語り継がれ忘れ去られる伝統曲 ~interval~
そろそろラストスパートいっきます。
昔々、世界がたった一つだった頃の話。昨日が今日に思えるほど、そして、我々の祖先がまだ乳飲み子だった頃よりさらに昔。
とても素晴らしい力を持った魔導師と何にも出来ない魔導師がいました。
とても素晴らしい魔導師は何でも出来ました。雨のない土地に雨を降らせたり、不作に悩む土地に富を与えたり、死者を蘇らせたり、なぁ~んでも出来ました。
だから、素晴らしい魔導師は『賢者』と呼ばれていました。
一方、何にも出来ない魔導師は何にもできませんでした。
だから、何にも出来ない魔導師は『愚者』と呼ばれていました。
ある日『賢者』はとても良きモノを作りました。
何でも知っている魔法の本、何でも切れる剣、何でも防げる楯、何でも作れる槌、何でも裁ける天秤、何でも隠せる衣、とても美しい人、醜い人、男の人、女の人、人ならざる者。
彼らと一緒に『賢者』はとても立派な国を作りました。
しかし、『愚者』は何でもできる『賢者』に嫉妬し、とんでもない『大災害』を起こしました。
海は荒れ、大地は毒に覆われ、天からは雷と酸の雨が降り注ぎ、人々を苦しめました。
世界が滅ぶやもという『大災害』に『賢者』は立ち向かい、世界が大いなる波に飲み込まれた後、『賢者』は生き残った人々と、『国』で新しい世界を作りました。
新しい世界はとても豊かで、いまなお我々を豊かに生かしているのです。
語り語られる物語、その中の嘘と真実に、誰も気づかない。
『賢者』と『愚者』の悲哀と愛憎、喜怒も、夢も、何もかも、いまだに彼らだけの物。