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未返却魔導書と科学のススメ  作者: 藤本 天
51/85

45P 現状打破の奇想曲Ⅱ

日の色が薄らと赤みを帯びる。

赤い光が差し込む部屋の中、なお赤い小鳥が小さく鳴いた。

「ここ、ですか……」

様々な教材や箱が雑多に積まれた部屋の中、クライヴはその場に跪いて床に触れる。

「確かに魔導の残滓がありますね」

彼は片眼鏡に触れつつ、立ち上がる。

(巧妙に隠してありますが、この陣、他の魔導陣ともリンクしていますね。何の陣かはわかりませんが、ひとつでも陣が動けば他の陣も反応する。……ひとつの陣が動けば他の陣も自動的に展開する、連鎖式の魔導陣か………)

片眼鏡に浮かび上がる魔導文字を読み解きつつ、クライヴは溜息をつく。

(面倒ったらないですね。これを解除するには大本の魔導陣を破壊するしかない……)

普通、ならば。

クライヴの唇が音のない声を零しつつ、吊り上がる。

(せっかく館長から使用許可が出たのです。きっちり使わせてもらいますか……)

彼は小さなナイフで指先を切る。

ぷつりと浮き出た赤い血を見つつ、彼が懐から出したのは手の平サイズの丸い鏡と銀の鍵。

「クライヴ・リーゾ・セロ・リュネットの名と血の下に【『知恵の泉』】【発動】」

クライヴは血が浮き出る指先で鍵握りしめ、それを鏡面に突き刺す。

鏡から銀に光る水があふれ出る。

「【血を代償に知を与えたまえ、知識を司る、第二位ラジエル】」

床一面に、銀の水が広がる。


一方その頃。

「やっぱり、どこかの魔導陣とリンクしているな」

浮遊魔導で司書達が引っ掛かった魔導陣を見下ろしながら、アヴィリスは呟く。

(と、いうよりこの魔導陣は司書達が突入するまでもなくいつか発動するモノだったのでは?)

発動の元となったのはおそらく、あの占術科のでたらめ魔導陣。

(あの魔導陣はむしろ魔導書と魔導陣を暴走させるのが目的だったのでは?コレの元となっている巨大な魔導陣の発動のための魔力供給源になっていた?)

そして、ここにある魔導陣。

「司書達と魔導師達はこの魔導陣の上で大なり小なりの魔導的衝突を起こしている」

おそらく、この魔導陣も何らかの方法で魔力を得ている。

「もしくは、配置された場にも何らかの理由があるかもしれないが……」

浮遊魔導を解いたアヴィリスは魔導陣の中心に降り立つ。

「とりあえず」

召喚系の魔導陣を手の平の上で展開し、両手で包む大きさのボールのようなものを呼びだした。

「行け」

赤いボールのようなものはアヴィリスの声に反応し、しゅるりとほどける。

赤いボールのように見えたのは蔦。

主人の言葉と意思に従うその蔦は魔導陣の見張り役として配置されていた<クラン>の魔導師達に襲いかかった。

「ぎゃあああっ!?」「なんっ!?ひいいいいいいっ!!」

数分後、

「………やっぱり改良が必要だな。魔力を吸い上げる力は弱いし、何より嵩張って持ち運びが不便」

簀巻きにされて呻く魔導師達を部屋の外に転がしたアヴィリスは赤い蔦を元のボールに戻す。

「さて」

にぃっと嗤ったアヴィリスはもはや捕食者そのもの。

「繋がっているならば、その回路を辿ってみればいい」

彼の指先が、声が魔導を紡ぐ。

出来あがったのは部屋中を埋めつくす、藍色の魔導陣。

「『魔を追う者、奪う者、目覚め、愚者の足跡を追え』」

アヴィリスの足元の蔦が藍色の魔導陣に誘われるように蠢き、絡む。

その魔導陣はゆっくりと金の魔導陣の上に舞い降り、藍の導きで赤が金に喰らいついた。

「『大いなる流れを飲み、断ち切れ。暴食の花(エダークスフロース)』」

赤い蔦が魔導陣の上で花のように広がっていく。

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