんな絶対安静だからね?大人しくしてなさい」
「はーい」
ユーリは大人しくそのままベッドに横になる。
「あんた達も」
「うっす」
コップを置いたイオンとゼクスはフィーナに追い立てられるように部屋に戻っていった。
数分後。
ガバッとベッドから起き上がったユーリはそうっっとドアの外をうかがう。
「行った、よね?」
ドアを開けた瞬間、同じくドアを開けたイオンとゼクスに鉢合わせした。
「「あ」」
志を同じくする同士もまた、病室脱出を試みていた。
が、
曲がり角を曲がった先には
「あなた達」
白衣の般若と
「あんたらは……」
怒れる、医師の卵がいらっしゃいました。
「「大人しく寝ていなさああああい!!」」