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未返却魔導書と科学のススメ  作者: 藤本 天
43/85

38P 魔導と騎士と科学の狂音曲Ⅴ

今年初投稿です。

何とか今年中に目指せ完結!!

今年もよろしくお願いします。m(_ _)m

一方その頃。

「………これは……」

魔導科の『神秘の間』にて魔導師達はそれを見て硬直した。

その中で、アヴィリスだけが冷静にその魔導陣を分析する。

まず感じるのは、この魔導陣の圧倒的な存在感、そして危険性。

(どれだけデカイ魔導陣なんだ)

『神秘の間』の焼け焦げた魔導陣の下からさらに浮かび上がった魔導陣、の欠片。

暴走をした魔導陣は極色彩だったというのに、この魔導陣の色は金。

「今すぐに解除を!!」

「ここの責任者と魔導科の教師たちを集めろ!!」

ショックから覚めた魔導師達は口々に叫びながら『神秘の間』を後にする。

一方、部屋に残ったアヴィリスは無言のまま魔導陣に触れる。

 パンッ

「っ!!」

高い音を立てて触れた指は弾かれ、血が噴き出す。

こぼれ落ちた血が魔導陣に落ちた途端、陣は歓喜するように震え、血の染みさえ消えた。

「どうやら、この魔導陣があれほどの魔導事故の原因であるようですね」

ヴァイゼ・アルス=ジーニア・ルファル魔導師の顔はどこまでも冷たい。

「ああ」

「表面の、発動し何故(・・)か壊れた魔導陣からは君の言うような擬似生命の魔導や異空間を創造する魔導に関する構築式は見当たりませんでした」

描かれていたのは魔導書の中に魔力を送り込み魔導書の力を増幅させ、自由になった魔導書を支配する「儀式」の魔導陣とそれに組み込まれた占術系の魔導陣。

この占術系の魔導陣は何かの事象を捻じ曲げる為の術が組み込まれていた、その『何か』は教授達を締め上げればわかるだろう。

だが、それに寄生するように組み込まれた、この金の魔導陣についてはきっと占術科の教授たちではわからないだろう。

「………この規模だと、『学院』中に魔導陣が張り巡らされている可能性が出てきましたね。問題はどこを中心としているのか、ですが……」

「?」

ルファル魔導師とアヴィリスは騒がしい物音に気付き、顔をあげる。

ドタバタと騒がしい音は何人かの人間がもめる声と音。

しかも、その騒音はどんどん近付いて来ている。

「何だ?」

「どーいてくださああああい!!」

派手な声と音と共に『神秘の間』(仮)の扉が開く。

それと同時に、

「「はっ!?」」

ルファル魔導師とアヴィリスは目の前の光景に目を丸くしたまま硬直した。

遅れて入ってきた騎士科の生徒と思しき少年達、そして共に来ていた魔導師達もその光景に唖然とする。

『神秘の間』(仮)の中心に土下座する青年が一人。

…………非日常(シュール)極まりない光景に誰一人声を出すことなく凍りつく。

「あ、あの……君」

痛々しい沈黙の中、勇気あるルファル魔導師が恐る恐る、顔すら上げずに土下座する青年に声をかけた。

「………お願いします」

土下座の青年からぽつりと小さな声が聞こえた。

「お願いです!!助けてください!!」

石畳の床に額を擦りつけて、青年は言う。

「あの、そう言われても…。その、事情を話して貰わないと、どうにも、ね?」

青年の剣幕に気圧されながらも、ルファル魔導師はとりあえず落ち着いて顔をあげるよう言う。

土下座青年のくりくりの癖っ毛と声にアヴィリスはふと思い出した。

「お前は……あのとんでもない“保安司書”と一緒にいた……」

そのまま、アヴィリスは首を傾げて記憶の海を漂う。

……………名前は思い出せなかったらしい。

「ネロです!!って、どうでもいいです!!俺の事は!!」

がばっとようやく顔をあげたネロが必死の形相でルファル魔導師の足に縋りつく。

「仲間が!!魔導書回収に行った司書達と騎士科の生徒数人が!!行方不明になったんです!!どうか!!助けてください!!」



暗い色の煉瓦が壁を形作る、円形の広い部屋。

窓から見える風景からそれなりの高さを持つ、塔のような建物の中にある一室である事がわかる。

しかし、手入れはあまりされていないのか、部屋の中は埃っぽく、薄暗い。

罪人を幽閉するために作ったような部屋の中、埃が敷かれた床の上に正座で縮こまる数人の青年・少年達の前で、いぶし銀の髪を持つ百戦錬磨の傭兵が仁王立ちしている。


……………ように見える光景があった。


仁王立ちしているいぶし銀色の髪の男がいるが彼は傭兵ではなく、“保安司書”の一人である、ロラン・カイロープ。

そして、正座をしているのは魔導科の生徒と不法滞在していた魔導師達。

彼らを取り囲んでいるのは“保安司書”と騎士科の生徒達。

彼らは一様に険しい顔で魔導師とその卵達を睨みつけている。

なぜなら。

「だめです。ロランさん。外部と連絡ができません」

懐中時計片手に溜息をついたのはチャーリーと呼ばれた青年。

 バンッツ

高い破壊音の方に皆が目を向ける。

視線を受けた赤毛の“保安司書”の青年が首を振る。

彼の足元には椅子だったであろう木っ端が散らばっていた。

「マックス」

「駄目です。外には出られません」

ロランに名を呼ばれた赤毛の彼は椅子を窓に向かって投げたらしい。

けれど、結果はむなしく椅子が木っ端微塵に砕けただけのようだ。

完全に閉じられた部屋の中、全員の視線が魔導師たちに向かう。

いっせいに視線を向けられた魔導師と魔導科生徒たちが小さく悲鳴を上げる。

「どういうつもりだ?」

鋭い、銀の刃のような視線を向けられた魔導師たちはいっそう縮こまる。

「俺達をこんな所に閉じ籠めて、どういうつもりだ?」

仁王立ちしたロランは歴戦の傭兵のごとき威圧感があった。


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